米国株、強気姿勢が後退 S&P500反落 物価も米中関係も見通し不良
S&P500は4営業日ぶり反落。CPIと米中協議に波乱はなかったが、最高値更新はならなかった。12日発表の5月PPIでも下落圧力がかかる可能性もある。

アメリカの株式市場で強気姿勢が後退した。S&P500種株価指数の11日の終値は前日比0.27%安で、4営業日ぶりの反落。5月の消費者物価指数(CPI)では物価上昇の想定以上の加速はみられなかったが、ドナルド・トランプ大統領の高関税政策への不安が重荷となった。12日発表の5月の卸売物価指数(PPI)の結果で、改めてS&P500に下落圧力がかかるおそれもある。また、米中関係をめぐっては、好材料が出尽くした感も出てきた。11日にはロンドンでの米中協議が合意に至ったと明かされたものの、中国がレアアースの輸出規制解除に6か月の期限をつけているとも報じられている。こうした中、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価が4営業日ぶりに反落するなど、大手ハイテク株の値動きは冴えない。S&P500の今後の見通しをめぐっては、最高値に向けた歩みがスローダウンする可能性もありそうだ。
アメリカのS&P500は4営業日ぶり反落 最高値からは1.98%安
S&P500(SPX)の11日の終値は6022.24。午前中には前日終値比0.33%高にあたる6058.67まで上昇する場面もあったが、午後に入ってマイナス圏に転落していった。一方、11日終値は2月19日につけた最高値(6144.15)からは1.98%安の水準で、引き続き最高値更新は射程圏内にある。

5月CPIは市場予想を下回る結果 FRBの利下げへの期待強まる
S&P500の午前中の値上がりを後押ししたのは5月CPIの結果だ。総合指数の伸び率は前年同月比2.4%で、ブルームバーグがまとめた市場予想の2.5%を下回る結果。4月の2.3%から物価上昇が加速したとはいえ、想定ほどの厳しさではなかった。また食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は4月と同じ2.8%で、やはり市場予想の2.9%を下回った。

5月CPIの結果を受けて、11日の金融市場では米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げへの期待が拡大。ブルームーバーグによると、金融市場で見込まれている12月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.837%となり、前日から0.063%ポイント低下した。年内2回の利下げが確実視されており、9月FOMCでの利下げについては日本時間12日午前11時現在で、92%程度の確率が見込まれている。

トランプ氏の高関税は投資家心理の重荷に 5月PPIの伸び率は2.6%の見通し
こうした好材料にも関わらず、11日のS&P500が反落に終わった背景には、ドナルド・トランプ大統領の高関税政策への不安がある。トランプ氏が4月9日の相互関税一部停止後も維持している10%の一律関税や、自動車や鉄鋼、アルミニウムに対する25%関税は企業にとってコスト増要因。5月CPIの結果は、企業が現状では価格転嫁を控えていることを示唆しているが、いずれは物価上昇が現実になり、米国経済の足かせになるおそれはぬぐえない。
このため12日午前8時30分(日本時間12日午後9時30分)に発表される5月PPIで物価上昇圧力の強さが感じられれば、S&P500にとっての逆風になる可能性がありそうだ。ブルームバーグがまとめた市場予想では、5月PPIの伸び率は前年同月比2.6%と見込まれている。

米中協議は合意成立 中国のレアアース輸出規制解除は6か月限定か?
一方、S&P500が最高値更新を視野に入れるまで上昇してきた要因となった米中関係改善への期待については、好材料が出尽くした感がある。トランプ氏は11日、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、9、10日にロンドンで行われた米国と中国の協議について「合意が成立した」と表明。米国側が問題視していた中国によるレアアースや磁石の輸出規制は解除されるとし、米国側は中国人学生を受け入れると表明した。中国国営新華社通信も11日、協議が「原則合意」に達したと報じている。ただ、米中関係は5月12日発表の関税大幅引き下げ合意時の状態に戻ったにすぎず、引き下げ期間が終わる8月上旬に向けて、さらなる協議が必要な状況だ。
また米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は11日、関係者の話として、中国のレアアース輸出規制解除は6か月の期間限定だと報じた。今回の合意で米国側はジェットエンジンや関連部品、プラスチックの製造に用いられる化学物質のエタンの輸出制限を緩和。高性能半導体の輸出規制は緩めないとしている。
エヌビディアの株価は4日ぶり反落 S&P500の見通しは上昇減速も
こうした中、11日の株式市場ではS&P500への影響度が大きい大手ハイテク株は冴えない値動きとなった。エヌビディアの株価(NVDA)は前日比0.78%安の142.83ドルで、4営業日ぶりの反落。1月6日の最高値(149.43ドル)から4.42%安に後退した。インターネット通販で中国製品を多く取り扱っているアマゾン・コム(AMZN)は2.03%安、iPhone(アイフォン)の製造と販売の両面で中国との関係が深いアップル(AAPL)は1.92%安となっている。

S&P500は米中関係の改善と物価上昇加速の回避という好材料を受けても最高値には届かなかった。S&P500の今後の見通しをめぐっては、トランプ氏の高関税がもたらす不透明感が消えない中、上昇ペースが減速することも考えられそうだ。
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