テスラ、株価急騰にバブル不安 1年ぶり最高値 利益不振で財務悪化
テスラの株価は4月の底値から2.2倍。11月下旬からの上昇率では大手ハイテク首位だ。一方、業績悪化や財務の弱さでバブル懸念もつきまとう。
電気自動車(EV)大手のテスラの株価が急騰している。テスラの株価は16日に1年ぶりの最高値更新を果たし、4月の底値から2倍以上に上昇。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げへの期待が高まった11月下旬からの上昇率では、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の中で首位に立っている。大手ハイテク各社がAIブームへの疑念という逆風にさらされる中、自動運転EVやヒト型ロボットといった現実世界に根差したAI活用を打ち出すイーロン・マスクCEOのビジョンが評価された結果だ。ただ、テスラのEV事業が不振にさらされ続けていることは周知の事実で、株価の割高感は突出している。テスラの株価上昇に業績の裏付けがないことは明らかで、財務面の悪化はバブルへの懸念も感じさせている。
テスラの株価は4月以降で2.2倍 1年ぶりに最高値更新
テスラの株価(TSLA)の18日の終値は前日比3.45%高の483.37ドル。16日につけた489.88ドルは、テスラの株価がドナルド・トランプ氏の大統領選挙での勝利の余韻が続いていた2024年12月17日の479.86ドルを超える1年ぶりの最高値だった。テスラの株価はトランプ氏の相互関税が株式市場を揺らしていた2025年4月8日に221.86ドルまで下落した後、約7か月後の11月3日には468.37ドルまで回復。6日の株主総会でマスク氏への巨額報酬案が可決されると、好材料が出尽くしたとの見方から株価は下落に転じたが、11月21日の391.09ドルを直近の安値として反発が勢いづいた。12月18日終値は4月8日の底値との比較では約2.2倍の水準だ。
11月下旬以降の上昇はマグニフィセント・セブン内のトップ 利下げ期待が契機に
テスラの株価の直近の値上がりのきっかけとなったのはFRBの利下げへの期待の拡大だ。金融市場では、11月下旬にFRB幹部が相次いで利下げの余地に言及するなどしたことが好感されて、株価が上昇。テスラの株価の11月21日の直近の安値から12月18日終値までの上昇率(23.60%高)は、マグニフィセント・セブンの7銘柄の中でトップだ。テスラ以外の6社の株価も利下げ見通しの強まりを受けて上昇していたが、12月に入ってからはAIブームの継続性への疑念が重荷となって伸び悩んだ。2番手のメタ・プラットフォームズ(META)でも、この間の上昇率は11.81%高だ。
テスラの株価が力強さをみせた背景には、AI時代におけるテスラの特異性への期待がありそうだ。テスラはAIをEVの自動運転やヒト型ロボット「オプティマス」に搭載することで、「現実世界に根差したAI」の実現に向けて先行。マスク氏は10月22日の決算会見で、監視者を必要としない完全自動運転の実現に自信を示し、オプティマスについては2026年2月か3月にプロトタイプを公開するとした。マスク氏は「テスラは現実世界に根差したAIのための要素と電気機械工学上のずば抜けた能力、さらに大量生産の体制も持っている」としており、テスラが他に類をみない優位性を持っていることを強調している。
EVの販売不振からは抜け出せず 株価の割高感は桁違いの水準に
ただ、テスラの業績が苦戦していることは間違いない。1-9月のテスラの販売台数は前年同期比5.9%減の121万7902台。10-12月期はアメリカでのEV購入時の補助金が9月末で打ち切られたため、苦境が深まっているとみられる。ブルームバーグがまとめた予想では、10-12月期の販売台数は8.9%減の45万1462台とみられている。
こうした中、テスラの株価と今後12か月の予想収益を元にした株価収益率(PER)は突出した高さだ。ブルームバーグによると、テスラの予想株価収益率は18日段階で約241倍。マグニフィセント・セブンの他の6社の予想株価収益率が20-33倍程度であることを踏まえれば、まさに桁違いの高さだといえる。FRBの利下げ期待が高まった11月下旬以降、テスラの株価が23%超上昇する中、予想1株当たり利益(EPS)は同じ期間で3.65%減となっていることが割高感に拍車をかけている。業績見通しとは無関係に上がり続けてきた株価は、現実世界に根差したAIを展開するというマスク氏のビジョンが評価された結果だといえるが、バブル懸念があることも否めない。
テスラの財務状況は悪化 ビジョン頼みの上昇にはバブル懸念も
また、テスラの業績悪化は財務の健全性を損なっている面もある。テスラの営業利益を9月までの直近12か月の合計でみると45.29億ドルとなり、2年前にあたる2023年9月段階との比較では57.8%減。これに対して2025年9月末段階の社債やリースを含めた長期債務残高は2年前と比較して69.7%増にあたる217億ドルまで膨らんでいる。この結果、長期債務残高の直近12か月の営業利益に対する比率は、この2年間で1.2倍から4.8倍まで跳ね上がった。
テスラの財務面での弱さは、今後FRBによる利下げへの期待が後退すれば、悪材料としての注目度が高くなるおそれもある。マスク氏のビジョンへの期待を原動力としたテスラの株価の上昇には不安材料も山積しているといえそうだ。
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