米国株に新たなリスク S&P500先物急落 米欧対立で貿易戦争不安
S&P500の先物商品は19日に急落。グリーンランドをめぐるトランプ氏の言動は就任当初の強硬姿勢を思わせ、投資家心理は悪化している。
アメリカの株式市場に新たなリスクが浮上した。S&P500種株価指数に関連した先物商品は19日の取引で急落。一時、前週末比1.29%安をつける場面もあった。ドナルド・トランプ大統領が17日に、デンマーク領グリーンランドの取得を狙い、欧州8か国からの輸入品に10%の関税をかけると表明したことが要因だ。トランプ政権発足から1年を迎える中、米欧間の貿易戦争の懸念が再燃したといえる。トランプ氏の政権運営をめぐっては、米連邦準備制度理事会(FRB)との対立も改めて深刻化。同時に米国の労働市場の悪化と物価上昇の加速の同時進行や、大手ハイテク株への期待後退といった株式市場にとっての不安材料も積み重なっている。こうした中、19日の金融市場では投資家心理が大きく悪化しており、米国株式市場の3連休明け20日の取引では、S&P500が大きく値下がりする展開が想定されそうだ。
S&P500先物は19日に急落 前週末比で一時1.29%安
S&P500(SPX)の先物商品は日本時間19日から20日にかけての取引で急落した。ブルームバーグによると、米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引されるS&P500ミニ先物(3月限)の価格は日本時間19日午後11時45分に6887.50まで下落。前週末の終値から1.29%安の水準となった。米国の株式市場は19日、キング牧師記念日の休日だった
トランプ氏が欧州8か国に10%関税を表明 グリーンランドをめぐり米欧対立再燃
S&P500の先物が下落させたのはトランプ氏のグリーンランド取得をめぐる言動だ。トランプ氏は17日午前11時台(日本時間18日午前1時台)に、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、イギリス、オランダ、フィンランドの8か国からの輸入品に対して2月1日から10%の関税を課すと表明。6月1日には関税率を25%まで引き上げるとした。トランプ氏には高関税をかけることで、各国にグリーンランドの「売却」に応じるよう圧力をかける狙いがあるとみられる。
トランプ氏は2025年5月にも、SNSへの投稿で欧州連合(EU)からの輸入品に50%の関税をかけると示唆し、S&P500を下落させたことがある。米国とEUは7月に米国のEU製品への関税を15%とすることなどで合意したが、再び対立関係に火がついたといえそうだ。トランプ氏の欧州主要国に対する動きは1年前にあたる2025年1月20日の就任当初の通商政策での強硬姿勢を思わせる。
また、トランプ氏は貿易戦争と同様にS&P500に強い下落圧力をかけたFRBへの対決姿勢も復活させた可能性がある。FRBのジェローム・パウエル議長は11日にトランプ政権から利下げを促す政治的圧力を受けたことを公表しており、S&P500にとっての不安材料が積み上がってきた。
失業率と物価上昇過熱が同時進行 最悪シナリオの浮上も
トランプ政権の1年感を振り返ると、米国の実体経済をめぐる悪い兆しも徐々に増してきた。9日に発表された2025年12月雇用統計は就業者数の増加が市場予想に届かず。失業率は4.4%へと低下したものの、トランプ氏が大統領に就任した1月の4.0%からの上昇傾向は崩れていない。また、トランプ氏の高関税政策が物価上昇圧力として働いていることは間違いなく、FRBが物価動向の判断基準として重視する個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は、最新のデータである9月段階で前年同月比2.8%。トランプ氏が相互関税を発表した4月段階の2.3%を底とした物価上昇加速が続いている。労働市場の悪化と物価の過熱感は、FRBが利下げで労働市場を下支えしたくても、物価上昇を促す懸念で動きが取れなくなる最悪のシナリオを連想させるS&P500にとっての値下がり要因だ。
大手ハイテク株の不振継続 エヌビディアは11月以降8.03%安
またトランプ氏の就任後、S&P500への影響力が大きい大手ハイテク株に対する期待も大きく後退した。人工知能(AI)ブームが追い風となってきた「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価は10月下旬の7-9月期決算発表後は横ばい傾向。BITA社が7社の株価に基づいて算出するマグニフィセント・セブン指数(MAGSEVEN)の16日の終値は10月末比で3.14%安だ。
7社の中では、AI関連事業の総合力が評価されているアルファベット(GOOGL)が10月末比17.36%高と好調だが、他の6社はすべて値下がり。AIブームを象徴する銘柄である半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)は8.03%安。マイクロソフト(MSFT)は11.19%安となって、S&P500の上昇の足を引っ張った。トランプ氏がAI関連の巨額投資計画を誇ってきたこととは裏腹に、株式市場では各社の財務状況や資金調達手法の不透明感が懸念されている。各社の10-12月期決算の発表は28日から始まるとみられ、内容次第では株価に下落圧力がかかる懸念もある。
投資家心理は大幅に悪化 S&P500に急落の懸念
こうした中、19日の金融市場では投資家心理が悪化した。ブルームバーグによると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は日本時間19日午後11時46分に19.59まで上昇。前週末終値段階の15.86から23.52%高い水準となった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
このため3連休明け20日の米国株式市場ではS&P500が大きく値下がりすることが想定される。投資家の不安心理が強まる中、22日に発表が予定される7-9月期GDP修正値と10月と11月のPCE物価指数でも、波乱が起きる可能性が高まってきたといえそうだ。
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