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米国株に明るさ戻るか? S&P500急上昇 政府閉鎖解消に期待と不安

S&P500は1.54%高で、1か月ぶりの高い上昇率。政府機関閉鎖の解消に向けた動きが好材料になったが、AIブームへの懸念は消えていない。

米国株に明るさ戻るか? S&P500急上昇 政府閉鎖解消に期待と不安 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場の停滞ムードが晴れる兆しが出てきた。S&P500種株価指数の10日の終値は前週末比1.54%高で、約1か月ぶりの高い上昇率を記録。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価が6%近い上昇となるなど、大手ハイテク株がそろって値上がりしている。投資家心理を上向かせたのは過去最長の期間になっている政府機関一部閉鎖に解消に向けた動きが出たこと。10月1日以降に途絶えてきた重要経済指標の発表が再開されれば、相場を大きく動かす起爆剤になる可能性がありそうだ。ただ、人工知能(AI)ブームの過熱に対する警戒や、株式市場が期待する米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げの道筋が整っているわけではなく、S&P500の今後の見通しをめぐっては、上値の重い展開が続くことも考えられる。

【関連記事】米国株、AIブームの変調に不安 S&P500失速 利下げ見通し後退(2025年11月13日)

アメリカのS&P500は1.54%高 1か月ぶりの高い上昇率

S&P500(SPX)の10日の終値は6832.43。前週末比での上昇率(1.54%高)は、米中関係緊張の和らぎなどが好材料視された10月13日(1.56%高)以来の高い上昇率だ。S&P500は前週(3-7日)は週次で1.63%安となって4週ぶりに反落していたが、週の初めは力強い上昇をみせたといえる。10日の終値は10月28日につけた最高値(6890.89)からは0.85%安の水準だ。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

エヌビディアは7か月ぶりの高い上昇率 大手ハイテク株がそろって値上がり

S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株の10日の値動きでは、前週に7.08%安となっていたエヌビディア(NVDA)が前週末比5.79%高となり、ドナルド・トランプ大統領が相互関税の一部停止を発表した4月9日(18.72%高)以来の急騰だった。このほかアルファベット(GOOGL)が4.04%高、テスラ(TSLA)が3.66%高になるなど、マグニフィセント・セブンと呼ばれる大手ハイテク7社の株価がそろって上昇した。

エヌビディア、アルファベットなどマグニフィセント・セブンの株価の推移のグラフ

また10日の株式市場では、エヌビディア以外の半導体株でも、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)が前週末比4.47%高となり、3営業日ぶりに反発。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の株価も1.61%高となって、6営業日ぶりに反発した。

エヌビディア、あーム・ホールディングスなどの株価の推移のグラフ

政府閉鎖は解消へ一歩 米国経済の不透明感後退への期待がS&P500の好材料に

S&P500をめぐる投資家心理を上向かせたのは、10月1日から41日間にわたって続いている政府機関一部閉鎖が解消に向かいつつあることだ。米上院で9日夜に行われた、つなぎ予算案の議事進行に関する投票で賛成が60票に到達し、上院本会議での可決と、下院での可決、トランプ氏の署名を経て、週内にもつなぎ予算が成立する可能性が出てきた。ブルームバーグによると、共和党と民主党の一部議員は、農務省と退役軍人省、議会については1年間、その他の政府機関については2026年1月30日までの予算を確保することなどで合意。トランプ氏は10日、記者団に対して「米国政府は極めて迅速に活動を始めるだろう」と述べ、合意内容を支持することを示唆した。

過去最長の期間となっている政府機関閉鎖は、主要空港での運航能力削減のほか、低所得者向け支援策や中小企業向け公的融資などでの混乱をもたらし、経済界からも不満の声が高まっている。つなぎ予算の成立を受けて政府機関の活動が始まれば、米国の消費者や企業の経済活動をめぐる不確実性が解消され、S&P500にとっての追い風になりそうだ。また今後は雇用統計などの重要経済指標で米国経済の実体が確認できることになり、株式市場にとっては、S&P500を動かす取引材料が提供される機会が戻ってきそうだ。

こうした中、10日の金融市場では、前週に高まっていた投資家の不安の和らぎも感じられた。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の終値は前週末よりも7.76%低い17.60。6日につけた19.50からの低下が進み、10月17日以来となる20超えが遠のいた。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

VIXとS&P500の推移のグラフ

巨額AI投資への懸念はS&P500の重荷 経済指標の発表再開は両刃の剣か

ただ、政府機関が活動を始めたとしても、このところのS&P500にとっての重荷となっていたAIブームの過熱感への懸念が解消されたわけではない。10月末に行われた大手ハイテク各社の2025年7-9月期決算発表後の株式市場では、メタ・プラットフォームズ(META)やマイクロソフト(MSFT)の値下がりが鮮明。利益の伸び率が前四半期よりも小さくなったことが、AI開発やサービス強化に向けた設備投資が利益を圧迫していくとの懸念を強めている。

また、政府機関が今後発表する経済指標がS&P500にとっての悪材料になる可能性もある。なかでも株式市場の注目度が高い雇用に関する経済指標が弱い結果だった場合にはS&P500の下落要因なると同時に、強い結果だった場合でもFRBの12月利下げを遠のかせる悪材料とみなされる恐れもありそうだ。ブルームバーグによると、10日の金融市場では12月9、10日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利は3.720%と見込まれ、利下げ確率は63%と試算されている。

FRBの政策金利の見通しの推移のグラフ

金融市場では政府活動が実際に再開された場合、10月3日に発表される予定だった9月雇用統計が最初に発表されるとみられている。足元の株式市場では歓迎された政府機関一部閉鎖解消に向けた動きだが、結果的にはS&P500への下押し圧力として働く可能性もありそうだ。


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