テスラ、株価急落後の見通しは？　トランプ氏と決別　販売不安も拡大

テスラの株価は週次14.81％安　1年７か月ぶりの下落率

テスラの株価（TSLA）の6日の終値は1週間前比で14.81％安の295.14ドル。マスク氏が3日にトランプ氏が後押しする債務上限引き上げを含んだ減税関連法案を批判したことで火がついた両者の応酬が、トランプ氏が5日にマスク氏が率いる企業に対する補助金や政府契約の打ち切りを示唆するにまで発展したことが要因だ。ブルームバーグのデータによると、週次での下落率は、2023年7-9月期決算発表を受けて値下げ戦略の悪影響が不安視された、2023年10月16-20日週（15.58％安）以来の大きさだった。

トランプ氏はマスク氏との関係修復を否定　新型車発売への期待は一変

トランプ氏は7日にはNBCのインタビューで、マスク氏との関係を修復するつもりがあるかを問われ、「ない」と回答。「マスク氏と話すつもりはない」とも述べた。さらにマスク氏が民主党の支援に回るなどした場合は、「マスク氏は非常に深刻な代償を支払わねばならなくなるだろう」と警告している。

テスラの株価は5月27日には362.89ドルをつけ、2024年12月17日の最高値（479.86ドル）から2025年4月8日の直近の安値（221.86ドル）までの下落幅の半分超を回復。その後、中国や欧州での販売不振が悪材料となり、上昇にブレーキがかかっていた。一方では、テスラは6月中に「低価格な新型車」を投入するとしてきたことや、12日にテキサス州オースティンで人間の監視を必要としない完全自動運転の有料サービスを立ち上げると報じられていることは、株価回復に向けた好材料となってきたが、マスク氏とトランプ氏の決別でムードは一変した。

テスラの販売台数見通しの引き下げ相次ぐ　4-6月期は17.8％減予想も

こうした中、金融市場ではテスラの販売台数見通しを引き下げる動きが相次いでいる。ブルームバーグによると、証券会社オッペンハイマーのアナリストは6日に2025年のテスラの販売台数予想を163万台に引き下げ。投資銀行ゴールドマン・サックスのアナリストも6日に2025年4-6月期の販売台数予想を36万5000台とし、従来の41万台から引き下げた。オッペンハイマーの予想は前年比8.9％減。ゴールドマンの予想は前年同期比17.8％減にあたる水準だ。

中国の磁石の輸出規制は人型ロボットの開発に影響？　米中協議の行方も焦点に

また、テスラの将来的な成長への期待をめぐっては、中国の輸出規制をめぐる問題も悪材料とみることができる。トランプ氏が相互関税を発表した2日後にあたる4月4日、中国政府はリチウムなど7種類のレアアースや磁石を輸出規制の対象に加えた。マスク氏は4月22日の1-3月期決算発表会見で、テスラが開発中の人型ロボット「オプティマス」について「中国製磁石問題の影響を受けた」と言及。オプティマスの腕の部分に使われている永久磁石が、中国の輸出規制の対象になっていると説明した。一方、マスク氏はリチウムについては、「テスラはテキサス州南部に中国外では最大規模のリチウムの精製施設」を持っていると強調している。

中国の輸出規制は、米国と中国がロンドンで9日に行う協議での焦点のひとつ。中国商務省は7日、レアアース輸出の申請を一部承認したと明かし、トランプ氏は5日に行った中国の習近平国家主席との電話協議について「両国にとって非常に前向きな結論に達した」と述べている。ただ、中国商務省やトランプ氏の情報発信は詳細への言及はなく、9日に具体的な成果が公表されるかは不透明だ。9日の米中協議の結果は、テスラの株価を含む株式市場全体のムードを左右するとみられ、投資家の注目が集まりそうだ。