米国株、AI期待で最高値 S&P500週次反発 高関税の見通しには不安
S&P500は3週ぶりの反発で4か月ぶりに最高値を更新。エヌビディアが牽引役でAIブームが再燃している。一方、高関税の悪影響は不安材料だ。

アメリカの株式市場が人工知能(AI)ブーム再燃への期待に沸いている。S&P500種株価指数の28日の終値は2月以来の最高値を更新。1週間前比3.44%高で3週ぶりの反発となった。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)は週次9.66%高で、他の大手ハイテク各社とともに上昇を牽引した。また28日に発表された5月の物価関連統計も投資家の不安拡大にはつながらず、投資家心理の改善が続いている。ただ、ドナルド・トランプ大統領が4月に打ち出した相互関税の一部停止の期限切れを7月9日に控える中、S&P500の今後の見通しが改めて悪くなる可能性は残る。すでに発動されている高関税の経済への悪影響がこれから表面化することも考えられ、週明け以降に発表される6月雇用統計などの結果に注目が集まりそうだ。
アメリカのS&P500は週次3.44%高 4か月ぶりに最高値を更新
S&P500(SPX)の27日の終値は前日比では0.52%高の6173.07。2月19日の6144.15を上回り、約4か月ぶりの最高値更新を果たした。週次での3.44%高は3週ぶりの反発で、伸び率は米国と中国の関税大幅引き下げ合意やジョー・バイデン前政権が打ち出した半導体輸出規制見直し案の撤回が発表された5月12-16日週(5.27%高)以来の大きさだった。

エヌビディアは週次9.66%高 AMDなども急騰し、AIブームへの期待再燃
S&P500を牽引したのはエヌビディアだ。エヌビディアの株価(NVDA)の27日の終値は157.75ドルで、25日から3日連続で最高値を更新。週次での9.66%高はやはり、5月12-16日週(16.07%高)以来の大きさだった。エヌビディアの株価は2025年2-4月期決算発表に際して示した業績見通しが好感された5月26-30日週から5週連続で値上がりしている。エヌビディアはAIの開発やサービス展開に不可欠な高性能半導体で急成長しており、AIブームへの期待の再燃が株価上昇につながったといえる。

エヌビディア以外の半導体株でもアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)が27日までの週次で12.14%高。ブロードコム(AVGO)は週次7.74%高で、4月下旬から10週連続での値上がりを達成している。また半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)も週次8.11%高と好調だ。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)も週次14.08%高の急騰を記録している。
アルファベットは週次7.14%高 マグニフィセント・セブンがそろって上昇
エヌビディア以外の大手ハイテク株では、アルファベット(GOOGL)が27日までの週次で7.14%高、メタ・プラットフォームズ(META)が7.52%高、アマゾン・コム(AMZN)が6.49%高となり、大きく値を伸ばした。マグニフィセント・セブンと呼ばれる大手ハイテク7社の株価はいずれも週次で値上がりしており、S&P500を牽引している。

5月PCE物価指数はコア指数の伸び率が予想を上回る 投資家心理は悪化せず
また、S&P500の好調さの背景には、トランプ氏の高関税政策が実体経済に及ぼす影響に対する楽観もありそうだ。27日に発表された5月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は、総合指数が前年同月比2.3%で、ブルームバーグがまとめた市場予想通りの結果。一方、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は2.7%で、こちらは市場予想(2.6%)を上回ったが、株式市場では高関税の悪影響は懸念されたほどの大きさではないと受け止められたようだ。

投資家の楽観はウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の値動きにも表れている。シカゴ・オプション取引所によると、VIXの28日の終値は前日よりも1.63%低い16.32。VIXは20日から6営業日連続で前日からの低下が進んでいる。23日にイスラエルとイランの停戦合意が発表されたこともあり、S&P500の見通しに対する過度な不安が後退したといえそうだ。

トランプ氏はカナダとの通商協議を停止 相互関税一部停止は7月9日に期限切れ
ただ、S&P500の今後の見通しをめぐっては、トランプ氏の高関税が改めて投資家心理を揺さぶる可能性がある。トランプ氏は28日午後の取引時間中、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿でカナダとのすべての通商協議を即時に停止すると表明。カナダに対する関税を「今後7日以内」に通達するとした。カナダが米国のハイテク企業を標的としたデジタルサービス税の導入を決めたことを理由に挙げている。カナダの公共放送CBCによると、デジタルサービス税はアマゾンやアルファベット、メタなどの企業に対して、カナダの利用者から得た収入の3%の支払いを求める内容だという。
トランプ氏の高関税への注目が集まるのは、4月9日に発表された相互関税の一部停止が7月9日に期限切れを迎えるからだ。スコット・ベッセント財務長官は27日、FOXビジネスでのインタビューで、米国が想定する18の重要な貿易相手のうち、すでに交渉が終わったと位置づけられているイギリスと中国を含め、10-12の貿易相手との協議がまとまるとの見解を示した。その他についても9月1日のレイバーデーまでには決着すると述べている。
関税協議の見通しには不透明さ 6月雇用統計などの経済指標に注目
ただ、トランプ氏が示したカナダへの強硬姿勢は、これらの交渉の見通しの不透明さを感じさせたことは否めない。トランプ氏は28日のホワイトハウスでの記者会見で交渉期限について「伸ばすこともできるし、短くすることもできる」と発言。「『おめでとう。あなたは25%の関税を払うことになります』という手紙を送りたいぐらいだ」とも述べ、交渉が難航している相手とは協議を早期に打ち切る可能性も示唆している。
こうした中、週明け30日以降の金融市場では米国経済の実体に関する指標が相次いで発表される。米サプライマネジメント協会(ISM)は7月1日に製造業の景況感指数(PMI)、3日に非製造業(サービス業)のPMIを発表。労働省も独立記念日の休日の前日となる3日に6月の雇用統計を発表する。各国との関税協議の延長が見込まれる中、トランプ氏がすでに打ち出している自動車や鉄鋼・アルミニウムに対する高関税などがすでに雇用を下押ししていることが分かれば、高関税の悪影響が長期化するとの懸念がS&P500の見通しを暗くすることも考えられそうだ。
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