米国株、週明けに試練も S&P500週次反発 エヌビディア記録的連騰
S&P500は週次2.43%高の反発。エヌビディアは11週連騰を記録した。一方、労働市場の悪化は進んでおり、12日発表の7月CPIが次の試練となる。

アメリカの株式市場で上昇機運が強まっている。S&P500種株価指数の8日の終値は1週間前比で2.43%高となり、6週ぶりの大きな上昇率を記録。7月雇用統計を受けて不安が急拡大した前週から大きく反発した。背景にあるのは人工知能(AI)ブームへの期待。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)は11週連続での上昇となり、過去最高に並ぶ連騰記録となった。またドナルド・トランプ大統領との関係改善が好材料となったアップルも週次で5年ぶりの上昇率となっている。一方、米国の雇用市場の不安は解消されておらず、失業保険の総受給者数は2021年秋以来の高さ。頼みの綱の米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しも、12日に発表される7月の消費者物価指数(CPI)を機に後退するおそれがある。週明けの11日以降の金融市場では、S&P500への期待の強さが試されることになりそうだ。
アメリカのS&P500は週次2.43%高 7月雇用統計後の急落から反発
S&P500(SPX)の8日の終値は前日比では0.78%高の6389.45。2日ぶりの反発で、7月28日につけた最高値(6389.77)まで0.32ポイントに迫った。ブルームバーグによると、週次での上昇率(2.43%高)は、トランプ氏がイスラエルとイランの停戦合意を発表するなどした6月23-27日週(3.44%高)以来の大きさ。前週(7月28日-8月1日)は7月雇用統計が大幅に悪化したことで2.36%安となっていたが、楽観ムードが戻った形だ。

エヌビディアは11週連騰で最長タイ記録 アップルの週次13.33%高は5年ぶり高さ
S&P500の上昇の背景となっているのはAIブームへの期待だ。AI開発やサービス展開に不可欠な最先端半導体の供給源となっているエヌビディアの株価(NVDA)は週次5.17%高となり、2025年2-4月期決算を発表した5月26-30日週(2.92%高)以来11週連続での上昇。2024年1月上旬から3月下旬にかけて記録した週次連騰記録に並んだ。半導体株ではこのほか、ブロードコム(AVGO)も週次5.66%と急騰。半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)も2.71%高となっている。

また株式市場ではトランプ氏の高関税政策への懸念も後退しているもようだ。トランプ氏は6日、半導体に約100%の関税を課す方向性を示しつつも、米国内への1000億ドルの追加投資を決めた「アップルのような企業」には適用されないと言及。アップルは前週に4-6月期の好決算を発表していたこともあり、アップルの株価(AAPL)は8日までの週次で13.33%高となった。2020年7月27-31日週(14.73%高)以来、5年ぶりの上昇率で投資家の歓迎度合いの大きさが感じられる。S&P500への影響が大きいマグニフィセント・セブンと呼ばれる大手ハイテク7社の中では、マイクロソフト(MSFT)が週次0.39%安となり、11週ぶりに反落したものの、残りの6社はそろって上昇している。

失業保険総受給者数は2021年秋以来の高さ FRB利下げ見通しの拡大にはブレーキ
一方、7月雇用統計で示された労働市場の弱さへの懸念は続いている。労働省が7日に発表した週次の失業保険関連統計では、7月20-26日週段階での失業保険の総受給者数は前週よりも3.8万人多い197.4万人となり、6週ぶりの上昇となった。総受給者数は2021年10月31日-11月6日週(204.1万人)以来の大きさで、労働市場の悪化が進んでいるといえそうだ。S&P500にとっては米国経済の悪化で企業業績が下押しされるという悪いシナリオも浮かぶ。

こうした労働市場悪化の動きにも関わらず、S&P500の上昇が維持されている背景には、AIブームとともに、FRBが利下げに動くことへの期待もある。FRBの利下げで金利水準が低くなれば、株式の投資先としての魅力が相対的に高くなり、株式市場にとっては追い風になるといえるからだ。
ただ、金融市場ではFRBの利下げ見通しは、一方的に強まっているわけではない。ブルームバーグによると、8日時点の金融市場では9月16、17日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は4.107%になると見積もられており、雇用統計発表当日の4.099%からわずかに上昇している。

物価上昇過熱ならFRBの利下げに逆風 12日発表の7月CPIが次の試練に
FRBの利下げへの期待拡大に歯止めをかけているのは、12日に発表される7月CPIへの警戒感だ。米国の物価にはトランプ関税による上昇圧力がかかっており、7月CPIの結果次第では、FRBが物価上昇過熱懸念に直面し、労働市場を下支えするための利下げが難しくなるとの見方が強まる可能性がある。米サプライマネジメント協会(ISM)が5日に非製造業(サービス業)の景況感指数(PMI)を発表した際は、サービス業の仕入れ価格指数は69.9とされ、2022年10月(70.7)以来の高さとなっている。
労働市場の悪化と物価上昇加速が同時に進む展開は米国経済にとっての最悪シナリオ。週明け以降の金融市場でこうした不安が高まった場合、AIブームへの期待とのせめぎ合いでS&P500が揺れ動く筋書きも考えられそうだ。
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