米国株に見通し改善期待 S&P500最高値接近 米中緊張解消を楽観
S&P500は20日、2日続伸の1.07%高。米中間の緊張や政府機関閉鎖の解消への楽観が要因だが、相場のムードが急変する可能性も残っている。

アメリカの株式市場に見通し改善への期待が生まれてきた。S&P500種株価指数の20日の終値は前週末比1.07%高で、8日につけた最高値に改めて接近。投資家の不安心理も後退した。ドナルド・トランプ大統領が米中関係の緊張解消について楽観的な見方を示したことが材料視されたようだ。またトランプ政権からは政府機関一部閉鎖問題の決着を予想する声も出ているほか、地銀経営に対する過度な不安も落ち着き、相場の重苦しさを和らげている。ただ、米中関係や政府機関一部閉鎖が実際に改善に向かうかどうかは予断を許さないうえ、24日には9月の消費者物価指数(CPI)の発表も控えている。S&P500の今後の見通しには依然として、悪材料に足を引っ張られる可能性が残っていそうだ。
アメリカのS&P500は1.07%高 最高値から0.28%安まで浮上
S&P500(SPX)の20日の終値は6735.13で、2営業日続伸だった。ブルームバーグによると、8日につけた最高値(6753.72)からは0.28%安の水準だ。S&P500はトランプ氏が中国のレアアース輸出規制強化に不満を示し、中国製品に100%の追加関税をかけると言及した10日の急落で最高値から遠ざかっていたが、再浮上してきた形だ。

アップルはアイフォン17の好調が追い風 投資家の不安心理は改善
S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株の20日の取引では、アップル(AAPL)が前週末比3.94%高の262.24ドルをつけ、2024年12月26日(259.02ドル)以来の最高値更新を果たした。iPhone(アイフォン)17の販売が1年前のアイフォン16よりも好調だとのレポートが発表されたことが好材料になっている。このほか、22日に7-9月期決算を発表するテスラ(TSLA)が1.85%高となるなど、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の中で半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)を除く6社が値上がりした。

20日の金融市場では投資家の不安後退も感じられた。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は20日の終値で、前週末より12.27%低い18.23となった。VIXが20を割り込むのは13日(19.03)以来、5営業日ぶりだ。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒感が強いことを意味する。

トランプ氏が米中緊張解消を楽観 政府機関一部閉鎖の「週内解消」の声も
投資家心理を上向かせたのはトランプ氏の米中関係をめぐる発言だ。トランプ氏は20日にホワイトハウスで、11月1日までに中国との合意が成立しなければ、中国製品に高関税を課す考えを示しつつ、韓国で31日と11月1日の日程で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にあわせて、習近平国家主席と会談する考えを強調。会談後には、米中が「本当に公正で偉大な通商合意に達することになる」と述べた。トランプ氏は10日の段階では習氏との会談を取りやめる考えも示し、S&P500の急落を招いていたが、関係改善への努力を続けているもようだ。
またトランプ政権からは、米国経済の見通しを暗くしている政府機関一部閉鎖が解消に向かうとの観測も出た。ケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長は20日、CNBCテレビでのインタビューで、政府機関一部閉鎖は「今週中に終わりそうだ」と言及。18日に全米各地で「ノー・キングス」を掲げるトランプ氏に抗議するデモ活動が行われたことを受けて、穏健な民主党議員が共和党との協議に応じ、政府機関一部閉鎖の解消に協力するとの見立てを示した。ハセット氏によると、上院議員の多くは、民主党がデモ活動の前に共和党との合意を進めることは、民主党支持者に対して「見栄えが悪い」とみていたという。
地銀経営への不安も後退 ザイオンズの損失計上は「孤立した事例」
さらにS&P500にとっての新たな不安要素となっていた地銀経営への不安も落ち着きをみせている。ブルームバーグによると、地銀株の値動きを表す株価指数、S&P地方銀行セレクト・インダストリー指数は20日までの2営業日続伸で合計4.15%高となった。地銀指数は15日と16日の続落で8.41%安となっていたが、過度な不安は後退したようだ。15日に不正融資に伴う5000万ドルの損失を発表して地銀不安のきっかけのひとつを作ったザイオンズ・バンコープ(ZION)は20日の取引時間終了後に2025年7-9月期決算を発表。ブルームバーグによると、ハリス・シモンズCEOは決算会見で、今回の損失計上は「孤立した事例だ」と説明したという。

米中関係や政府機関閉鎖の見通しは不透明 9月CPIの発表で投資家心理の動揺も
ただ、米中関係をめぐる思惑は中国側からの情報発信で改めて悪化する可能性もある。政府機関一部閉鎖についても、共和党による民主党穏健議員の取り込みがハセット氏の見込み通り進むかどうかは不透明だ。S&P500の今後の見通しが引き続き不安定であることに変わりはない。
また、金融市場では米労働省が政府機関閉鎖中であっても24日に発表するとしている9月CPIへの注目も集まる。9月CPIで物価上昇の根強さが確認されれば、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げへの期待が冷え込み、S&P500への下落圧力が増すことも考えられそうだ。ブルームバーグによると、20日の金融市場では12月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.606%と見込まれ、年内2回の利下げが確実視される情勢だが、久々の重要経済指標の発表が投資家心理を大きく揺らす可能性もありそうだ。

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