メタ、株価下落のおそれも 29日決算 AI展開競争での勝機示せるか
メタの29日の7-9月期決算はAIサービスでの競争を勝ち抜く戦略が焦点。設備投資の積み増しだけでは投資家不安を招くおそれもある。

SNS大手メタ・プラットフォームズが29日に行う2025年7-9月期決算発表は人工知能(AI)サービスでの競争を勝ち抜く戦略を示せるかが焦点だ。メタはこれまでAI活用を自社の収益向上につなげられていると評価されてきたが、9月下旬以降は株価が頭打ちになっている。対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIが大規模な投資計画を相次いで打ち出していることが逆風になっているもようだ。メタは29日の決算発表で、ライバルの急拡大に対抗できるだけの戦略を示す必要があるが、安易にAI関連の設備投資額を積み増すだけでは、株価下落のきっかけを提供するおそれもある。さらに世界経済の不透明感もメタの大黒柱である広告事業にとっての悪材料といえ、業績見通しの強気度も株価の動向を左右することになりそうだ。
メタの2025年7-9月期決算は総収入が21.9%増の見通し
メタはアメリカ東部時間29日午後4時30分(日本時間30日午前5時30分)に決算会見を開く。ブルームバーグの事前予想のまとめによると、メタの7-9月期決算は総収入が前年同期比21.9%増の494.91億ドルになる見通し。1株当たり利益(EPS)は11.8%増の6.74ドルと見込まれている。予想通りになれば、総収入の伸び率は前四半期(4-6月期)の21.6%増とほぼ同じ水準。1株当た利益の成長は前四半期(38.4%増)から大きく鈍化することになる。メタは直近22回の四半期決算のうち3回で総収入が市場予想を超えられなかった。1株当たり利益では5回、予想のクリアに失敗している。

メタの株価は2024年末比で25.24%高 8月以降は最高値を更新できず
メタの株価(META)の21日の終値は733.27ドル。前回決算発表があった7月30日との比較では5.47%高となっている。2024年末比では25.24%高で、マグニフィセント・セブンと呼ばれる大手ハイテク7社の中では3番手につけているが、8月12日に最高値(790.00ドル)をつけてからは株価に勢いがなくなった。

ブルームバーグによると、直近の株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は21倍程度。3か月前の前回決算発表時とほぼ同水準にある。アナリストが提示する目標株価の平均は約870ドルで、現状よりも19%ほど高い。82人のアナリストのうち73人は買い、8人は維持、1人は売りを勧めている。
AI開発の収益化で評価 オープンAIの積極展開は株価に逆風
メタの前回の決算発表は、総収入と1株当たり利益の両方で市場予想を大きく上回ると同時に、成長率が前四半期から加速するという好決算。決算発表翌日の7月31日の株価は前日比11.25%高と急騰した。メタは自社開発のAIをSNS上で表示する広告の最適化に活用して効果を上げていると説明しており、AI開発の成果を収益につなげることができているとみられている。
ただ、メタの株価はオープンAIによる相次ぐ大規模投資の発表で勢いを削がれた感がある。オープンAIが半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)から最大1000億ドルの投資を受けて10ギガワット(1000万キロワット)のデータセンターを展開する構想を発表した9月22日、メタの株価は前週末比1.70%安と下落。オープンAIはこの後もアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)との提携による6ギガワット相当のデータセンターの展開や、ブロードコム(AVGO)との提携による10ギガワット規模のデータセンター構想も公表している。メタの足元の株価の水準は、オープンAIとエヌビディアの提携発表前日からは5.80%安の水準だ。
メタも大規模データセンター建設構想 設備投資が利益圧迫の要因に
一方、メタのこのところの動向からはオープンAIへの対抗姿勢も感じられる。メタは15日、テキサス州に1ギガワット相当のデータセンターを建設すると発表。また、マーク・ザッカーバーグCEOは7月14日のSNSへの投稿では、数ギガワット規模のデータセンター「プロメテウス」を2026年に稼働させると同時に、「ハイペリオン」と名付けたプロジェクトに関しては最大5ギガワットまで拡大できるとしている。
ただ、メタが単にオープンAIとのデータセンター拡充競争に乗り出すだけでは、かえって投資家の不安を招き、株価下落につながる可能性もある。メタの4-6月期の設備投資額は170.10億ドルで総収入に対する比率は35.8%まで高まってきた。スーザン・リーCFOは前回の決算会見でこれまでの設備投資の積み増しが減価償却費を膨らませる要因であることを踏まえ、「2026年のコストには大きな上昇圧力がかかる」と述べていた。

資産運用会社との共同事業で資金拠出 10-12月期の総収入の見通しにも注目
こうした中、メタは21日にはハイペリオンについてオルタナティブ資産運用会社のブルー・アウル・キャピタルが運用するファンドと共同で立ち上げる事業体で建設し、所有すると発表。共同事業体の持ち分の80%をブルー・アウル、20%をメタが保有し、建設などに必要な270億ドルの必要資金を拠出するという。ハイペリオンの完成後は、メタが延長可能な4年間のリース契約を結び、すべてのデータセンターを利用するなどとしている。29日の決算会見では、こうしたプロジェクトのメタの財務に与える影響についての説明も注目される。
またメタにとっては労働市場の悪化が進んできた米国経済の先行き不透明感や、米国と中国の関係悪化も、広告事業の収入減少を懸念させる材料といえそうだ。メタは10-12月期の総収入について、7-9月期よりは緩やかになるとの見通しを示しており、決算会見で示す業績見通しが市場の期待に応えられるかも株価の動きを左右することになる。
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