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アルファベット、株価でライバル圧倒 AI時代の勝者か 息切れ懸念も

アルファベットの株価は2025年に7割近い上昇。財務の健全性やAIサービスの総合力が評価されているが、割高感も強まっている。

アルファベット、株価でライバル圧倒 財務面に評価 息切れ懸念も 出所:Adobe Images

アルファベットの株価が上昇気流に乗っている。2日の終値は2024年末比で約7割高。「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の中では、株式市場での人工知能(AI)ブームを牽引してきた半導体大手NVIDIA(エヌビディア)を大きく引き離し、圧倒的な成績を残している。大手ハイテク各社はAI関連投資負担の重さが株価上昇の足かせになってきたが、アルファベットは財務の健全性が好感されており、投資家からの評価が集中。また、自社開発の半導体からAIモデル、自前のクラウドサービスまでを手掛ける総合力を発揮しており、AI時代の競争を勝ち抜く条件が整っているともみられている。ただ、アルファベットの株価上昇は割高感の強まりを伴っており、今後、息切れ感が出てくる可能性も否定できない。アルファベットの株価の今後の勢いは、AIでの強みを収益に変えられるかどうかにかかってきそうだ。

アルファベットの株価は2024年末比66.83%高 エヌビディアに大差

アルファベットの株価(GOOGL)の2日の終値は315.81ドル。2025年に入ってからの上昇率は66.83%高で、エヌビディア(NVDA)の35.13%高やマイクロソフト(MSFT)の16.25%高を大きく上回っている。2日の終値は11月25日につけた323.44ドルからは2.36%安に後退しているものの、引き続き年初来で7割近い上昇率を維持している形だ。

アルファベット、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラ、アップル、マイクロソフト、アマゾン・コムの株価の推移のグラフ

アルファベットは財務の健全性維持 長期債務は営業利益の0.40倍

アルファベットへの評価を高めているのは財務の健全性だ。大手ハイテク各社は、AI開発やAIサービス展開の拠点となるデータセンター建設のための巨額設備投資が嫌気され、株価の重荷となってきた。アルファベットも2025年の設備投資額は910億-930億ドルになるとの見通しを示し、2026年の設備投資額は「2025年よりもかなり大きくなる」としている。ただ、アルファベットの社債やリース債務を含む長期債務の残高は9月末時点で約500億ドル。1630億ドルに達しているアマゾン・コムや、1382億ドルのマイクロソフトと比べれば、比較的少額とみることができる。

アルファベット、マイクロソフト、アマゾン・コム、メタ・プラットフォームの長期債務残高の推移のグラフ

アルファベットの長期債務残高は営業利益との比較でも抑制的だ。アルファベットの9月末の長期債務残高の直近4四半期の営業利益に対する比率は0.40倍で、2倍を超えているアマゾン・コムや、1倍程度のマイクロソフトと比べて、やはり財務の健全性が維持されている。アルファベットが11月に発行したドル建て社債(175億ドル)とユーロ建て社債(65億ユーロ)を考慮しても、対営業利益比は0.60倍程度とみられる。

アルファベット、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズの長期債務残高の営業利益に対する比率のグラフ

AI向け半導体で顧客開拓 ジェミニ3の高性能はオープンAIも警戒

さらにアルファベットはAI関連事業の総合力も評価されている。アルファベットは自社開発を続けてきたTPUと呼ばれる半導体をAI開発に活用。スンダー・ピチャイCEOは10月29日の2025年7-9月期決算会見で、アルファベットとして第7世代にあたるTPU「アイアンウッド」が間もなく利用可能になるとした。アマゾンと関係が深いAI開発企業アンソロピックは10月24日、アルファベットのクラウドサービスとの契約拡大を発表し、数百億ドルの支払いで1ギガワット(100万キロワット)超の計算能力を2026年に確保するとしている。アルファベットはアンソロピックとの契約について、TPUのコストパフォーマンスの高さが評価された結果だとしている。

また、アルファベットは11月18日に新型AIモデル「ジェミニ3」を発表。AIモデルの性能を利用者の評価に基づいてランキングする「LMアリーナ」のサイトで、対話型AIサービスChatGPTでAIブームに火をつけたオープンAIやアンソロピックの最新モデルを抑えてトップの評価を受けている。アルファベットは、自社製の半導体、AIモデル、クラウド事業に加え、スマートフォンのOSやウェブブラウザなども手掛けており、AI時代における大手ハイテク企業間の競争で優位に立つための材料が整っているともいえそうだ。

こうしたアルファベットの台頭に対しては、オープンAIも脅威を感じているもよう。米紙ウォールストリート・ジャーナルは2日、オープンAIのサム・アルトマンCEOが1日に従業員向けに送ったメモの中で「コードレッド(非常事態)」を宣言したと報じた。ChatGPTの利用者個人への最適化や、応答スピードや信頼性の向上、回答できる質問範囲の拡大などが必要だと呼びかけたという。

アルファベットの株価の割高感は限界レベルか 利益成長見通しが焦点に

ただ、アルファベットの株価上昇は、割高感が意識されて息切れする可能性もある。ブルームバーグによると、アルファベットの株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率は最高値をつけた11月25日に27.9倍に到達。AIブームが本格化した2023年以降の平均値(19.6倍)を大きく超えている。アルファベット同様に広告事業を主な収益源とするメタ・プラットフォームズ(META)は、AI活用が広告事業の収益化につながっている点が評価されて株価は好調に推移してきたが、2023年の以降の予想PERは2月14日の28.1倍が最高だ。

大手ハイテク各社の予想PERの推移のグラフ

このためアルファベットの株価の勢いが今後も続くかどうかは、利益成長への期待を高められるかどうかにかかってくる。TPUをめぐる新たな大型契約や、ジェミニ3の利用者拡大といったニュースが出れば、株価上昇に拍車がかかる可能性もある。


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