米国株、米中協議好感で上昇急加速 S&P500三連騰 ハイテク決算楽観
S&P500は3日続伸の1.23%高。週末の米中協議の進展が好感された。AIブームへの期待や、FOMCや大手ハイテク決算への楽観ムードは強い。
アメリカの株式市場の明るさが一気に増した。S&P500種株価指数の27日の終値は3営業日続伸となる前週末比1.23%高。2週間ぶりの高い上昇率で、連日での最高値更新を果たした。週末に行われた米国と中国の経済協議でレアアース輸出規制などをめぐる問題が解決へと前進し、30日予定の米中首脳会談での合意への期待が高まったためだ。また27日には半導体大手クアルコムが人工知能(AI)向け半導体への本格参入を発表。半導体株がそろって上昇しており、AIブームへの期待の根強さを示した。こうした中、株式市場では29日以降の連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表や、大手ハイテク企業の2025年7-9月期決算発表に注目が集まる。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ意欲が確認されればS&P500の値上がりがさらに勢いづくと想定されるほか、大手ハイテク企業の決算発表に関しても楽観ムードが強い。ただ、AIサービスをめぐる競合激化は各社の株価の明暗を分ける可能性もあり、S&P500の上昇にブレーキがかかる展開も考えられる。
アメリカのS&P500は1.23%高 3営業日続伸で最高値を連日更新
S&P500(SPX)の27日の終値は6875.16で、2営業日連続で最高値を更新した。ブルームバーグによると、27日までの3営業日続伸の間の上昇率は2.62%高で、連続する3営業日の上昇率としては、米中の関税大幅引き下げ合意発表が好感された5月12-14日(4.11%高)以来の大きさだった。
米中経済協議に進展 中国のレアアース規制は1年延期か
S&P500の上昇を勢いづけたのは、やはり米中間の緊張が緩和したことだ。米国のスコット・ベッセント財務長官は25、26日にマレーシアで中国商務省の李成鋼・国際貿易交渉代表と協議。終了後の米メディアとのインタビューでは、中国によるレアアース輸出規制について「1年間延期されると思う」と述べ、米中首脳会談での実質的な合意の枠組みが整ったとした。
レアアースをめぐっては、中国商務部が9日、レアアースの採掘や精錬などに用いられる技術などについて中国の事業者による輸出を原則として禁じると発表。同時に12月1日からは中国国外の事業者であっても、中国産のレアアースを含む磁石の材料を中国以外に輸出する際には、中国政府の許可を得なければならないとしていた。トランプ氏はこれに反発し、10日には遅くとも11月1日から中国製品に100%の追加関税を課すとしてS&P500を急落させていた。
米中間の懸案が30日に韓国で開かれる米中首脳会談を前に縮小したことは、投資家心理を落ち着かせた。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の27日の終値は前日よりも3.54%低い15.79。9月26日(15.29)以来の低さとなった。VIXは16日には地銀経営への不安もあって25.31まで上昇していたが、その後の7営業日中の6営業日で前日から低下している。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。
AI向け半導体に参入のクアルコムは11.09%高 ライバル企業の株価も上昇
また27日の株式市場では2023年以降のS&P500の上昇の背景となってきたAIブーム継続への楽観も感じられた。取引時間中に通信機器向け半導体で強みがあるクアルコムがAI分野に本格参入すると伝わると、クアルコムの株価(QCOM)は前日比11.09%高と急騰。クアルコムはAIサービスを低コスト提供することを目指した新型半導体「AI200」を2026年に投入し、さらに2027年には次世代半導体の「AI250」を投入するという。
クアルコムの参入はAI向け半導体で圧倒的なシェアを持つ半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)にとってはライバルが増えたことを意味するが、27日はエヌビディアの株価も2.81%高。同様にAI向け半導体での追い上げを狙うアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)も2.67%高となった。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の株価も4.65%高となっている。
FOMCは利下げ確実の見通し パウエル議長の利下げ姿勢でS&P500上昇加速も
こうした中、S&P500の今後の見通しをめぐっては、28、29日の日程で開かれるFOMCに注目が集まる。米国経済をめぐっては24日に発表された9月の消費者物価指数(CPI)の伸び率が市場予想を下回る結果で、27日の金融市場では今回のFOMCでの利下げが確実視されている。またブルームバーグによると、金融市場では12月のFOMC後の政策金利の水準は3.617%と見込まれ、さらなる利下げも有力視されている。ジェローム・パウエル議長が29日の記者会見で、金融市場の期待に沿った利下げ姿勢を示せば、S&P500の上昇の勢いがさらに増すことが想定される。
29日と30日に大手ハイテク5社が決算発表 楽観ムードも優勝劣敗の可能性
また、29日と30日の取引時間終了後に行われる大手ハイテク5社の決算発表もS&P500を大きく動かすことになりそうだ。29日にはメタ・プラットフォームズ(META)とアルファベット(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)の3社、30日にはアップル(AAPL)とアマゾン・コム(AMZN)の2社の決算発表が予定されている。この5社にテスラ(TSLA)とエヌビディアを加えた「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7社の株価は27日にそろって値上がり。アルファベットが4営業日続伸の3.60%高となったほか、マイクロソフトとメタが7営業日続伸となるなど、楽観ムードが強まっている。
ただ、各社が展開するAIサービスをめぐっては、対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIの積極展開姿勢もあって競合が激化している。各社は決算発表でAI関連投資への強気な姿勢を示すとみられているが、利益を確保できるかどうかについては不透明感が強い。大手ハイテク各社の間での優勝劣敗が意識されれば、S&P500の値上がりに冷や水がかかることも考えられそうだ。
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