米国株、上昇失速の懸念 S&P500反落 トランプ氏のFRB批判も火種
S&P500は3週ぶりの反落。トランプ氏へのカナダへの強硬姿勢が重荷となった。15日発表の6月CPIを機に、相場が揺れる可能性もありそうだ。

アメリカの株式市場で上昇機運が失速するおそれが出てきた。S&P500種株価指数の11日の終値は1週間前比0.31%安で、小幅ながら3週ぶりの反落。ドナルド・トランプ大統領が8月1日からカナダ製品への関税を現状よりも引き上げる方針を示したことが重荷となった。カナダへの高関税は物価上昇圧力を想定以上に強め、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げを遠のかせる要因ともいえ、大手ハイテク株や半導体株の値上がりにはペースダウンの兆しがみえ始めた。週明け14日以降の金融市場では6月の消費者物価指数(CPI)などが注目される。物価上昇の過熱が確認されてFRBの利下げが難しくなった場合には、FRBの利下げを繰り返し求めているトランプ氏の動向に注目が集まり、S&P500の見通しが暗くなる可能性もありそうだ。
アメリカのS&P500は週次0.31%安 3週ぶり反落
S&P500(SPX)の11日の終値は前日比では0.33%安の6259.75。S&P500は前日に2025年に入って8回目の最高値(6280.46)を記録していたが、上昇に一服感が出た形だ。ブルームバーグによると、週次での0.31%安は3週ぶりの下落で、トランプ氏がイスラエルとイランの停戦合意を発表した6月23-27日週からの上昇が途絶えた。

トランプ氏がカナダに35%関税を通告 対立激化のおそれも
11日のS&P500の下落の背景には、トランプ氏がカナダへの強硬姿勢を示したことがある。トランプ氏は10日夜に自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、8月1日からカナダ製品に35%の関税を課すと通告するマーク・カーニー首相あての書簡を公表。トランプ氏が7日以降に各国に対して示してきた8月からの相互関税の税率が4月の発表当時と大差なかったことで広がった楽観ムードに冷や水をかけた。
米国は3月4日から米国・メキシコ・カナダ協定を結んでいるカナダとメキシコに対し、合成薬物フェンタニル対策を理由として、協定の基準で北米産とはならない輸入品に25%関税をかけている。一方、4月2日に発表した相互関税の対象からはカナダとメキシコを外していた。トランプ氏は書簡の中で、カナダが対抗関税を発動した場合は同じ税率を35%に上乗せするとしており、対立がエスカレートする可能性も否定できない。
FRBの利下げ見通しは後退 9月利下げ確率は62%に
相互関税の枠外にあるカナダに対する高関税は、米国内の物価上昇圧力を想定以上に強める要因ともいえ、11日の金融市場ではFRBの利下げ見通しが後退した。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれている9月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は4.155%で、前日の4.145%から上昇している。9月利下げの確率は約62%で、やはり前日の68%から後退した。



S&P500には割高感も 予想PERは2月下旬以来の高水準に
S&P500の上昇にブレーキがかかった要因には割高感もありそうだ。ブルームバーグによると、S&P500の水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)はS&P500が最高値をつけた10日に23倍に到達。2月下旬以来の高水準となっている。

6月CPIで物価上昇圧力高まるか トランプ氏のパウエル氏批判は不安要素に
S&P500の今後の見通しをめぐっては、15日に発表される6月CPIが最大の焦点。物価上昇圧力の強まりが感じられた場合には、FRBの利下げ期待をさらに遠のかせることになりそうだ。
この場合にはトランプ氏がFRBのジェローム・パウエル議長への批判をさらに強める可能性がある。トランプ氏は11日、記者団に対してパウエル氏を解任する意思を否定しながらも、「ひどい仕事をしている。金利は3%ポイントは低くあるべきだ。彼は米国に多額の負担をかけている」と述べた。、また、米予算管理局(OMB)のラッセル・ボート局長は10日、Xへの投稿で、FRBの庁舎改修にあたって豪華な設備の導入が計画されており、費用が当初計画を上回る25億ドルに及ぶ見込みだと指摘。パウエル氏が6月25日に豪華な改修を否定する議会証言を行ったことについて深刻な問題があるとしている。
金融市場でトランプ政権がパウエル氏の解任を画策しているとの見方が強まれば、トランプ氏が4月にパウエル氏への批判を強めたことが米国株と米国債、ドルが売られる「アメリカ売り」につながった局面を連想させる。トランプ氏とパウエル氏の対立はS&P500に下押し圧力をかける火種といえそうだ。
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