米国株、年上昇率3年ぶりの低さか S&P500反発 エヌビディアに節目
S&P500は週次0.10%高。FRBの利下げへの期待で底堅さを示した。しかし2025年はAIブームの転機とみられ、年間上昇率は20%を割りそうだ。
アメリカの株式市場が底堅さを示した。S&P500種株価指数の19日の終値は1週間前比0.10%高。週後半の値上がりで2週ぶりの反発を果たした。人工知能(AI)ブームの継続性への懸念で増した株価への下落圧力が、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げへの期待で打ち消された形だ。2025年末に向けての重要経済イベントを通過したことを受け、投資家心理は落ち着きを取り戻している。ただ、2025年を振り返ってみれば、米国の株式市場にAIブーム失速の傷跡が残ったことは否めない。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価の2025年の値上がりは過去2年に比べて控えめで、2025年は節目の年になる可能性がある。また米国の金融市場では長期金利の上昇も意識されており、年末に向けた株価急上昇のハードルは高くなってきた。こうした中、年末に向けたサンタクロース・ラリーが不発に終われば、S&P500の年間上昇率は3年ぶりの20%割れに終わることも想定されそうだ。
アメリカのS&P500は週次0.10%高 小幅ながらも2週ぶり反発
S&P500(SPX)の19日の終値は前日比では0.88%高の6834.50。2日続伸で週次での小幅な上昇(0.10%高)につなげた。11日につけた最高値(6901.00)からは0.96%安となっている。ブルームバーグによると、週次での値上がりは1-5日週(0.31%高)以来、2週ぶりだ。
11月CPIがFRBの利下げ見通しを裏付け VIX指数は14台まで大きく低下
S&P500は17日まではAIブームの失速懸念が逆風となって4営業日続落。17日にオラクルがオープンAI向けに計画しているデータセンター建設について資金面での悪材料が報じられたことなどが影響した。しかし18日に発表された11月の消費者物価指数(CPI)がブルームバーグがまとめた市場予想を大きく下回る結果になると、株式市場ではFRBの2026年の利下げ見通しを裏付ける好材料とみなされ、S&P500の2日続伸を後押しした。
CPIの発表という重大イベントを通過し、投資家心理も落ち着きを取り戻したようだ。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の19日の終値は前日よりも11.62%低い14.91。9月中旬以来の低水準だった11日の14.85に迫る低さとなった。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
オープンAI関連銘柄のオラクルは週次での値上がりを確保 S&P500の好材料に
AIブームへの懸念で失速したオラクルの株価(ORCL)も19日には前日比6.63%高となり、週次での1.05%高を確保した。オラクル同様、オープンAIの大規模AIインフラ構築計画「スターゲート」で連携するエヌビディアの株価(NVDA)は19日までの週次で3.41%高、オープンAIに約27%出資するマイクロソフト(MSFT)の株価も週次1.54%高となった。オープンAIは2022年11月に対話型AIサービスChatGPTを発表して株式市場でのAIブームのきっかけを作っただけに、オラクルなどの株価の落ち着きはS&P500にとっての好材料といえそうだ。
2025年はAIブームの転機か エヌビディアの株価上昇にブレーキ
ただ、2025年はAIブームにとって節目の年になる可能性がある。S&P500への影響度が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の中では、AIの開発やサービス展開のための巨額の設備投資を進めてきたマイクロソフトやメタ・プラットフォームズ(META)、アマゾン・コム(AMZN)に財務面での不安が悪材料視されるようになった。このうちアマゾンの株価の2025年の上昇率は19日段階で3.63%高で、2023年の80.88%高、2024年の44.39%高から急失速している。またマイクロソフトやメタの19日の終値は6月末との比較で下落しており、2025年下半期の不振が際立つ。
また2025年はマグニフィセント・セブンの筆頭株にまで成長したエヌビディアの株価の上昇にもブレーキがかかった。エヌビディアの2025年の上昇率は19日段階で34.78%高。2023年の3.4倍、2024年の2.7倍と比べて大きく見劣りする結果になりそうだ。S&P500の牽引役を務めてきたエヌビディアの株価の爆発的な値上がりへの期待は過去のものといえそうだ。
米国長期金利の上昇は逆風 S&P500の年間上昇率は3年ぶりの20%割れか
こうした中、年末にかけてのS&P500には長期金利(10年物国債利回り)の上昇という不安材料もある。ブルームバーグによると、19日の長期金利の終値は4.148%で、前日から0.025%ポイント上昇。FRBの2026年の利下げ見通しは維持されているものの、日銀が19日に決めた11か月ぶりの利上げが円建て投資の魅力を高めるとの見方が、米国債の値下がりを招き、結果として長期金利の上昇につながった側面がありそうだ。金利上昇は株式投資の相対的な魅力を低める株安要因とみなされる。
このためS&P500の2025年の上昇率は過去2年に比べれば控えめに終わる可能性がありそうだ。S&P500の19日の終値は2024年末比で16.20%高。ブルームバーグによると、この水準で2025年末を迎えれば、1990年以降の36年で16番目の高さになる見通し。2023年の24.23%高、2024年の23.31%高からは失速することになる。米国株式市場ではクリスマス前から年明けにかけて株価が上昇しやすくなる「サンタクロース・ラリー」の経験則も指摘されるが、期待外れに終わる展開も考えられる。
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