米国株、エヌビディア効果不発も S&P500反落 FOMCで逆風懸念
S&P500は5営業日ぶり反落。トランプ氏は取引時間終了後にエヌビディアの中国向け輸出許可を公表したが、10日までのFOMCへの不安も大きい。
アメリカの株式市場に緊張感が出てきた。S&P500種株価指数の8日の終値は前週末比0.35%安で、5営業日ぶりの反落。最高値更新を目前にして足踏みする結果となった。米連邦準備制度理事会(FRB)が10日までの連邦公開市場委員会(FOMC)後に示す2026年の利下げの道筋が期待外れに終わる恐れがあることから、様子見ムードが強まっているようだ。一方、ドナルド・トランプ大統領は8日の取引時間終了後、半導体大手エヌビディアの最先端半導体「H200」の中国向け輸出を認めると公表。株式市場への「カンフル剤」といえ、エヌビディアの株価は時間外取引で上昇している。ただ、エヌビディアの値上がりの勢いは強いとはいえず、9日の取引でS&P500を牽引する効果が乏しくなる可能性もありそうだ。こうした中、9日には労働市場に関する経済指標の発表が予定されており、結果次第ではFRBの利下げ見通しを弱めるS&P500にとっての逆風になる筋書きも考えられる。
アメリカのS&P500は5営業日ぶり反落 最高値から0.64%安まで後退
S&P500(SPX)の8日の終値は6846.51で、日本銀行の利上げ見通しの強まりが米国の長期金利(10年物国債利回り)の上昇を引き起こした1日(0.53%安)以来、5営業日ぶりの値下がりとなった。10月28日の最高値(6890.89)からは0.64%安の水準で、前週末の0.30%安から後退した。
FRBの2026年の利下げ見通しは後退 FOMCの焦点に
S&P500の上昇が停止した背景にはFOMCへの警戒がある。金融市場では9、10日のFOMCでの利下げはほぼ確実視されており、会合後に示される経済見通しやジェローム・パウエル議長の記者会見が示す2026年の利下げペースの方向性が焦点。ブルームバーグによると、金融市場ではパエウル氏の任期中最後の会合となる4月FOMC後の政策金利の水準は3.456%と見込まれており、3日段階から0.043%ポイント上昇。2026年前半の利下げ見通しは徐々に弱まっている形だ。
トランプ氏がH200の中国向け輸出承認 エヌビディアの株価は時間外取引で上昇
一方、8日の取引時間終了後にはトランプ氏からS&P500へのカンフル剤が打たれた。トランプ氏は8日午後4時29分(日本時間9日午前6時29分)に自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、「エヌビディアが中国の承認を受けた顧客にH200を出荷することを米国として認めると、中国の習近平国家主席に伝えた」と公表。習氏は前向きな反応を示していたとした。詳細は不明ながら、「25%が米国に支払われる」ともしている。
これを受けてエヌビディアの株価(NVDA)は8日の時間外取引で上昇。ブルームバーグによると、一時、190.94ドルをつけた。直前の終値(185.55ドル)との比較では2.90%高の水準だ。エヌビディアはAIの開発やサービス展開に不可欠な高性能半導体を供給するAIブームの立役者としてS&P500を牽引してきた。米国政府の輸出規制で中国市場での成長機会を失ったことは業績上の懸念だっただけに、トランプ氏の発表は株価にとって朗報といえそうだ。エヌビディアの株価は10月29日の最高値から11月28日の底値までに14.51%安となった後、8日終値では底値から4.83%の反発をみせていた。
マグニフィセント・セブンの5社は値下がり FOMCを警戒
ただ、エヌビディアへの期待はかつてほど強いわけではない。エヌビディアの株価は2025年8-10月期決算が好感された11月19日の時間外取引で6%超上昇した際、翌20日の取引で前日比3.15%安に沈んでいる。今回の時間外取引後の値上がりの勢いは8-10月期決算発表時よりも弱く、9日の取引で上昇が維持されるかどうかには不安がある。また、S&P500への影響度が大きい、エヌビディアを含む「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価の8日の取引では、テスラ(TSLA)が前週末比3.39%安、アルファベット(GOOGL)が2.35%安となるなど5社が値下がりしており、FOMCヘの警戒感の強さを示している。
9日には10月JOLTSが発表 強い結果ならS&P500への逆風に
こうした中、S&P500の見通しをめぐっては、9日午前10時(日本時間10日午前0時)に発表される10月の雇用動態調査(JOLTS)が注目される。労働市場の弱さが確認された場合には、FRBが2026年以降も利下げを進めるとの期待が強まりそうだ。米労働省は政府機関閉鎖のため、9月のJOLTSは発表を見送っていた。
ブルームバーグがまとめた市場予想では、10月のJOLTSでの求人件数は711.7万人と見込まれており、8月の722.7万人から減少する見通し。実際の発表がこの水準を下回れば、利下げ期待がS&P500への追い風になるとみられる。これに対して、求人件数が予想を超える強さになれば、10日までのFOMCでの利下げ期待は揺らがないものの、2026年の利下げペースが緩やかになるとの思惑につながることが想定される。この場合にはS&P500の最高値に向けた上昇をめぐる投資家の期待が一気に冷え込むことも考えられそうだ。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。