米国株、イラン交戦への警戒重荷 S&P500反発 雇用統計で波乱も
S&P500は4日に反発したが、前日の下落は取り戻せず。イランとの交戦が投資家心理を悪化させる中、雇用統計が波乱要因になる可能性もある。
アメリカの株式市場で不安がくすぶっている。S&P500種株価指数の4日の終値は前日比0.78%高で、前日の1%近い下落から反発。ドナルド・トランプ大統領らがイランとの交戦の進展に自信を示し、石油の重要通商ルートであるホルムズ海峡の封鎖をめぐる不安拡大が一服したことが好材料になった。4日に発表された民間経済指標が良い結果だったことや、大手ハイテク株の値動きの底堅さも、S&P500の急落を食い止めている。ただ、金融市場では投資家心理は悪化したままで、急落リスクへの警戒が続いていることは確か。6日に発表される2月雇用統計が米国経済の弱さを感じさせれば、経済悪化と物価上昇が同時に進む最悪のシナリオへの懸念が波乱を呼ぶ恐れもありそうだ。またイランからの攻撃が激しさを増すなどして、ホルムズ海峡の危険度が高まった場合には、投資家のリスク回避姿勢がS&P500を動揺させる可能性も考えられる。
S&P500は前日比0.78%高 前日の0.95%安は取り戻せず
S&P500(SPX)の4日の終値は6869.50。ブルームバーグによると、前日比での上昇率の0.78%高は、米国とイスラエルによるイラン攻撃の3日前にあたる2月25日(0.81%高)以来、1週間ぶりの大きさとなった。一方、S&P500は前日に原油価格の急騰が進む中で0.94%安となっており、4日の反発は力強さに欠けたともいえる。4日終値は1月27日の最高値(6978.60)との比較では1.56%安で、距離を縮めきれないでいる。
米国はイランでの制空権を数日中に掌握か ホルムズ海峡航行船舶への支援も強化
S&P500の4日の上昇を後押ししたのは米国とイランの交戦に関するトランプ政権からの情報発信だ。ピート・ヘグセス国防長官は4日の記者会見で、米国とイスラエルが「今後数日のうちに」イランでの制空権を掌握できるとの見通しを示した。また、同席したダン・ケイン統合参謀本部議長は、イランからの攻撃は減少しているとの見解を表明。4日朝の段階で、ドローンによる攻撃は交戦初日との比較で73%減、ミサイル攻撃も同様に86%減になっているという。トランプ氏も4日、記者団に対して「戦況は非常に順調だ」と述べた。
また、スコット・ベッセント財務長官は4日、米CNBCでのインタビューでホルムズ海峡の航行の安全性の確保について「いくつもの発表を予定している」と述べた。ホルムズ海峡封鎖による経済活動への悪影響が和らぐことを期待させる発言で、やはりS&P500にとっての追い風になったもようだ。実際に、米開発金融公社(DFC)は3日、物資や資本の自由な航行を確保するため、中東で活動する海運企業や保険会社を支援すると発表している。トランプ氏は3日、ホルムズ海峡を通過する船舶への保険の提供や、米海軍による護衛をつける考えを示していた。
ADP統計での就業者数は市場予想を超える強さ 大手ハイテク株も底堅さを維持
また4日に発表された経済指標は米国経済の底堅さを示した。民間雇用サービス会社ADPが発表した全米雇用リポートでは、2月の非農業部門の雇用者数(政府部門除く)が前月比6万3000人増となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の5万人増を上回った。ADPのデータによると、2025年7月(10.4万人増)以来の大きな伸びで、米国の労働市場の健全性を感じさせた。米国経済をめぐっては、米サプライマネジメント協会(ISM)が2日に発表した2月の製造業の景況感指数(PMI)も52.4となり、市場予想(51.5)を上回っていた。
こうした中、4日の取引ではS&P500への影響度が大きい大手ハイテク株も底堅さを維持した。アマゾン・コム(AMZN)は前日比3.88%高で、11月3日(4.00%高)以来、4か月ぶりの高い上昇率を記録。テスラ(TSLA)も3.44%高となるなど、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7社のうち5社が値上がりしている。BITA社が7社の株価に基づいて算出するマグニフィセント・セブン指数(MAGSEVEN)の4日の終値は前日比1.06%高。イラン攻撃前の2月27日との比較では1.22%高となっており、投資家の不安が高まる中でも、大手ハイテク株への期待がS&P500の急落を押しとどめている側面がありそうだ。
投資家心理の悪化は変わらず 雇用統計が弱い結果なら最悪シナリオの浮上も
ただ、金融市場では投資家心理の悪化は続いている。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の4日の終値は21.15で、3日連続で20の大台を超えた。前日の23.57からは10.27%低いとはいえ、高水準だ。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
S&P500の今後の見通しをめぐっては、6日午前8時30分(日本時間6日午後10時30分)に発表される2月雇用統計も焦点だ。ブルームバーグがまとめた事前予想によると、非農業部門の就業者数の増加幅は前月比5.7万人増となり、前月(1月)の13.0万人増から大きく低下する見込み。失業率は4.3%、平均時給の伸び率は前年同月比3.7%と予想されており、いずれも前月から横ばいの水準だ。発表される結果が労働市場の弱さを示す内容となれば、イランとの交戦で原油価格が上昇する中、経済の悪化と物価上昇が同時に進む事態への不安も浮上しそうだ。
イランとの交戦の終結はメドが立たず ホルムズ海峡不安でS&P500下落の恐れも
またイランとの交戦は米国の優位が感じられるとはいえ、収束の見込みが立っているわけではない。ヘグセス氏は4日の記者会見で、交戦がどれだけ続くかはトランプ氏の意思に委ねられているとしたうえで、「4週間とみることもできるが、6週間にも8週間にも3週間にもなりうる」と述べた。トランプ氏は2日、イランとの交戦を当初予定していた4-5週よりも「はるかに長い期間」に渡って継続する可能性を示唆しており、経済活動への影響が大きくなっていけば、S&P500にかかる下落圧力も大きくなる。またイランから周辺地域の攻撃がホルムズ海峡をめぐる不安を高めた場合には、S&P500の下落の度合いが大きくなる可能性も残っていそうだ。
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