マイクロソフト、需要急増で方針転換 投資加速へ 株価一時5%急落
マイクロソフトの7-9月期決算は利益の伸びが減速。AIサービスへの需要の想定以上の高まりが設備投資の必要性を高めている。
マイクロソフトが29日の取引時間終了後に発表した2025年7-9月期決算は利益確保への不安をのぞかせた。マイクロソフトの7-9月期決算では、利益の伸び率が前四半期から大きく減速。さらに人工知能(AI)サービスへの需要が想定以上に拡大していることを受け、2026年6月通期の設備投資額の伸び率が前期よりも高くなるとの見通しが示された。従来の設備投資の増加ペースを減速させる方針を転換したことになり、利益圧迫への不安から、マイクロソフトの株価は29日の時間外取引で一時5%超下落した。マイクロソフトは莫大な投資計画を打ち出しているオープンAIとの関係も深く、今後も需要増への対応と利益確保の両立に向けたかじ取りの難易度が増すことも考えられる。
マイクロソフトの7-9月期決算は1株当たり利益が12.7%増まで減速
マイクロソフトの7-9月期決算は総収入が前年同期比18.4%増の776.73億ドル。1株当たり利益(EPS)が12.7%増の3.72ドルだった。総収入の伸び率は前四半期(4-6月期)の18.1%増とほぼ同じ。1株当たり利益の伸び率は前四半期(23.7%増)から大きく低下した。ブルームバーグがまとめた事前予想は、総収入が755.52億ドル。1株当たり利益が3.68ドル。発表された実績はともに事前予想を上回った。
AIサービスの需要急増 クラウド事業の受注残は3920億ドルに
AIサービスの提供基盤となるクラウド事業の7-9月期の収入は前年同期比28.25%増の308.97億ドル。伸び率は3四半期連続で、直前の四半期よりも大きくなった。マイクロソフトはクラウドサービス全般にわたる受注残が前年同期比51%増の3920億ドルあるとし、前四半期段階の3680億ドルからさらに膨らんだとしている。
2026年6月期の設備投資額見通しは上昇が加速へ 利益圧迫懸念で株価急落
ただ、AI需要の急増はマイクロソフトを慌てさせた側面がありそうだ。エイミー・フッドCFOは29日の決算会見で、2026年6月通期の設備投資について「伸び率が2025年6月通期よりも高くなる」とした。マイクロソフトはこれまで、データセンターの建物などへの投資が落ち着くことなどを理由に2026年6月通期の設備投資の伸び率は前期よりも小さくなるとしていたが、需要増加を受けて方針を変更した形だ。フッド氏は「需要増に追いつけていると思っていたが、実際は違った」と述べた。
実際、マイクロソフトの7-9月期の設備投資額は前年同期比74.5%増の349億ドルで、前四半期の27.4%増から急加速した。総収入に対する比率は44.9%まで高まっている。サティヤ・ナデラCEOは決算会見でAIサービスの提供に必要なデータセンターなどのインフラを「惑星規模」で展開するとしている。
こうしたマイクロソフトの方針転換は、設備投資に伴って増える減価償却費の積み増しが利益を圧迫する懸念を膨らませた。ブルームバーグによると、マイクロソフトの株価(MSFT)は29日の時間外取引で一時、514.98ドルをつけ、直前の終値(541.55ドル)から4.91%安となった。
マイクロソフトはオープンAIの27%を保有 クラウド事業の需要のさらなる拡大も
一方、マイクロソフトは28日に対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIの組織改編を認めることで合意。非営利団体のオープンAI財団の管理下で、公益を重視する営利企業として活動することになるオープンAIグループの持ち分のうち27%をマイクロソフトが保有することになった。合意内容には、マイクロソフトがオープンAIのAIモデルや製品に関する知的財産を2032年まで使うことができることなどが含まれている。ブルームバーグによると、マイクロソフトは今後もオープンAIの収入の20%を受け取る権利を保持するという。
また、両社の合意にはオープンAIがマイクロソフトのクラウドサービス「Azure(アジュール)」の利用に2500億ドルを支払うことが含まれている。オープンAIとの関係維持はマイクロソフトのAIサービスの開発に有効である一方、マイクロソフトが利益を確保しながらサービス提供能力拡充のペースをアップするという難題に直面する背景となっていそうだ。オープンAIのサム・アルトマンCEOはオープンAIの理念の実現にはさらなる投資が必要だとしており、マイクロソフトのクラウド事業に対する需要はさらに膨れ上がる可能性もある。
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