米国株に消えない最悪シナリオ S&P500反落 FRB理事解任も逆風
S&P500は25日、米国経済の見通し不安が重荷となって反落。日本時間26日朝にはトランプ氏がFRB理事解任を決めており、金融市場が動揺するおそれもある。

アメリカの株式市場が勢いづかない。S&P500種株価指数の25日の終値は前週末比0.43%安。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の講演を好感した前週末の急騰は続かなかった。パウエル氏の講演は9月利下げに道を開いたものの、米国経済の見通しをめぐっては、労働市場の悪化と物価上昇再燃が同時に進む最悪シナリオの可能性も消えていない。景気動向に敏感な中小型株の値動きを示す代表的な株価指数であるラッセル2000は最高値更新が見えない状況で、米国経済の先行き不安が反映されていそうだ。一方、25日の取引では決算発表を27日に控える半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が2営業日続伸となり、人工知能(AI)ブームに対する楽観も感じられる。ただ、エヌビディアの経営環境をめぐる不透明感は残っているうえ、日本時間26日朝にはドナルド・トランプ大統領がFRBのリサ・クック理事の解任を決めたと公表しており、S&P500に逆風が吹きつけるおそれもある。
アメリカのS&P500は0.43%安 パウエル講演後の急上昇から反落
S&P500(SPX)の25日の終値は6439.32。ブルームバーグによると、14日に最高値(6468.54)をつけてからの7営業日のうち、値上がりしたのは前週末22日の1.52%高だけだ。22日はパウエル氏がワイオミング州ジャクソン・ホールでの講演で労働市場の悪化に懸念を示し、9月利下げの可能性を示したことが好感されたが、短命な反発に終わったといえそうだ。

米国の物価上昇に根強さ 高まらない利下げ期待は中小型株の重荷に
パウエル氏の講演は9月利下げに道を開く一方、米国経済への不安も示す内容だった。パウエル氏は講演の中で29日に発表される7月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率について、総合指数の伸び率が前年同月比2.6%、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率が2.9%になるとの見通しを提示。コア指数の伸び率は前月(6月)の2.8%よりも高くなるとの見立てで、物価上昇再燃への懸念は残っている。こうした物価動向がトランプ氏の高関税政策による一時的な現象だったとしても、短期的には労働市場の悪化と物価上昇圧力の両方を注視せねばならない難しい状況で、S&P500の上値を重くする材料といえる。
このため25日の金融市場では、S&P500への追い風になるFRBの利下げへの期待は後退気味だった。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれている9月16、17日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は25日段階で4.124%で、前週末よりわずかながら上昇。12月FOMC後の政策金利の水準に関する見通しもやや後退しており、金融市場はFRBが完全に利下げに舵を切ったとは判断していないもようだ。

こうした利下げへの不安は、景気動向に敏感な中小型株の動向からも感じられる。ブルームバーグによると、ラッセル2000(RUT)の25日の終値は前日比0.96%安の2339.17。やはり22日の3.86%高の勢いが失われた。S&P500が2025年に入って最高値更新を続ける中でも、ラッセル2000は2024年11月25日の最高値(2442.03)を塗り替えられない状況が続いており、米国経済への見通しへの不安が感じられる。

エヌビディアは2日続伸 アルファベットも最高値でAIブームへの期待は続く
一方、米国株式市場ではS&P500への影響度が大きい大手ハイテク株への期待は消えていない。27日に2025年5-7月期決算を発表するエヌビディアの株価(NVDA)の25日の終値は前週末比1.02%高の179.81ドル。2営業日続伸で、12日の最高値(183.16ドル)まで1.83%安の水準まで戻している。アルファベット(GOOGL)も1.16%高の208.49ドルとなり、3営業日続伸で約6か月半ぶりに最高値を更新した。AIブームへの期待が続く中、BITA社が算出する「マグニフィセント・セブン指数」(MAGSEVEN)は25日に前週末比0.25%高となり、22日の2.00%高に続く続伸となった。

大手ハイテク株への楽観は、S&P500をめぐる投資家心理を落ち着かせているようだ。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は22日の終値で14.79。前週末から4.01%高くなったものの、15を下回る水準を維持している。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを意味する。

エヌビディア決算には不安も トランプ氏のFRB理事解任決定もS&P500に逆風
ただ、27日のエヌビディア決算をめぐっては、エヌビディアが中国向け半導体「H20」に関連する生産を停止するよう韓国のサムスン電子などに求めたと報じられるなど、不透明感も漂う。決算発表で示される8-10月期の見通しが期待外れとなれば、S&P500には下落圧力がかかりそうだ。
また、トランプ氏は米国東部時間25日午後8時すぎ(日本時間26日午前9時すぎ)に自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、FRBのクック理事を解任すると公表。クック氏をめぐってはトランプ政権内から、金融機関に住宅ローンを申し込む際、「主たる住居」について虚偽の申告していたとの疑惑が指摘されていた。トランプ氏はSNSヘの投稿で、疑惑が真実であると信じるに足る「十分な理由がある」としている。トランプ氏によるFRB理事の解任という異例な展開は、中央銀行の独立性を損ねる行為として金融市場で不安視される可能性がある。
トランプ氏が4月21日にパウエル氏への批判を強めた際にはS&P500は前週末比2.36%安となり、米国債とドルも同時に売られる「アメリカ売り」につながった。S&P500の今後の見通しにとっては、トランプ氏の予測不能性が重荷になることも考えられそうだ。
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