米国株、上昇加速困難か S&P500続落 AIブームの収益化に不安
S&P500は2日増落。AIブームへの期待は続くが、株価上昇加速にはつながっていない。8月PCE物価指数で波乱がなくても上値の重さは続きそうだ。

アメリカの株式市場の上昇にブレーキがかかった。S&P500種株価指数の24日の終値は前日比0.28%安で2営業日続落。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)を含む大手ハイテク株の冴えない値動きが相場の足を引っ張っている。大手ハイテク株をめぐっては人工知能(AI)ブームの火付け役となったオープンAIをめぐる好材料が相次いでいるが、収益化をめぐる不安は根強く、投資家の歓迎ムードは長続きしていない。また米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利下げへの期待には冷や水がかかっており、やはりS&P500の上昇の勢いを削いでいる。一方、26日に発表される8月の個人消費支出(PCE)物価指数は物価上昇の過熱はみられない見通しで、波乱とはなりにくそうだ。ただ、この場合でもS&P500の上値の重さが続く可能性がある。
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アメリカのS&P500は2日続落の0.28%安 ジャクソン・ホール後は落ち着いた値動き
S&P500(SPX)の24日の終値は6637.97。2日続落で22日につけた最高値(6693.75)から0.83%安まで後退した。ブルームバーグによると、S&P500はFRBのジェローム・パウエル議長がワイオミング州ジャクソン・ホールでの講演で9月利下げの可能性を示唆した8月22日に前日比1.52%高となって以降、1%を超える値動きがない。上昇基調は崩れていないものの、勢い不足も否めない状況だ。


大手ハイテク株の冴えない値動きは、AIブームをめぐる力強いニュースとは対照的だ。対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIとエヌビディアは22日に連携強化を発表。オープンAIは今後、消費電力でみて10ギガワット(1000万キロワット)超のデータセンターを展開するといい、エヌビディアはオープンAIに最大1000億ドルを投資する。またオープンAIはオラクル(ORCL)との間で、クラウドサービスの利用について約5年間で3000億ドルを支払う契約を結んだとも報じられている。オープンAIの積極展開はAIブーム継続への自信といえ、22日のS&P500の最高値更新の背景となったが、投資家の期待が高まり続けているわけではない。
AIブームの収益化に不安 大手ハイテク各社の株価上昇期待は頭打ちも
AIブームの盛り上がりがS&P500の上昇を加速させていない背景には、AIブームが大手ハイテク各社の利益を増やすとは言い切れないことがある。オープンAIは週間アクティブユーザー数が7億人に達しているが、サム・アルトマンCEOは8月の米CNBCでのインタビューで成長を優先させるためには、「当面は損失を出し続けるつもりでいる」ことが合理的だと言及。オープンAI同様に対話型AIサービスを展開するマイクロソフト(MSFT)やアルファベット、アマゾン・コム、メタ・プラットフォームズ(META)にとっても、収益化の道は容易ではないと考えられる。
ブルームバーグによると、大手ハイテク7社の株価の水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は、電気自動車大手テスラ(TSLA)の218倍を例外とすれば、高くても30数倍に収束してきた。今後も値上がりを続けるためには、利益が増加することへの期待が高まることの重要性が増していそうだ。

FRBの追加利下げ見通しは強まらず パウエル氏「リスクがない道筋はない」
またS&P500の上昇期待を高める要因であるFRBの利下げ見通しには、改めて冷や水がかかった。パウエル氏は23日のロードアイランド州での講演で米国経済の現状について、利下げを急げば物価上昇を再燃させるおそれがあり、利下げが遅れれば労働市場を過度に悪化させる可能性がある局面だと説明。今後の金融政策について「リスクがない道筋はない」とした。17日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見に沿った内容にとどまったといえる。22日にはFRB幹部から利下げに慎重な発言が相次いでいたこともあり、利下げ期待は強まっていない。ブルームバーグによると、24日時点の金融市場で見込まれる12月FOMC後の政策金利の水準は3.660%で、年内2回利下げの確率は73%程度と見積もられている。

8月PCE物価指数では波乱は起きない見通し S&P500の上値の重さは継続か
一方、26日午前8時30分(日本時間26日午後9時30分)に発表される8月のPCE物価指数では大きな波乱は起こらなさそうだ。ブルームバーグがまとめた市場予想によると、総合指数の伸び率は2.7%、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は2.9%となる見通し。総合指数の伸び率は前月(7月)よりも0.1%ポイント高くなるものの、コア指数は横ばいとなる。パウエル氏も17日の記者会見で8月PCE物価指数の伸び率について市場と同じ水準の予想を示していた。実際の結果が予想よりも大きく上振れてFRBの利下げが難しくなり、S&P500にとっての逆風になる展開は考えにくい。

ただ、8月PCE物価の伸び率が想定内の結果だった場合には、S&P500を押し上げる効果を生むこともなさそうだ。AIブームへの期待も株価上昇の起爆剤にはなりきらない中、投資家の胸中に米国の労働市場悪化などの不安材料が改めて頭をもたげてくる可能性も考えられる。
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