米国株、不安解消進まず S&P500伸び悩み エヌビディアには追い風
S&P500は16日も最高値には届かず。トランプ氏のFRB議長解任否定は好材料とはいえ、実体経済への不安は根強く、6月小売売上高の結果も注目される。

アメリカの株式市場が不安を拭い去れずにいる。S&P500種株価指数の16日の終値は前日比0.32%高。2営業日ぶりの反発ながら最高値には届かなかった。16日にはドナルド・トランプ大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の解任を否定。前日には半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の中国向け半導体輸出規制の緩和という半導体株への追い風も吹いたが、投資家心理は依然として盛り上がっていない。米国株式市場にはトランプ氏の高関税政策が実体経済に及ぼす悪影響という不確定要素がのしかかっており、6月の消費者物価指数(CPI)では物価上昇の加速が確認されている。17日発表の6月の小売売上高で消費活動の後退が示されるなどすれば、S&P500にとって下落圧力となる可能性がありそうだ。
アメリカのS&P500は0.32%高も最高値には届かず 小幅な値動き続く
S&P500(SPX)の16日の終値は6263.70。前日の0.40%安から反発したものの、10日につけた最高値(6280.46)には届かなかった。ブルームバーグによると、S&P500は10日以降、5営業日連続で0.5%未満の騰落率が続いており、投資家の慎重姿勢がうかがえる。

トランプ氏はパウエル氏の解任報道を否定 S&P500は安値から浮上
16日の株式市場ではトランプ氏がパウエル氏の解任を否定したことが安心材料になった。トランプ氏は16日正午ごろに記者団に対して、「何か行動をとる計画はない」と発言。午前中に複数のメディアがホワイトハウス高官の話として伝えた、トランプ氏がパウエル氏を解任する可能性が高いとの報道を否定した。S&P500はトランプ氏の解任否定発言までに前日比0.68%安にあたる6201.59まで下落していたが、一気に上昇に転じた。

エヌビディアはH20の中国向け輸出を再開へ 最高値を連日で更新
また16日の株式市場ではエヌビディアの株価(NVDA)が前日比0.39%高の171.37ドルとなり、15日(4.04%高)に続く上昇。2日連続で最高値を更新した。エヌビディアが米国東部時間の14日夜、米国政府がエヌビディアの半導体製品H20の中国への輸出を認めること確約したと明かしたことが好材料となっている。トランプ政権は4月にH20が中国向け輸出規制の対象にあたるとエヌビディアに通告し、エヌビディアは2025年2-4月期に45億ドルの損失を計上していたが、経営環境が大きく好転した形だ。

アマゾンやメタなどは値下がり アプライド・マテリアルズなど半導体株にも慎重さ
ただ、こうした好材料にも関わらず、株価上昇の勢いは強まっていない。S&P500への影響度が大きい大手ハイテク株の16日の取引では、アマゾン・コム(AMZN)が前日比1.40%安となったほか、メタ・プラットフォームズ(META)も1.05%安、マイクロソフト(MSFT)も0.04%安となっている。一方、決算発表を23日に控えるアルファベット(GOOGL)が6営業日続伸の0.53%高となるなどの前向きな動きもあるが、株式市場全体のムードは上向かないままだ。
エヌビディア以外の半導体株では16日に半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)が2.25%安。クアルコム(QCOM)やブロードコム(AVGO)も値下がりした。エヌビディアの中国向け輸出が好材料となった15日は主要な半導体株がそろって上昇していたが、日本時間17日午後に台湾積体電路製造(TSMC)の4-6月期決算発表を控えていることもあり、投資家の慎重姿勢が感じられた。

6月CPIは物価上昇が加速 FRBの9月利下げ確率は56%まで低下
S&P500の重荷となっているのはトランプ氏の高関税政策が実体経済に及ぼす悪影響が見通せないことだ。15日に発表された6月CPIは、総合指数の伸び率が前年同月比2.7%となり、前月(5月)の2.4%から物価上昇が加速。ブルームバーグがまとめた市場予想の2.6%を上回った。食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率も2.9%で、前月(2.8%)よりも高くなっている。金融市場では高関税の価格転嫁が進んでいるとの見方が出る一方、影響はさほど大きくないとの声もあるようだ。ブルームバーグによると、FRBが9月までに利下げに踏み切ることについて金融市場で見込まれている確率は日本時間17日午前10時45分段階で56%まで下がってきた。

6月小売売上高は改善の見通し トランプ氏とパウエル氏の対立継続も
こうした中、S&P500の今後の見通しは米商務省が17日午前8時30分(日本時間17日午後9時30分)に発表する6月の小売売上高でも揺れ動きそうだ。ブルームバーグがまとめた事前予想では、6月小売売上高は前月比0.1%増が見込まれ、前月の0.9%減から大きく改善すると予想されている。自動車と部品を除いたベースでも前月比0.3%増となり、やはり前月の0.3%減からの復調が見込まれている。実際に発表される結果が予想に反して悪い内容となれば、物価上昇の加速と消費の減速が同時に進む米国経済にとっての最悪シナリオが意識され、S&P500を下押ししそうだ。

S&P500の停滞が続いた場合には、トランプ氏のパウエル氏への批判が再燃するおそれもある。トランプ氏は解任を否定した16日の発言に際し、いかなる選択肢も排除していないとも言及。パウエル氏が「詐欺」の罪を問われる形で辞任に追い込まれる可能性も示唆した。トランプ政権高官からは、FRBの庁舎改修が計画以上の高額になることを問題視する声が出ており、金融市場混乱の火種が大きくなる可能性も残されている。
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