米国株、次の関門はエヌビディア S&P500週次上昇 FRB利下げに道
S&P500はFRBのパウエル議長の講演を受けて週次上昇を確保。しかし大手ハイテク株の値動きは迫力不足で、27日のエヌビディアの決算発表が次の焦点だ。
アメリカの株式市場が安堵の息をついた。S&P500種株価指数の22日の終値は1週間前比0.27％高となり、3週連続での上昇を確保。米連邦準備制度理事会（FRB）のジェローム・パウエル議長の22日の講演が9月利下げの道筋を示す内容だったことが好材料になった。金融市場では金利水準の低下が株価上昇の追い風になるとして、見通しへの不安が後退している。ただ、パウエル氏は物価上昇再燃への警戒は維持しており、1年前の9月から12月にかけてのような急ピッチでの利下げへの期待は高まっていない。また、株式市場での人工知能（AI）ブームを牽引してきた半導体大手NIVIDIA（エヌビディア）をめぐっては中国市場をめぐる不安が再燃しており、大手ハイテク株の値動きは迫力に欠けている。このためS&P500の今後の見通しをめぐっては、エヌビディアが27日に行う2025年5-7月期決算発表が次の関門になりそうだ。
アメリカのS&P500は週次0.27％高 6営業日ぶり反発で最高値目前
S&P500（SPX）の22日の終値は前日比では1.52％高の6466.91。6営業日ぶりの反発で、14日の最高値（6468.54）が目前に迫った。週次での上昇（0.27％高）は3週連続。ブルームバーグによると、S&P500は前日までの5営業日続落で1.52％安となっていたが、下落に歯止めがかかったといえる。
パウエル氏が「金融政策のスタンスの修正」に言及 9月利下げに道
S&P500を上向かせたのはパウエル氏がワイオミング州ジャクソン・ホールでの経済シンポジウムで22日朝に行った講演だ。パウエル氏は労働市場と物価動向を踏まえれば、「金融政策のスタンスを修正することが正当化される」と発言。9月16、17日の連邦公開市場委員会（FOMC）での利下げの可能性を示唆した。この講演を受け、金融市場では9月利下げ見通しが拡大。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれる9月FOMC後の政策金利の水準は22日段階で4.120％となり、前日から0.028％ポイント低下した。
パウエル氏は講演の中で、7月雇用統計が労働市場の悪化を示したことに振れ、「雇用に関する下振れリスクは増している」と言及。「こうしたリスクが現実のものになる場合は、一時解雇（レイオフ）の急上昇や失業の増加といった形で、急激に顕在化する」と警戒感を示した。またパウエル氏はドナルド・トランプ大統領の高関税政策が物価上昇に及ぼす影響については「比較的短命な、一時的な物価水準の変化」にとどまることが合理的な基本シナリオだとの考えを示した。
パウエル氏が株式市場で懸念されていた利下げへの慎重姿勢を示さなかったことは、FRBの利下げが金利水準を引き下げ、株式の投資先としての魅力を相対的に高める筋書きを裏付ける好材料だ。22日の金融市場ではウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数（VIX）が低下。シカゴ・オプション取引所によると、VIX指数の22日の終値は前日よりも14.34％低い14.22で、2024年12月13日（13.81）以来、8か月ぶりの低さとなった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
パウエル氏は物価上昇リスクにも言及 エヌビディアは週次で1.36％安
ただ、パウエル氏は短期的な経済の見通しとしては、「物価をめぐるリスクは上昇方向に傾いていて、雇用へのリスクは悪化方向にある。難しい状況だ」とも言及。利下げを見据えつつも、「引き締め的な金融政策」を維持する考えも示している。これに対して、パウエル氏は1年前の同じシンポジウムでは「金融政策を調整する時が来た。向かうべき方向ははっきりとしている」として9月の利下げを事実上予告。実際に9月から12月にかけての3回の利下げで政策金利を1.00％ポイント引き下げ、S&P500は講演から12月中旬にかけて9％超値上がりした。パウエル氏の今回の講演での情報発信には昨年ほどの力強さはなさそうだ。
パウエル氏の講演からにじんだ慎重姿勢は、22日の株式市場の値動きの物足りなさにつながった可能性がある。S&P500への影響度が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価は22日にそろって上昇。エヌビディアの株価（NVDA）が前日比1.72％高となったほか、電気自動車（EV）大手のテスラ（TSLA）が6.22％高、アルファベット（GOOGL）が3.17％高となった。しかし22日までの週次でみれば、エヌビディアが1.36％安となるなど、7社中の5社が値下がりしている。
エヌビディアの中国向け半導体への不安再燃 27日の決算発表での焦点に
大手ハイテク株や半導体株の値動きの迫力不足の裏側には、21日夜に金融市場に伝わったエヌビディアをめぐる悪材料もありそうだ。ブルームバーグによると、米インターネットメディアのジ・インフォメーションは、エヌビディアが韓国のサムスン電子や米アムコー・テクノロジーに対して中国向け半導体「H20」に関連する生産を停止するように求めたと報じた。中国政府が地元企業に対してH20の使用を避けるよう促しているともされており、エヌビディアが米中対立の狭間で板挟みになっている状況だ。
このため25日以降の株式市場をめぐっては、エヌビディアが米国東部時間27日午後4時20分（日本時間28日午前5時20分）に発表する5-7月期決算の重要度が高くなっている。エヌビディアは7月にトランプ政権がH20の中国向け輸出を認めることを確約したと公表しており、27日に示される8-10月期の業績見通しが強気になることも期待されているが、ジェンスン・ファンCEOが決算会見で中国政府の動きに警戒感を示す可能性もありそうだ。
エヌビディアの業績見通しはAIブームをめぐる投資家心理を左右する。大手ハイテク各社のAI関連投資の力強さがエヌビディアの成長を後押しする構図に変化はみられないものの、中国市場をめぐるサプライズがあればS&P500の上昇の足を引っ張る可能性も考えられる。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
こんなに豊富？IG証券のCFD銘柄は17,000以上
外国為替、日本株・外国株、株価指数、債券先物、商品（エネルギー、農産物、貴金属）など多彩な資産クラスをFX取引、CFD、バイナリーオプション、ノックアウト・オプションで提供
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。
