アーム、AIブーム生かせず 利益に弱さ 思惑先行の株価上昇は頭打ち
アーム・ホールディングスは4-6月期決算でも株価上昇が勢いづかず。AIブームの追い風が利益成長につながっておらず、株価は頭打ちが続きそうだ。

英半導体大手アーム・ホールディングスの株価の上昇に火が付かない。アームは7月30日の2025年4-6月期決算発表が投資家の期待に応えられず。翌日の株価は13.44%安となり、1年以上にわたって最高値を更新できない状態が続いている。4-6月期はスマートフォン市場が想定ほどの強さにならなかったうえ、業績がブレやすいライセンス契約も不振だったことが勢い不足につながった。一方、アームは決算会見で、人工知能(AI)ブームが成長の追い風になるとの立場を強調したものの、利益が成長していく道筋は示せていない。アームが今後も投資家の期待を超える成長を実現できなければ、株価の頭打ちが続くことになりそうだ。
アームの2025年4-6月期決算は総収入の伸びが減速 利益は減益
アームが30日に発表した4-6月期決算は、総収入が前年同期比12.1%増の10.53億ドル。伸び率は前四半期(1-3月期)の33.7%増から減速した。また調整ベースの1株当たり利益(EPS)は12.5%減で、2024年7-9月期(16.7%減)以来3四半期ぶりの減益となっている。ブルームバーグがまとめた直前の市場予想との比較では、総収入と1株当たり利益のいずれも、極わずかに市場予想に届かなかった。

7-9月期の見通しは利益が市場予想に届かず 株価は翌日に13.44%安
またアームは決算発表に際して7-9月期の見通しも公表。総収入は10.10億-11.10 億ドルとされ、中間値の10.60億ドルは前年同期比25.6%増にあたる水準だ。また、1株当たり利益は0.29-0.37ドルとされ、中間値の0.33ドルは10.0%増の伸び率となる。総収入の見通しはブルームバーグがまとめた市場予想と一致したが、1株当たりの見通しは市場予想の0.35ドルを下回った。2026年3月期の見通しは示さなかった。
こうした決算発表を受けた翌31日、アームの株価(ARM)は前日比13.44%安と急落。1年前の2024年4-6月期決算発表が悪材料になった2024年8月1日(15.72%安)以来の下落率となった。8月4日の終値は5営業日ぶりに反発して140.05ドルまで戻したものの、2024年7月10日につけた最高値(186.46ドル)を約1年1か月に渡って更新できない状況が続いている。

スマートフォン市場が振るわずロイヤルティ収入下振れ ライセンス契約も減少
アームの4-6月期の総収入が冴えない結果だった要因は、顧客企業がアームの技術を用いた半導体の製造で得た収益に応じて受け取るロイヤルティ収入の下振れだ。4-6月期のロイヤルティ収入は前年同期比25.3%増だったが、アームは5月7日の前回決算発表でロイヤルティ収入について「25-30%増」との見通しを示していただけに、失望感を招く結果となった。ジェイソン・チャイルドCFOは30日の決算会見でロイヤルティ収入の伸び悩みについて、スマートフォン市場が「期待したほど強くなかった」と述べた。

また、顧客企業との間でアームの技術を用いた半導体製造の契約を結ぶ際にアームが受け取るライセンス収入は、4-6月期に前年同期比0.8%減の4.68億ドルとなった。ライセンス契約は大型契約のタイミングなどでブレが大きくなる傾向があり、4-6月期のマイナス成長は1-3月期の53.1%増から急減速した形だ。
AIブームは追い風 大規模クラウド事業者向けでのシェア50%と予想
一方、アームはAIブームが業績の追い風になるとの強気な姿勢を崩していない。アームの技術は半導体の省電力化に有効。これまでの主戦場だったスマートフォン向けの半導体だけでなく、AIの普及で大量の計算を効率的にこなすことの重要性が高まっているデータセンター向けの半導体でもアームの技術が生きるからだ。
ルネ・ハースCEOは30日の決算会見で、人工知能向け半導体で急成長してきたNVIDIA(エヌビディア)の半導体システム「ブラックウェル」はアームの技術を搭載することで電力効率が25倍になったと説明。またアームの技術は、アマゾン・コムやアルファベット、マイクロソフトが開発したデータセンター用の半導体にも用いられており、「ハイパースケーラー」と呼ばれる大規模クラウド事業者におけるアームのシェアは「2025年中に50%近くに達するだろう」と述べた。
アームの株価の割高感は否めず 利益成長がなければ株価の頭打ちも
ただ、アームの強気さはすでに株価に織り込まれている側面がある。ブルームバーグによると、アームの株価の水準と今後12か月の予想1株当たり利益から算出される株価収益率(PER)は4日段階で77倍程度。エヌビディアの予想PERが34倍程度であることと比べて大きく割高だ。エヌビディアは株価と予想EPSが足並みをそろてて上昇しているのに対して、アームの株価上昇は予想EPSの上昇を大きく上回るペースで、思惑が先行した値上がりとみることができる。

こうした中、アームの株価は今後もAIブーム継続の期待で値上がりする可能性はある。しかし3か月後の7-9月期決算発表で投資家の期待を超える実績を示さなければ、改めて株価が急落に見舞われ、頭打ちを解消できないままに終わる展開も考えられそうだ。
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