米国株に格下げショック S&P500先物急落 週次5%高も週明け不安
S&P500は16日までの週次で5.27%高。しかし取引時間終了後に米国の格下げが発表され、先物価格は急落した。週明けの取引に不安が出ている。

アメリカの株式市場の上昇基調に冷や水がかかった。S&P500種株価指数の16日の終値は1週間前比で5.27%高。5営業日続伸で2月につけた最高値から3%安の水準にまで回復してきた。しかし16日の取引時間終了後、金融市場のムードは一転。格付け会社ムーディーズ・レーティングスが米国の信用格付けを1段階引き下げたと発表したことが要因となって、S&P500に関連づけられた先物商品が10分ほどで0.5%安となる急落に見舞われた。S&P500は2023年8月にフィッチ・レーティングスが米国債の格下げを発表した際に大きく下押しされており、今回も株式市場に格下げショックが走る可能性がある。一方、米国の株式市場には見通しへの楽観も根強く、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)は週次16%超高と好調だ。とはいえ、S&P500はこのところの回復で割高感が急激に増しているという事情もあるだけに、今回の格下げはS&P500の今後の見通しにとって重荷となることが想定される。
アメリカのS&P500は週次5.27%高 2月の最高値から3%安まで回復
S&P500(SPX)の16日の終値は前日比では0.70%高の5958.38。週次5.27%高はドナルド・トランプ大統領が相互関税を一部停止した4月7-11日週(5.70%高)以来の上昇率だった。16日終値は相互関税一部停止前日の4月8日につけた直近の安値(4982.77)との比較では19.58%高。2月19日につけた最高値(6144.15)からは3.02%安の水準となっており、見通しの明るさが増していた。

ムーディーズが取引時間終了後に米国を格下げ S&P500先物は10分で0.54%急落
しかし金融市場のムードは取引時間終了後に一転した。ムーディーズは16日夕方に米国の信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に引き下げると発表。格下げの理由について、10年以上にわたる政府債務や利払い比率の増加が、同程度の格付けが付与されている他の債務主体と比べて「極めて高い水準に達している」と説明した。
米国格下げのニュースが16日午後4時40分ごろに金融市場に伝わると、S&P500の先物価格は急落。ブルームバーグによると、発表から10分後には発表直前の水準から0.54%安まで値下がりした。

2023年8月のフィッチの格下げ時は長期金利が5%に S&P500は3か月で10%安
米国の格下げは2023年にも株価下落の引き金を引いたことがある。フィッチが8月1日夕方に米国債の格付けを最上位の「AAA」から「AA+」へと下げた際には、米国債売りのきっかけを作り、長期金利の上昇が加速。ブルームバーグによると、10月19日のニューヨーク市場の終値では5%目前となる4.991%をつけ、格下げ前の4%程度から1%ポイントもの上昇となった。S&P500はこの長期金利上昇が重荷となって下落基調となり、10月27日には格下げ前々日につけた当時の最高値から10.28%安まで下落している。このため、今回のムーディーズによる格下げも金融市場にショックを走らせ、S&P500の下落基調につながるとの見通しも成り立ちそうだ。
また、週明け19日以降の金融市場では投資家の不安心理の拡大が、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の上昇につながることも考えられる。シカゴ・オプション取引所によると、格下げ報道が伝わる前につけたVIXの16日の終値は17.24で、3月25日(17.15)以来の低水準だった。

トランプ氏は相互関税協議の早期収束を図るもよう エヌビディアは週次16%上昇
一方、米国格下げ発表までの株式市場には、12日に米国と中国が関税の大幅引き下げ合意を発表したことを背景とした、楽観ムードが強かったことも確かだ。トランプ氏は16日、アラブ首長国連邦(UAE)での記者会見で、相互関税をめぐる個別協議について、今後2、3週間にわたってに交渉相手国に通知を送り、「彼らが米国でビジネスをするために何を支払うことになるかを伝える」と発言。通知の内容や米国経済への影響は不明なものの、S&P500を下押しすることはなかった。また英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は16日、関係者の話として、「ここ数日、欧州連合(EU)と米国が初めて、関税交渉に関する文書のやりとりを行った」と報じており、株式市場ではやはり協議進展の可能性を感じさせる前向きなニュースと受け止められた。
こうした中、S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株の値動きも堅調。エヌビディアの株価(NVDA)は、13日に正式発表された半導体輸出規制見直し案の撤回方針が好材料となり、16日までの週次で16.07%高。電気自動車(EV)大手テスラの株価(TSLA)も週次17.34%高となっている。同様に、アルファベット(GOOGL)は8.80%高、メタ・プラットフォームズ(META)も8.08%高と好調だ。このほか、アマゾン・コム(AMZN)は6.49%高、アップル(AAPL)は6.41%高、マイクロソフト(MSFT)は3.54%高となっている。

S&P500には割高感 ムーディーズの格下げで見通しは悪化
ただ、S&P500はこのところの反発で割高感も感じられ、格下げのショックに反応しやすくなっていることも想定される。ブルームバーグによると、S&P500の水準と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は16日時点で22.7倍程度で、4月21日につけた19.5倍程度から、一気に上昇した。2020年以降の平均値(20.7倍程度)も超えており、S&P500の今後の見通しを暗くする材料といえそうだ。

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