米国株、復活 S&P500上期5.5%高 企業業績悪化の恐れ拭えず
S&P500は上半期を5.50%高で終了。4月につけた18.90%安からの復活を果たした。今後は経済指標や企業業績が投資家の期待に応えられるかが焦点だ。

アメリカの株式市場が復活した。S&P500種株価指数の6月30日の終値は前週末比0.52%高となり、2025年上半期(1-6月)を2024年末比5.50%高で終えた。ドナルド・トランプ大統領の高関税政策への懸念が高まった4月上旬には、2024年末比18.90%安となる場面もあったが、投資家の不安は大きく後退したといえる。ただ、大手ハイテク株の値動きは勢いづいているわけではなく、今後もS&P500を牽引し続けられるかどうかには不透明感もある。また、トランプ氏の高関税をめぐる混乱の火種はくすぶっており、企業業績に悪影響が出る恐れは拭えない。S&P500の今後の見通しをめぐっては、経済指標や企業業績が投資家の期待を維持できるかが焦点となりそうだ。
アメリカのS&P500は前日比0.52%高 2営業日連続で最高値を更新
S&P500(SPX)の30日の終値は6204.95。前週末27日に約5か月ぶりに更新した最高値を改めて塗り替えた。S&P500はトランプ氏がイスラエルとイランの停戦合意を公表した23日からの6営業日で3.97%高となっており、中東情勢の緊張緩和をきっかけに一気に上昇が勢いづいた形だ。

S&P500は2025年上半期に5.50%高 相互関税発表後の18.90%安から復活
この結果、S&P500の2025年上半期の上昇率は5.50%高となった。S&P500は4月8日には18.90%安まで値下がりしていたが、トランプ氏が9日に相互関税の一部停止を発表し、中国との対決姿勢も弱めていったことで値上がり基調に転じた。S&P500が半期ベースで下落したのは米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを始めた2022年上半期に20.58%安となったのが最後。2022年下半期からは6半期連続での上昇を維持している。

S&P500の上昇の背景には投資家の不安の後退がある。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の30日の終値は16.73。前営業日比では2.51%高だが、3月28日から5月9日にかけては30営業日連続で20を超える高水準で推移していたことを踏まえれば、投資家心理は大きく改善したといえる。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

大手ハイテク株の上半期は明暗 エヌビディア17.65%高、テスラは21.34%安
ただ、S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株の上半期の値動きは明暗が分かれた。半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)の株価は30日の終値で前週末比0.15%高の157.99ドルをつけ、4営業日連続で最高値を更新。上半期の上昇率は17.65%高となった。メタ・プラットフォームズ(META)も上半期26.06%高、マイクロソフト(MSFT)も上半期18.01%高となり、S&P500を牽引している。一方、電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)は上半期21.34%安で、2024年上半期(20.36%安)以来2半期ぶりの下落。アップル(AAPLも18.07%安となり、2023年下半期(0.74%安)以来3半期ぶりの下落となった。

テスラの株価不振の要因には、EVの販売減少が続いていることや、イーロン・マスクCEOとトランプ氏の蜜月関係が崩れたとみられていることがある。またアップルはトランプ氏がすでに発動している中国製品に対する20%関税などの結果、4-6月期だけで「9億ドルの負担増になる」との見通しを示している。今後も大手ハイテク各社の業績への懸念が材料視された場合には、S&P500の足を引っ張る要因になることも考えられる。
米国とカナダの通商協議に混乱 S&P500の見通しは製造業PMIなどが左右か
またS&P500の今後の見通しをめぐっては引き続き、トランプ氏の高関税政策が引き金を引いた世界経済の混乱への懸念が残る。トランプ氏は28日にカナダが導入を決めたデジタルサービス税に不満を示し、カナダとの通商協議を即時に停止し、カナダに対する新たな関税を発表すると宣言。これを受けけてカナダ政府は29日にデジタルサービス税の撤回を発表し、マーク・カーニー首相とトランプ氏が7月21日までの合意を目指した協議を行うとした。デジタルサービス税はアルファベット(GOOGL)やアマゾン・コム(AMZN)、メタなどの業績に逆風になるとみられており、大手ハイテク株の株価にとっては重荷だ。
こうした中、米サプライマネジメント協会(ISM)が7月1日午前10時(日本時間1日午後11時)に発表する6月の製造業景況感指数(PMI)は、企業業績の見通しを占う指標として注目されそうだ。ブルームバーグがまとめた市場予想では、製造業PMIは48.8になると見込まれている。6月2日に発表された5月の製造業PMIは予想を下回る悪い結果で、S&P500を下押しする要因となっていた。

このほか、米国の実体経済をめぐっては3日に非製造業(サービス業)PMIと6月の雇用統計が発表され、その後は大手ハイテク企業の2025年4-6月期決算発表も本格化する。AIブームへの期待が株価上昇要因となる中、S&P500の今後の見通しは、経済指標や大手ハイテク各社の業績が投資家の期待に応えられるかどうかで左右されることになりそうだ。
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