米国株、見通し不安拡大 S&P500反発 イラン情勢に潜む急落リスク
S&P500は週次反発も、米国経済への不安も出ている。イラン情勢が悪化した場合には急落に見舞われる恐れもある。
アメリカの株式市場の回復が、投資家の不安心理を鎮め切れないでいる。S&P500種株価指数の20日の終値は1週間前比で1.07%高で、3週ぶりの反発。大手ハイテク株の下落に歯止めがかかったほか、20日に連邦最高裁判所が示したドナルド・トランプ大統領の相互関税を憲法違反とする判決も株高につながった。一方、20日に発表された経済指標は米国経済の成長減速とともに物価上昇の根強さを示す悪い内容。株式市場が期待する米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利下げの見通しは後退し、投資家の不安心理は拡大の様相をみせている。週明け23日以降の金融市場では、イラン情勢悪化がリスク回避ムードが強める恐れもあり、S&P500には急落リスクがちらついているといえそうだ。
アメリカのS&P500は週次1.07%高 3週ぶりの反発ながら最高値には距離
S&P500(SPX)の20日の終値は前日比では0.69%高の6909.51。3連休明け17日以降の4営業日中、3営業日で値上がりしており、底堅さを感じさせた。ブルームバーグによると、週次での反発(1.07%高)は1月26-30日週(0.34%高)以来3週ぶりだ。20日終値は5日につけた直近の安値(6798.40)からは1.63%高の水準。ただし1月27日の最高値(6978.60)からは0.99%安の水準で、反発の力不足も感じさせる。
エヌビディアは週次3.83%高 相互関税への違憲判決も株価にプラスか
S&P500の底堅さの背景となったのは大手ハイテク株の復調だ。アマゾン・コム(AMZN)の20日終値は週次5.69%高で、3週ぶりの反発。25日に2025年11月-2026年1月期決算を発表する半導体大手のNVIDIA(エヌビディア、NVDA)も3週ぶり反発の週次3.83%高となった。「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7社のうち5社が週次で上昇しており、人工知能(AI)関連の設備投資の重さを悪材料視した株価下落に一服感が出たようだ。
また20日に発表された相互関税への違憲判決も株式市場では好材料とみなされた。連邦最高裁は20日、トランプ氏が4月に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて相互関税を発動したことは違憲だと決定。憲法は関税を課す権限を議会に付与しており、IEEPAはこの権限を大統領に移管することを明確に定めていないとした。米国政府がすでに徴収した関税を米国企業に還付することになれば、政府の財政には悪影響が出るものの、企業業績には追い風になる可能性があり、S&P500の20日の値上がりにつながった。
2025年10-12月期の成長率は1.4%に急減速 物価上昇率は市場予想超える高さ
一方、20日に発表された経済指標はS&P500にとって悪材料といえる内容だった。朝方に公表された2025年10-12月期のGDP速報値は、実質成長率が前期比年率1.4%となり、7-9月期の4.4%から急減速。個人消費の伸び率は2.4%で、やはり7-9月期の3.5%から減速している。成長率の急低下は10月から43日間続いた政府機関閉鎖で政府活動が停止したことが主因だが、成長率はブルームバーグがまとめた市場予想の2.8%も大きく下回っており、米国経済の変調を疑わせる結果だ。
さらにGDP速報値と同時に発表された12月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は、総合指数で前年同期比2.9%、食品とエネルギーを除いたコア指数で3.0%となり、いずれも市場予想を0.1%ポイント上回った。総合指数の伸び率は2カ月連続で前月の数字を上回り、2024年3月(2.9%)以来、1年9か月ぶりの高さになっている。物価上昇の根強さは、S&P500の追い風になると期待されてきたFRBの利下げを遠のかせる要因。実際、18日に公表された1月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、物価動向次第で利上げが必要になる可能性が議論されていたことも分かっている。ブルームバーグによると、20日の金融市場で見込まれる年内3回利下げの確率は22%程度で、前日の33%程度から低下が進んだ。
VIX指数の高止まりは継続 個人投資家の強気度は11月下旬以来の弱さ
こうした中、金融市場では投資家の不安心理が高まったままだ。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の20日の終値は19.09。20の大台には至っていないが、高止まりといえる状況だ。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
また個人投資家協会(AAII)が19日に発表した週次調査では、今後6か月で株価が上向くとみる強気な投資家の割合は34.5%で、11月27日発表分(32.0%)以来の低さ。3週連続で前週よりも低い数字となった。
トランプ氏はイランへの軍事攻撃を検討 情勢悪化ならS&P500の急落も
週明け23日以降のS&P500の値動きをめぐっては、イラン情勢の悪化が投資家のリスク回避ムードを強める可能性がある。トランプ氏は20日の記者会見でイランへの限定的な軍事攻撃について「検討していると言っていい」と述べた。トランプ氏は1月にイラン国内での反政府デモが拡大したことを機に、イランに核開発放棄を迫る圧力を強めてきた。19日にはイランが米国との協議に合意しない場合には、「イランにとって不幸な結果になる」とも言及している。
イラン情勢をめぐっては、トランプ政権はイスラエルとイランが互いにミサイル攻撃を続けていた6月、米国東部時間の土曜日夜にあたる21日にイランの核施設に対する攻撃を実施。週明け23日昼にイランがカタールの米軍基地にミサイルを発射したと報じられると、S&P500が取引時間中に急落する場面もあった。その後、米国がミサイルの迎撃に成功したと伝わるとともに、23日夕方にはイスラエルとイランの停戦合意が発表されている。このため足元のS&P500をめぐっても、週明け以降の値動きが激しくなるリスクがあり、投資家の不安心理がさらに高まる可能性がありそうだ。
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