円売り介入の考察

Market Overview

国際商品市況の低迷と世界的な株安連鎖を背景に、5日のNY外為市場でドル円(USD/JPY)は約1年5カ月ぶりに110円台を割り込み、109.94レベルまでドル安・円高が進行した。クロス円も円高優勢の展開となり、ユーロ円(EUR/JPY)は日足の一目/雲を一気に下方ブレイクすると3月22日以来となる125.24レベルまで急落。
一方、この日の原油価格(WTI原油先物)は反発した。クウェートの石油がイラン無しでの増産凍結合意に言及したことが好感された。だが、先行き不透明感が完全に払しょくされたわけではなく、上昇幅は限定的だった。

米債券市場では、リスク回避圧力の高まりを背景に各ゾーンの利回りが低下した。2年債利回りは0.720%と2月25日以来となる水準まで、10年債のそれは3月1日以来となる1.72%台まで各々低下した。

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Analyst's view

ドル円(USD/JPY)はついに心理的節目の110円を破る展開となった。重要ポイントを下方ブレイクしたことで、今後、市場関係者が注視するイベントのひとつが、当局による円売り介入への思惑だろう。ただ、この点に関しては政治的なハードルが高まっている。2月下旬に中国上海で開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では通貨安競争回避で引き続き一致し、5月26-27日には第42回先進国首脳会議伊勢志摩サミットが開催される。また、今後佳境を迎える米大統領選挙での各党の候補者選びでトップを走るトランプ氏や民主党のクリントン氏は共に日本の為替政策について批判している。このような政治状況の中で円売り介入を行えば、国際的な批判が巻き起こる可能性が高い。

また、円売り介入を実施しても、それは投機筋に絶好の売り場を提供するだけとなるだろう。何故なら、今回の110円下方ブレイクはじりじりと地面を掘り進めるように進行したからだ。これは、ファンダメンタルズの面で円売り圧力が強まる状況ではないことを示唆している。そのファンダメンタルズとは中国の景気減速懸念とそれに伴う国際商品市況の低迷であり、米金融政策の不透明感であり(=利上げペースの鈍化)、日本の経常黒字の劇的な改善やマイナス金利導入による負のサイクル(=マイナス金利→金融機関の収益圧迫→貸し渋り→民間企業の設備投資減&コストカット→賃金低下→国内需要縮小→デフレ→円高)である。現在、これら国内外のファンダメンタルズが同時に発生しているため、USD/JPYは115円突破ではなく110円を下方ブレイクした。そして上記のファンダメンタルズ、特に中国経済の劇的な改善が望めない以上、外為市場における円高圧力の急速な後退も望めないだろう。介入等による一時的な円安局面が見られても、それは一過性の動きで終わる可能性が高いことを常に念頭に置いておきたい。

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