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米国株、年末年始に3大リスク浮上 S&P500続落 見通しに不安拡大

S&P500は2日続落。FRBの利下げ見通し、米中関係、AIブームをめぐる不安が同時に浮上しており、年末年始の株価の重荷になりそうだ。

米国株、年末年始に3大リスク浮上 S&P500続落 見通しに不安 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場の年末年始の値動きに不安が広がった。S&P500種株価指数の29日の終値は2日続落の前週末比0.35%安。最高値圏は維持しているものの勢い不足が感じられた。30日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨の公開を控えていることに加え、中国による台湾周辺での軍事演習も投資家心理を冷やした可能性がある。また、人工知能(AI)ブームが追い風となってきた大手ハイテク株も29日に続落。米国株の「3大リスク」といえる、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ見通しの後退、米中関係の悪化、AIブームの継続性への懸念が同時に不安視される恐れもありそうだ。一方、ドナルド・トランプ大統領は株式市場の動揺を抑え込む姿勢を示しているが、年明けに見込まれる電気自動車(EV)大手テスラの販売台数の発表や、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)のジェンスン・ファンCEOの講演が、S&P500の下落加速のきっかけになる可能性もある。

アメリカのS&P500は2営業日続落 最高値から0.38%安に後退

S&P500(SPX)の29日の終値は6905.74。2営業日続落の末、24日につけた最高値(6932.05)から0.38%安の水準まで後退した。ブルームバーグによると、S&P500は24日までは5営業日続伸で合計3.13%高となっていたが、勢いが失われた形だ。29日の終値は2024年末比では17.41%高で、年次での騰落率は3年ぶりの20%割れになる可能性がある。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

30日にFOMC議事要旨発表 利下げ見通しの後退も

S&P500の下落の背景には、FRBの早期利下げの見通しが後退することへの懸念がありそうだ。FRBは30日午後2時(日本時間31日午前4時)に12月9、10日のFOMCの議事要旨を公開する予定。2026年の追加利下げに対する消極的な意見が目立つ内容になれば、金利の先安観を弱める株式市場にとっての悪材料になる可能性がある。ブルームバーグによると、ジェローム・パウエル議長の任期中最後の会合となる4月FOMC後の政策金利の水準は29日段階で3.427%と見込まれ、4月までの利下げ確率は84%程度とみられている。

FRBの政策金利の見通しの推移のグラフ

中国が台湾包囲の軍事演習 米中関係緊張の恐れ

またS&P500をめぐる投資家心理は今後、米中関係への懸念で悪化することも考えられる。中国人民解放軍は29日、台湾を取り囲む形での実弾を使った大規模な軍事演習を開始。中国国営新華社通信は中国国防部報道官のコメントを引用したうえで、軍事演習の狙いは「台湾を使って中国を封じ込めるという関係国の幻想を放棄させる」ことにあるとし、台湾が外部からの助けを借りて「台湾独立」を目指す試みは失敗に終わるとの習近平政権の見解を示した。今回の軍事演習をめぐっては、トランプ氏が17日に台湾に対する大規模な武器売却を決めたことが要因となったとも報じられている。

米中関係は2025年のS&P500の値動きを大きく揺らした要因だ。トランプ氏は2月以降、矢継ぎ早に、中国製品に対して合計100%を超える追加関税を課すと表明。4月2日に発表した相互関税と合わせて、S&P500が4月8日に当時の最高値から18.90%安にあたる4982.77まで下落する理由となった。米中の緊張感はその後、5月の関税大幅引き下げ合意を経て鎮静化していったが、10月に中国のレアアース輸出規制強化が材料視された際もS&P500は急落している。

こうした中、29日の金融市場ではウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)が上昇した。シカゴ・オプション取引所によると、29日のVIXの終値は前週末よりも4.41%高い14.20。依然として低水準であることには変わりないが、米中関係悪化への懸念が今後も強まっていけば、上昇が続くことも考えられそうだ。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

VIXとS&P500の推移のグラフ

エヌビディアは2営業日続落 AIブームの継続性をめぐる不安は消えず

さらに29日の株式市場では、S&P500への影響が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の値動きも冴えなかった。ブルームバーグによると、7社の中の筆頭格といえるエヌビディア(NVDA)の株価の29日の終値は前週末比1.21%安で、2営業日ぶりの下落。テスラ(TSLA)の株価は3.27%安で、4営業日続落の間に5.95%安となっている。このほか29日には、メタ・プラットフォームズ(META)、アマゾン・コム(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)の株価も下落した。BITA社が7社の株価に基づいて算出するマグニフィセント・セブン指数(MAGSEVEN)は29日、2営業日続落の前週末比0.55%安となっている。

アルファベット、エヌビディア、テスラ、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、アップル、マイクロソフトの株価の推移のグラフ

大手ハイテク株の下落の要因には、AIブームの継続性への不安がくすぶっていることが挙げられる。AIの開発やサービス提供を強化する大手ハイテク各社はエヌビディアなどの高性能半導体を大量購入してデーターセンターの拡充を進めてきたが、10月下旬の2025年7-9月期決算発表では、改めて巨額の設備投資が収益悪化要因として意識され、S&P500を下落させる要因になった。同時に、対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIの大規模AIインフラ投資構想「スターゲート」も資金調達面での不安が消えておらず、オープンAIと連携するオラクル(ORCL)や日本のソフトバンクグループ(9984)などの株価下落につながった。

オラクル、ソフトバンクグループなどオープンAI関連銘柄の推移のグラフ

トランプ氏は中国との良好関係を強調 年明けはエヌビディアCEOの講演などが焦点

一方、トランプ氏はS&P500の不穏な値動きを受けて、不安の火消しにかかっている。トランプ氏は29日、記者会見に際して中国による台湾周辺での軍事演習に言及。「習氏とは素晴らしい関係を築いている」としたうえで、「中国はあの地域で20年の間、海軍演習を行ってきた」として、今回の演習をとりたてて問題視しない考えを示した。また、FRBのパウエル氏については「辞任すべきだ」とし、年明け1月には後任を発表するとした。

ただ、年明けのS&P500をめぐっては大手ハイテク株の値動きが波乱要因になる可能性もある。テスラは1月2日に10-12月期の販売台数を発表する見込み。米国で9月末にEV購入時の補助金が打ち切られたことで販売不振が深まっている可能性がある。テスラの株価は12月16日に1年ぶりの最高値更新を果たしていたが、今回の発表が下落のきっかけになる可能性もありそうだ。またエヌビディアのファンCEOは米国太平洋時間の5日午後1時(日本時間6日午前6時)からネバダ州ラスベガスでの講演が予定されており、目立った好材料が出なければ失望感が株価を押し下げることも想定される。


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