米国株、急騰の先送りも S&P500最高値 政府機関閉鎖で好機喪失
S&P500は4日続伸で最高値。FRBの利下げへの期待が好材料となった。ただ、政府機関閉鎖が長期化すれば、株式市場の値動きが抑えられそうだ。

アメリカの株式市場の楽観ムードが続いている。S&P500種株価指数の1日の終値は4営業日続伸の前日比0.34%高で最高値を更新。歴史的に不振に見舞われることが多い9月を値上がりで切り抜けた後、年内最後の四半期で好スタートを切った形だ。1日は議会での与野党対立の結果、政府機関一部閉鎖が始まり、3日発表予定の9月雇用統計を含む重要経済指標が公表されなくなるリスクが拡大した。しかし、1日に発表された民間企業がまとめたデータで雇用情勢の悪化が示されたことで、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げの確度は高まっており、投資家にとって安心材料となったようだ。一方、雇用情勢の悪化自体はS&P500の今後の見通しにとっての悪材料であることは明らか。さらに重要経済指標の発表の見通しがつかなくなったことは、S&P500の大きな値動きのきっかけが失われたともいえる。このため政府機関閉鎖が長期化した場合は、S&P500の楽観ムードが続く中でも、急上昇は起きづらくなったとみることもできそうだ。
アメリカのS&P500は4連騰で最高値更新 10-12月期の好スタートを切る
S&P500(SPX)の1日の終値は6711.20で、9月22日の6693.75を超え、1週間半ぶりに最高値を更新した。ブルームバーグによると、S&P500は前日(9月30日)までの3連騰で、9月の騰落率を3.53%高とし、不振に見舞われやすい9月としては2010年(8.76%高)以来15年ぶりの高い上昇を記録。さらに1年を締めくくる2025年10-12月期の最初の取引を値上がりで踏み出したことになる。

政府機関の一部閉鎖が開始 民間調査では9月も雇用者数が減少
1日の取引には政府機関一部閉鎖という逆風が吹いた。米議会では10月以降のつなぎ予算をめぐる与野党対立が継続。30日には共和党と民主党のそれぞれが提出したつなぎ予算案の審議についての投票が行われたが、いずれも審議進行に必要な60票の賛成を得ることはできなかった。政府職員の多くは1日から一時帰休に入り、金融市場に関連しては、3日に予定されている9月雇用統計などの経済指標の発表が遅れる見通しが強まっている。米国経済の実体が判明しないという異常事態はFRBが利下げを判断する材料が失われることを意味し、利下げ期待に後押しされてきたS&P500の上昇の勢いを削ぐ要因だ。
しかし1日の金融市場では民間企業の調査で雇用情勢の悪化が示された。民間雇用サービス会社ADPが1日に発表した9月の全米雇用リポートでは、非農業部門の雇用者数(政府部門除く)が前月比3万2000人減少。8月の3000人減少に続く、雇用の縮小となった。2か月連続でのマイナスは新型コロナウイルス感染拡大による混乱が一服した2021年以降では初めてだ。9月雇用統計をめぐっては、ブルームバーグがまとめた事前予想で非農業部門の就業者数が前月比5.2万人増と見込まれているが、下振れのおそれがありそうだ。

FRBの年内2回利下げ見通しが拡大 エヌビディアは5日続伸で連続最高値更新
雇用悪化の不安が強まった結果、1日の金融市場ではFRBの利下げ見通しが強まった。ブルームバーグによると、1日の金融市場はFRBが10月28、29日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを決めることが確実視される状況。また12月のFOMC後の政策金利の水準は3.625%と見込まれ、前日よりも0.034%ポイント低くなった。10月と12月のFOMCの両方で利下げが行われる確率は88%まで高まっている。FRBの利下げ見通しに基づく金利の先安観は株式投資の魅力を相対的に高め、S&P500の値動きには追い風とみなすことができる。

また、S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株の1日の値動きでは、半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)が5営業日続伸の0.35%高で187.24ドルとなり、2日連続で最高値を更新。人工知能(AI)ブームへの期待の強さを感じさせた。2日に7-9月期の販売実績を発表する見通しのテスラ(TSLA)も3.31%高の4営業日続伸になっている。マグニフィセント・セブンと呼ばれる大手ハイテク7社の中では、5営業日続落となったメタ・プラットフォームズ(META)を除く6社が値上がりした。

米国経済の弱さ自体は悪材料 経済指標の発表見送りならS&P500上昇の機会消失
一方、S&P500の今後の見通しをめぐっては、雇用情勢の悪化が示す米国経済の弱さ自体が悪材料といえることは間違いない。1日に米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した9月の製造業景況感指数は49.1で、ブルームバーグがまとめた市場予想の49.0とほぼ一致する水準だったが、新規受注の指数が悪化するなど、経済活動の弱まりも感じられた。さらに政府機関一部閉鎖が長期化すれば、一時帰休に入った政府職員による消費が落ち込むことや、政府活動の停止がGDPの成長率を下押しすることも考えられ、S&P500の見通しを暗くする要因といえる。

S&P500の1%を超える上昇は、FRBのジェローム・パウエル議長がワイオミング州ジャクソン・ホールでの講演で9月利下げを示唆した8月22日(1.52%高)が最後。さらにさかのぼれば、7月消費者物価指数(CPI)が発表された12日(1.13%高)と7月雇用統計が雇用情勢の悪化を示した4日(1.47%高)にも1%超の値上がりをみせている。政府機関一部閉鎖の結果、重要経済指標が発表されないことは、S&P500が楽観ムードに包まれつつも、上昇のきっかけを失ったという意味合いもありそうだ。このため、10月中旬から始まる大手ハイテク企業の7-9月期決算までの間は、S&P500の値動きの方向性がつきづらくなることも考えられる。
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