米国株、AIバブル不安も S&P500また最高値 6か月で36%上昇
S&P500は4月上旬から36%上昇。AIバブルの懸念も囁かれれる。ただ、2023年以降の株価急騰には企業収益の裏付けがあるともいえそうだ。

アメリカの株式市場で人工知能(AI)バブル不安が浮上し始めた。S&P500種株価指数の8日の終値は前日比0.58%高で、2025年に入って33回目の最高値更新。4月上旬からの6か月で約36%高の急騰をみせている。半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)は8日に4日ぶりに反発し、AIブームへの期待の根強さを感じさせた。ただ、S&P500は前日にはクラウド事業を手掛けるオラクルの収益性の低さをめぐる報道で8営業日ぶりに下落。S&P500の年間上昇率の3年連続20%を超えが視野に入る中、株式市場では1990年台後半から2000年にかけてのITバブル期との比較も目立ちだしている。一方、足元のS&P500の2023年以降の値上がりはITバブルの前半期と比べれば慎重さも感じられ、企業収益の好調さの裏付けがあるとみることもできる。このためS&P500の今後の見通しをめぐっては、10月下旬から本格化する大手ハイテク企業の2025年7-9月期決算発表の重要性が増してきそうだ。
アメリカのS&P500は0.58%高 相互関税一部停止から35.54%上昇
S&P500(SPX)の8日の終値は6753.72。2日ぶりの反発で、6日につけた6740.28を超え、最高値を更新した。ブルームバーグによると、S&P500はドナルド・トランプ大統領が相互関税の一部を停止する前日にあたる4月8日に4982.77まで下落していたが、足元までの6か月間で35.54%高の急騰をみせたことになる。


S&P500は3年連続20%超上昇が視野 AIバブルへの不安も浮上
ただ、S&P500の値動きをめぐっては「AIバブル」への不安も囁かれ始めた。7日の株式市場では、米インターネットメディアのジ・インフォメーションが、オラクルのAIクラウド事業の粗利益率の低さを指摘する記事を配信。大手ハイテク株や半導体株が値下がりし、S&P500も前日比0.38%安となった。オラクルは対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIとの大型契約をめぐる報道が株式市場を沸かせていただけに、投資家の反応が大きくなったようだ。
こうした中、株式市場では急激な株価上昇をITバブルとなぞらえる向きも目立つようになっている。ブルームバーグによると、S&P500はITバブル期にあたる1995年から1999年にかけての5年連続で19-34%の値上がりを記録した後、2000年から2002年にかけて3年連続で10-23%の値下がりに見舞われた。一方、2022年11月のChatGPTの発表で火がついたS&P500の上昇率は、2023年が24.23%高、2024年が23.31%高というハイペース。2025年の上昇率は8日段階で14.83%高となっており、年末までの約3か月であと4.50%上昇すれば3年連続で年間上昇率が20%を超えることになる。ITバブル期を連想させる力強さといえると同時に、投資家の脳裏にはバブル崩壊への不安もよぎる状況だ。

S&P500の値上がりペースには慎重さも 予想収益の上昇で割高感は頭打ちにも
一方、足元のS&P500の急騰はITバブル期ほどではないとみることもできる。S&P500の8日の終値を2022年末と比較すれば約76%の上昇で、1995年からの2年10か月で記録した112%もの上昇よりは穏やかだといえる。トランプ氏による相互関税の発表が米国経済の見通しを悪くした結果、投資家の慎重姿勢が強まり、S&P500の値上がりの勢いが削がれたとみることができそうだ。

これに対して、S&P500の水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は足元の株式市場で、ITバブル期よりも高い水準で推移している。ブルームバーグによると、8日時点の予想株価収益率は23.7倍で、高くても20.5倍程度だったITバブルの前半期の水準を超えている。とはいえ、S&P500の予想PERは2024年11月11日に23.9倍をつけた後の期間は上昇が頭打ちになっているとみることも可能だ。この間のS&P500の値上がりは12.54%高で、予想1株当たり利益(EPS)の上昇率(13.66%)に裏付けられている。

7-9月期決算で強い結果と見通しを示せるか S&P500のバブル不安払しょくも
このためS&P500の今後の見通しをめぐっては、10月下旬以降に本格化する大手ハイテク企業の7-9月期決算発表の重要度が高まる。マグフィニセント・セブンの中では、電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)が22日に決算を発表。29日にはメタ・プラットフォームズ(META)とアルファベット、マイクロソフト(MSFT)の3社、30日にはアップル(AAPL)の決算発表が予定されている。アマゾン・コム(AMZN)は8日段階で決算発表日を公表していない。
米国経済をめぐっては、1日から始まった政府機関一部閉鎖の結果、経済指標の発表が停止しており、経済の実体が見極められない状態が続いている。こうした中、大手ハイテク各社が成長性や収益性で強い結果と見通しを示せすことができれば、S&P500がバブル懸念を振り払って上昇を続ける可能性もありそうだ。
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