米国株、関税不安を克服 S&P500反発 アップル急騰で最高値視野
S&P500は0.73%高となり、雇用統計ショック前の水準を回復。トランプ氏のインド製品や半導体に対する高関税懸念を跳ね返し、楽観ムードが続いている。

アメリカの株式市場が関税不安を跳ね返している。S&P500種株価指数の6日の終値は前日比0.73%高で、2営業日ぶりの反発。7月雇用統計が株式市場を揺らす前日にあたる7月31日の水準を回復した。6日にはドナルド・トランプ大統領がインド製品への関税の50%への引き上げを決めるとともに、輸入半導体には100%の関税をかけるとも言及したが、株式市場での楽観ムードが勝った形だ。大手ハイテク株では米国内への追加投資を発表したアップルが約3か月ぶりの急騰を記録するなどしており、投資家心理は改善している。一方、半導体株では米中対立への不安が重荷となり、値下がりの動きもみられた。ただ、株式市場では連邦準備制度理事(FRB)が利下げに向かうとの期待も強く、S&P500の今後の見通しをめぐっては、底堅い展開が見込まれそうだ。
アメリカのS&P500は0.73%高 雇用統計ショック前の水準を回復
S&P500(SPX)の6日の終値は6345.06で、7月30日(6362.90)以来の高値となった。8月1日に7月雇用統計の悪い結果でS&P500が1.60%安と急落する前の水準を回復した形だ。ブルームバーグによると、7月28日につけた最高値(6389.77)からは0.70%安にあたる水準で、記録更新が視野に入った。

トランプ氏はインドへの50%関税を決定 アップルの米国への追加投資は歓迎
6日はS&P500をめぐる逆風が強かった。ロシア産原油を輸入しているインドを批判してきたトランプ氏は6日、インド製品に対する関税を21日後から25%引き上げる大統領令に署名。インドに対する相互関税が7日から25%になることと合わせて、インド製品には50%の関税がかかる可能性が出てきた。また、トランプ氏は記者団に対して、「半導体には約100%の関税をかける」とも述べており、半導体を輸入する米国企業に大きな混乱が生じるおそれも高まっている。
トランプ氏の関税攻勢にも関わらずS&P500が強さを発揮した背景には、トランプ氏と米国企業の良好な関係が感じられていることがある。アップルは6日、米国内に1000億ドルの追加投資を行うと発表し、今後4年間での投資額はすでに発表済みの投資額と合わせて6000億ドルになるとした。トランプ氏はアップルのティム・クックCEOとともにホワイトハウスで記者会見し、半導体への100%関税について、米国内への投資を確約している「アップルのような企業」にはかからないとした。
また、アップルは米国で販売するiPhone(アイフォン)の生産拠点を中国からインドにシフトさせているが、インド製品に対する50%関税の影響は出ないもようだ。米CNBCは、インドに対する追加の25%関税は相互関税の税率として扱われるとホワイトハウスが説明していると報道。トランプ政権は4月にスマートフォンは相互関税の除外品目になっていることを明確にしており、CNBCは「アップルはインドを標的とした関税の影響をほぼ受けない」としている。
アップルの株価は5.09%高の急騰 アマゾンやテスラも大きく値上がり
こうした中、6日の株式市場ではアップル(AAPL)の株価が前日比5.09%高となり、米中の関税大幅引き下げ合意が発表された5月12日(6.18%高)以来の上昇率となった。このほかS&P500への影響度が高い大手ハイテク株では、アマゾン・コム(AMZN)が4.00%高、テスラ(TSLA)が3.62%高となっている。マグニフィセント・セブンと呼ばれる大手ハイテク7社の中では、株価の値上がりが続いてきたマイクロソフト(MSFT)以外の6社が値上がりした。

S&P500をめぐる楽観ムードは、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の値動きにも表れた。シカゴ・オプション取引所によると、VIXの6日の終値は前日よりも6.05%低い16.77。7月雇用統計発表前日の水準(16.72)に近づいた。 VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒が高いことを示す。

半導体株には弱さも AMDが中国向け輸出への不安で6.42%安
一方、6日の株式市場では、半導体株の値動きに弱さが見られた。人工知能(AI)ブームの追い風を受ける半導体大手のNVIDIA(エヌビディア、NVDA)は前日比0.65%高と上昇したものの、アドバンスド・マイクロ・デバイゼス(AMD)は6.42%安の急落。前日の2025年4-6月期決算発表で、中国向け半導体の輸出許可が下りていないことが明かされたことが悪材料になった。エヌビディアは7月14日に、トランプ政権が中国向け半導体製品H20の輸出を認めることを確約したと発表しているが、米中対立が半導体株にとっての不安材料であることに変わりはないようだ。さらにS&P500構成銘柄ではないものの、4-6月期決算発表が失望された英半導体大手アーム・ホールディングスの株価(ARM)も0.81%安となっている。

米国の実体経済への不安は継続 FRBの利下げ期待がS&P500を下支えか
また、S&P500をの今後の見通しをめぐっては、米国の実体経済の行方という不安材料も消えていない。米サプライマネジメント協会(ISM)が5日に発表した非製造業(サービス業)の景況感指数(PMI)は50.1で、ブルームバーグがまとめた市場予想(51.5)を下回った。7月雇用統計と同じ1日にISMが発表した製造業のPMIも市場予想を下回っており、トランプ氏の高関税を背景にした経済の不透明感が企業活動を抑制している可能性がありそうだ。

ただ、トランプ氏はインドと同様にロシア産原油を輸入しているとされる中国に対しては関税引き上げを決めておらず、関係悪化を望んでいないようにもみえる。また株式市場では米国の実体経済が悪化すれば、FRBが利下げに踏み切るとの期待も強い。サンフランシスコ連銀のメアリー・デーリー総裁は6日のアラスカ州での講演で、高関税による物価上昇は持続的ではないとの見方を示すと同時に、労働市場が現状以上に悪化することを問題視。「今後数か月のうちに金融政策を調整する必要が出てくるだろう」と述べた。
ブルームバーグによると、6日の金融市場では、9月16、17日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利は4.092%と見積もられており、現状の4.25-4.50%(中間値4.375%)から0.25%ポイント超の利下げが想定されている形だ。FRBの利下げで金利水準が下がることは株式投資の相対的な魅力が上がることを意味し、S&P500を下支えする効果が期待できそうだ。

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