米国株、上昇加速へ残る中国リスク S&P500週次連騰 企業決算も焦点
S&P500は2週続伸で最高値を更新。9月CPIが安心材料となった。今後は大手ハイテク決算や米中首脳会談を前にした情報発信が注目される。
アメリカの株式市場に安心感が広がった。S&P500種株価指数の24日の終値は1週間前比1.92%高で、2週連続の上昇。2週間半ぶりに最高値を更新した。朝方に発表された9月の消費者物価指数(CPI)の伸び率が市場予想を下回ったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げが株価を下支えするとの観測が深まった。24日の金融市場では投資家心理も落ち着きをみせ、S&P500の上昇加速への期待が高まっている。一方、S&P500の今後の見通しをめぐっては、上限レベルに達した割高感が重荷。これ以上の値上がりには週明け27日以降に行われる大手ハイテク企業5社の決算発表が投資家に評価されることがが不可欠だ。また30日に行われる米中首脳会談に関しては、米中双方からの情報発信次第で相場のムードが大きく揺れる可能性があり、上昇機運が強まったS&P500が急落に見舞われるリスクも残っている。
アメリカのS&P500は週次1.92%高 2週間半ぶり最高値
S&P500(SPX)の24日の終値は前日比では0.79%高の6791.69。8日につけた6753.72を超え、12営業日ぶりに最高値を更新した。ブルームバーグによると、週次での上昇率(1.92%高)は、ドナルド・トランプ大統領の高関税政策が大手ハイテク企業に及ぼす悪影響への懸念が後退した8月4-8日週(2.43%高)以来の大きさだった。24日終値は2024年末比では15.47%高となっている。
9月CPIで物価上昇の過熱感はなし FRBの年内2回利下げの見通し深まる
S&P500の上昇を勢いづかせたのは、24日朝に発表された9月CPIで物価上昇の過熱が感じられなかったことだ。9月CPIでの総合指数と、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率はいずれも3.0%で、それぞれブルームバーグがまとめた市場予想の3.1%を下回った。またコア指数から家賃を除いた指数の伸び率は2.6%で、6か月ぶりに前月の伸び率を下回っている。米国の物価上昇に過熱感がみられれば、FRBが労働市場を下支えするための利下げに踏み切ることが難しくなる懸念もあっただけに、9月CPIの結果は株価の好材料として受け止められた。
実際、24日の金融市場ではFRBが28、29日の連邦公開市場委員会(FOMC)に加え、12月FOMCでも利下げに踏み切るとの観測が深まった。ブルームバーグによると、24日の金融市場では12月FOMC後の政策金利は3.603%と見込まれ、前日よりも0.020%ポイント低くなった。金利の先安観は株式投資の魅力を相対的に高める、S&P500にとっての追い風とみなされる。
また、FRBの利下げへの期待は、投資家心理を落ち着かせている。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の24日の終値は前日よりも5.38%低い16.37となった。前回の最高値をつけた10月8日(16.30)以来の低水準だ。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
S&P500に割高感の壁 予想PERは「上限」に近づく23.6倍
一方、S&P500の今後の見通しをめぐっては、割高感が壁になる可能性がある。ブルームバーグによると、S&P500の水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は23.6倍。S&P500の予想PERは2021年3月以降では23.9倍を超えたことがないことを踏まえれば、S&P500のさらなる値上がりには企業業績への期待がさらに高まることが必要といえそうだ。
29日と30日に大手ハイテク5社が決算発表 競争激化の中での戦略に注目
こうした中、米国の株式市場では週明け以降、S&P500への影響が大きい大手ハイテク企業の株価が大きく動く可能性がある。29日の取引時間終了後に、メタ・プラットフォームズ(META)、アルファベット(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)の決算発表、30日にはアップル(AAPL)とアマゾン・コム(AMZN)の決算発表が行われるためだ。
大手ハイテク株では22日に7-9月期決算を発表したテスラ(TSLA)が業績回復の道筋を示すことができず、株価は24日までの週次で1.27%安となった。29日と30日に決算を発表する5社はいずれも週次2-5%程度の上昇を確保しているが、ChatGPTで知られるオープンAIが積極投資を打ち出す中、人工知能(AI)ブームの中での競争は激しさを増している。各社のサービス拡大や利益確保をめぐる戦略が投資家から不十分と判断されれば、S&P500に下押し圧力がかかることも考えられそうだ。
30日には米中首脳会談 双方から強硬姿勢が出ればS&P500に急落リスクも
また、週明けの株式市場では、30日の韓国での実施が発表された米中首脳会談をめぐる思惑も相場を動かす材料になりそうだ。米中関係では10日にトランプ氏が中国によるレアアース輸出規制強化に不満を示し、中国製品に100%追加関税を課すことを示唆。この日のS&P500は前日比2.71%安の急落に見舞われ、最高値から後退するきっかけを作った。首脳会談実施の正式決定は米中間の隔たりが広がっていないことの表れといえるものの、会談を前に両者が強硬姿勢をちらつかせるなどの動きが出れば、投資家心理が揺れ動くことでS&P500に改めてショックが走るおそれもありそうだ。
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