米国株、FRBの利下げ見通し焦点 S&P500反発 年内3回の道筋は?
S&P500は15日に今年25回目の最高値。FOMCを控え、楽観ムードが強い。トランプ大統領側近のFRB理事就任も利下げ期待を強めそうだ。

アメリカ株が上昇気流に乗っている。S&P500種株価指数の15日の終値は前週末比0.47%高で最高値を2営業日ぶりに更新。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の発表を17日に控え、楽観ムードが維持されている。金融市場ではFRBの利下げが確実視されているうえ、経済見通しやジェローム・パウエル議長の記者会見などで「年内3回利下げ」の道筋が示されるとの期待も大きく、株式市場の追い風になっているようだ。大手ハイテク株の値動きにも投資家の強気が感じられ、アルファベットの急騰や、悪材料が出た半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の底堅さが目立つ。一方、パウエル氏が17日に物価上昇への警戒を示せば、S&P500に逆風が吹く可能性もある。ただ、米国の労働市場の悪化に加え、15日夜にはドナルド・トランプ大統領の側近のFRB理事就任が承認されており、FRBの利下げシフトが株式市場にとっての安心材料として意識されそうだ。
アメリカのS&P500は今年25回目の最高値 2024年末比で12.47%高に
S&P500(SPX)の15日の終値は6615.28。2営業日ぶりの反発で、2025年に入ってから25回目の最高値更新を果たした。2024年末比での上昇率は12.47%高。トランプ氏が相互関税の一部停止を発表する前日にあたる4月8日には15.28%安まで値下がりする局面もあったが、相場のムードは明るさを増している。

17日までのFOMCは利下げが確実視 「年内3回」の方向性は示されるか?
S&P500の好調さの背景にあるのはFRBが16、17日の連邦公開市場委員会(FOMC)で継続的な利下げに踏み切るとの期待だ。ブルームバーグによると、金融市場では、2024年12月以来となる0.25%幅での利下げが確実視されているほか、年内に9月を含めて3回の利下げが行われることについても、70%程度の確率が見込まれている。15日段階では12月FOMC後の政策金利の水準は3.648%と想定されており、現状の政策金利(4.25-4.50%、中間値4.375%)から0.727%ポイント低い水準となっている。

FRBの利下げ期待が強まってきたのは、5日発表の8月の雇用統計が労働市場の悪化を示したことに加え、11日発表の8月の消費者物価指数(CPI)の伸び率が市場予想通りに留まったことが要因だ。こうした経済情勢を踏まえ、FOMC後に示される経済見通しやパウエル氏の記者会見で年内3回利下げの可能性が示唆されれば、S&P500に対する追い風がさらに増すことも考えられる。FRBは6月18日までのFOMCに際して公表した経済見通しでは、年内の利下げの回数は2回になるとの方向性を示していた。

アルファベットの株価が急騰 エヌビディアは中国リスクでも底堅さ
こうした中、S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株の15日の値動きには楽観ムードが感じられた。アルファベットの株価(GOOGL)は前週末比4.49%高となり、2024年末比での伸び率が32.92%高に到達。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)やメタ・プラットフォームズ(META)を抜き去り、マグニフィセント・セブンと呼ばれる大手ハイテク7社の中で最高の成績となった。ブルームバーグによると、アルファベットの時価総額は15日終値段階で3兆0400億ドルとなり、エヌビディア、マイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)に次ぐ3兆ドル超えとなった。アルファベットをめぐっては2日の取引時間終了後にウェブブラウザー「クローム」をめぐる反トラスト法(独占禁止法)訴訟で、アルファベットがクロームを売却する必要はないとする連邦地裁判決が出ており、勢いが続いている状況だ。

また、エヌビディアをめぐっては15日朝に、中国当局が暫定調査でエヌビディアの独禁法違反を認め、追加調査を行うと報じられたが、エヌビディアの株価(NVDA)の15日の終値は前週末比0.04%安というほぼ横ばいの値動き。悲観的な受け止めは少なかったようだ。エヌビディアの株価は、2024年12月9日に、2020年のエヌビディアによるイスラエル企業の買収後の対応を中国当局が独禁法違反の観点から問題視していると報じられた際は前週末比2.55%安と急落していた。今回の投資家の冷静な反応は、エヌビディアをめぐる「中国リスク」が材料視されにくくなったとみることができる。株式市場での人工知能(AI)ブームの立役者といえるエヌビディアの底堅さは、S&P500を下支えする効果を生んでいる。
パウエル氏が利下げに慎重姿勢ならS&P500に逆風の見通しも
一方、17日までのFOMCをめぐっては、パウエル氏が記者会見で利下げに慎重姿勢を示す可能性も残っている。FRBが物価指標として重視する個人消費支出(PCE)物価指数の7月のデータでは、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率が2.9%となっており、3か月連続で物価上昇が前月から加速。FRBが目指す2%からの乖離が進んでいる状況だ。トランプ氏の高関税政策が波乱要因となって物価上昇が進んでいることに加え、7月4日に成立した減税関連法案が消費を刺激する効果が今後出てくる可能性も踏まえれば、パウエル氏が利下げをためらうこともありえる。この場合は金融市場で「年内3回利下げ」への期待が縮小し、S&P500には下落圧力が働く。

FRB理事にトランプ氏の側近のマイラン氏が就任 FRBの利下げシフト進む
ただ、米国の労働市場の悪化は明らかで、パウエル氏も8月22日の「ジャクソン・ホール講演」で利下げの必要性が増していることを認めている。また、米議会上院は15日夜にスティーブン・マイラン米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長をFRB理事に充てる人事を承認。マイラン氏は8月8日に理事を辞任したアドリアナ・クグラー氏の後任で、CEA委員長職を兼任するという。FRBの利下げを繰り返し求めてきたトランプ氏の側近のFRB理事就任で、FRBの利下げシフトが進んだことになる。
これに対して、トランプ氏が住宅ローンをめぐる問題を理由に示したリサ・クック理事の解任は裁判所からストップがかかっているものの、2026年5月に任期が切れるパウエル氏の後任選びが進んでいけば、FRBの利下げシフトがより強く意識される可能性が高い。FRB人事をめぐる動向は、楽観ムードが強まる株式市場で、S&P500にとっての安心材料として受け止められることになりそうだ。
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