米国株、「最高の11月」へ残る不安 S&P500好調 民間経済指標焦点
S&P500は週次0.71%高で、好調を維持。しかしFRBの利下げ見通し後退は悪材料で、週明けの民間経済指標発表でつまづく可能性がある。
アメリカの株式市場で値上がり期待が高まっている。S&P500種株価指数の10月31日の終値は1週間前比0.71%高で、3週連続の上昇。大手ハイテク企業の決算発表という重要イベントを乗り切り、好調を維持したまま、12の月の中で過去の騰落率が最も良好な11月を迎えた。一方、30日に行われた米中首脳会談では半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の中国向け輸出についての進展はなく、株価上昇の起爆剤にはならず。また、米連邦準備制度理事会(FRB)の12月の利下げに危うさが残っていることは、改めて不安材料として意識される可能性がある。こうした中、週明け3日以降の株式市場では米国の実体経済の強さを試す民間経済指標が発表される予定で、「最高の11月」が出足でつまづく展開も考えられそうだ。
アメリカのS&P500は週次0.71%高 3週続伸で6か月連続の値上がり達成
S&P500(SPX)の31日の終値は前日比では0.26%高の6840.20。前日までの2日続落の影響で28日の最高値(6890.89)からは後退しているが、3週連続での値上がりを確保した。ブルームバーグによると、10月の上昇率は2.27%高となり、5月から6か月連続での値上がりを達成している。
大手ハイテク決算で波乱 メタは設備投資不安で決算発表翌日に11.33%安
31日までの週次上昇はS&P500への影響度が大きい大手ハイテク各社による2025年7-9月期決算の波乱を乗り切った結果だ。29日に決算を発表したメタ・プラットフォームズ(META)は2026年通期の設備投資額が「2025年よりもはっきりと大きくなる」としたことが嫌気され、好調だった株価は翌30日に前日比11.33%安の急落。一方、アマゾン・コム(AMZN)は決算発表翌日の31日、不振だった株価が9.58%高の急騰をみせた。2026年の設備投資積み増し方針を示しつつも、人工知能(AI)の活用で利益成長が加速したことが安心感につながった。マグニフィセント・セブンと呼ばれる7社の週次の値動きでは、メタと、2026年6月通期の設備投資加速方針を示したマイクロソフト(MSFT)を除く5社が値上がりしている。
11月はS&P500の最高上昇率の月 AIブームで半導体株に勢い
S&P500には11月の値上がりへの期待も強い。2000年から2024年のデータによると、11月の上昇率は平均2.20%高で、12の月の中で最も高い。直近では2022年が5.38%高、2023年が8.92%高、2024年が5.73%高となっており、5%を超える大幅な値上がりが連続している形だ。
S&P500の上昇の背景となってきたAIブームにはバブル懸念も続いているが、対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIを含めた大手ハイテク各社の設備投資意欲の強さは確かで、11月の上昇を後押しする可能性がある。AI開発やサービス提供に不可欠な高性能半導体を供給するエヌビディアの株価(NVDA)は31日までの週次で3週続伸の8.71%高。クアルコム(QCOM)も週次7.08%高、ブロードコム(AVGO)も週次4.38%高となるなど、半導体株の値上がりの勢いは増している。
米中首脳会談は半導体では前進なし FRBの利下げ見通し後退も株価の重荷
一方、S&P500の31日までの週次の上昇は迫力不足に終わった感もある。韓国で30日に行われた米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席の首脳会談では、トランプ氏が事前に示唆していたエヌビディアの最新型半導体システム「ブラックウェル」の扱いに関する議論はなかったもよう。ブルームバーグによると、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは31日に記者団に対して、ブラックウェルの中国での販売について現時点では具体的な計画はないと述べたという。米メディアによると、米中首脳会談では、トランプ氏が中国から米国への合成薬物フェンタニルの流入問題に関連して中国製品に課していた関税を10%に下げることや、中国がレアアースの追加的な輸出規制を1年間延期することでの合意はあったが、株式市場では事前報道通りの結果と受け止められた。
S&P500にとってはFRBの12月利下げへの期待が後退したことも悪材料だ。FRBは29日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で2会合連続の利下げを決めたものの、ジェローム・パウエル議長は記者会見で、12月利下げは「既定路線とは程遠い」と述べた。パウエル氏は政府機関一部閉鎖で多くの重要経済指標の発表が見送られる中でも、労働市場の悪化は加速しておらず、高関税による物価上昇率の過熱もみられないとしており、FOMC内には12月は様子をみるべきだとの声も多いと説明している。
週明け以降は民間経済統計が焦点 S&P500に逆風の可能性も
こうした中、週明け3日以降のS&P500の見通しをめぐっては、民間から発表される経済指標が注目を集めそうだ。米サプライマネジメント協会(ISM)は3日午前10時(日本時間4日午前0時)に10月の製造業景況感指数を発表。ブルームバーグがまとめた市場予想では景況感指数は49.5と見込まれており、想定以上の強さが示された場合には、利下げ期待のさらなる後退がS&P500を下押しする可能性がある。
さらに5日には民間雇用サービス会社ADPが10月の全米雇用レポートを発表する。1か月前に発表された9月のレポートでは雇用情勢の悪化が示されていたが、パウエル氏の見立て通りに足元では労働市場の悪化の加速が進んでいないことが確認されれば、やはりS&P500の上昇の足を引っ張ることも考えられそうだ。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。