米国株、高関税懸念再燃 S&P500週次反落 エヌビディア決算に不安
S&P500は週次で2.61%安。トランプ氏が23日に高関税政策を強調したことで下押しされた。3連休明けはエヌビディア決算などが相場を揺らしそうだ。

アメリカの株式市場で高関税懸念が再燃した。S&P500種株価指数の23日の終値は1週間前比2.61%安で、2週ぶりの反落。ドナルド・トランプ大統領が23日に欧州連合(EU)からの輸入品や、アップルのスマートフォン輸入に対する高関税を示唆したことが株価の値下がりを後押しした。S&P500への影響度が高い大手ハイテク株も週次での下落に沈んでいる。また、米国の実体経済に関しても消費の低迷が感じられており、投資家心理は再び悪化してきた。こうした中、S&P500の今後の値動きをめぐっては、28日に行われる半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の決算発表が注目される。株式市場のムードが悪くなる中で、エヌビディアが業績の見通しに弱気な姿勢を示せば、S&P500への下落圧力がいっそう強くなることも考えられそうだ。
アメリカのS&P500は週次2.61%安 減税関連法案をめぐる不透明感が重荷
S&P500(SPX)の23日の終値は前日比では0.67%安の5802.82。前週末にムーディーズ・レーティングスが発表した米国格下げを受けた19日は小幅な値上がりで持ちこたえたものの、20日以降は4日続落となった。米国議会では債務上限引き上げを盛り込んだ減税関連法案の審議が進行中。22日朝には下院がわずか1票差で法案を可決して上院に送付する展開となっており、見通しの不透明感が重荷となっている。週次での下落は米中協議への期待が盛り上がらなかった5-9日週(0.47%安)以来、2週ぶりだ。

トランプ氏はEU製品に50%関税を示唆 アイフォン輸入にも「最低25%」
また、23日のS&P500の値動きにはトランプ氏の高関税政策への懸念が大きく影響した。トランプ氏は23日朝、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、EUとの関税協議について「決着の気配がない!」と不満を表明。6月1日からEUに「50%」の関税をかけることを勧めるとした。トランプ氏はEUの付加価値税(VAT)や企業に対する制裁金などを批判の対象として列挙しており、米国とEUの溝の深さを感じさせている。トランプ氏は4月2日に発表した相互関税ではEU製品への税率は20%とし、9日の一部停止後は、他の国や地域と同様に相互関税の税率は10%に抑えられている。
トランプ氏はこの投稿の直前にはアップルにも矛先を向けた。トランプ氏はSNSへの投稿でアップルのiPhone(アイフォン)について、米国で製造されなければ「最低25%」の関税を払わなければならないと言及。アップルのティム・クックCEOを名指しで批判した。クック氏は1日の2025年1-3月期決算会見で、4-6月期に米国で販売されるアイフォンは「大半がインドが生産国になる」と説明。米国向けアイフォンの生産地を中国からインドにシフトすることで、中国製スマホにかけられている20%関税を回避する狙いだが、トランプ氏はあくまでも米国内での生産にこだわっている形だ。
23日は大手ハイテク株がそろって下落 アップルの株価は週次7.57%安
トランプ氏の高関税政策への懸念は大手ハイテク株を直撃した。23日の取引ではアップルの株価(AAPL)が前日比3.02%安となり、8営業日続落。また、メタ・プラットフォームズ(META)も1.49%安、アルファベット(GOOGL)も1.40%安となるなど、マグニフィセント・セブンと呼ばれる7社の株価がそろって下落している。週次での値動きでもアップルが7.57%安となるなど、アルファベットを除く6社が下落した。時価総額が大きい大手ハイテク株はS&P500への影響度が大きく、株式市場全体のムードを暗くしている。

米国の実体経済への懸念膨らむ VIX指数は20台の大台を突破
また、トランプ氏の政権運営をめぐる不安が米国の実体経済に悪影響を及ぼしつつあることも株式市場の懸念につながっている。全米リアルター協会(NAR)が22日に発表した4月の中古住宅販売件数は年換算400万件で、前月比0.5%減。ブルームバーグがまとめた市場予想の410万件を下回った。米国経済に関しては、15日発表の4月の小売売上高も冴えない結果となっており、経済の見通しの悪さが消費を抑え込んでいる可能性がありそうだ。

高関税が実体経済を下押しするシナリオは投資家の不安を再び高めている。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の23日の終値は前日より9.91%高い22.29で、3日連続で20の大台を超えた。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

エヌビディアの2-4月期決算に注目 弱気見通しなら半導体株安がS&P500下押しか
こうした中、メモリアル・デー(26日)の休場を経た3連休明けの米国株式市場では、28日のエヌビディアによる2-4月期決算発表への注目が高まりそうだ。エヌビディアをめぐっては中国向け半導体「H20」が輸出規制の対象になったことがもたらす悪影響の長期化が懸念される一方、トランプ政権が半導体関連製品を相互関税の対象外にするなどの一定の配慮をみせていることが安心材料。しかしトランプ氏が改めて高関税政策やアップル批判を強調したことは、エヌビディアの経営環境も厳しくなる可能性を予感させる。エヌビディアの株価(NVDA)は23日までの週次で3.04%安となり、前週(12-16日)までの4週続伸から勢いが削がれており、決算発表で弱気な姿勢が感じられれば、他の半導体株も巻き込んだエヌビディアの株価下落がS&P500を下押しするおそれもありそうだ。

さらに米国の実体経済をめぐっては、29日には米国の1-3月期GDP改定値、30日には4月の個人消費支出(PCE)物価指数も発表される。株式市場のムードが悪くなる中、経済の弱さや物価上昇の根強さが示された場合には、S&P500の今後の見通しを暗くすることも想定される。
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