S&P500は3週ぶり反落。AIブームをめぐる不安がハイテク株を急落させました。米国経済の先行き不安は落ち着いていますが、株価の見通しへの懸念は続きます。
アメリカの株式市場が失速した。S&P500種株価指数の26日の終値は1週間前比1.95%安で3週ぶりの反落。「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社や半導体企業の株価が軒並み急落したことが要因だ。好決算が評価されたメモリ半導体大手マイクロン・テクノロジーも週次では値下がりしており、人工知能(AI)ブームの継続性をめぐる投資家の不安を映し出す値動きとなった。一方、米国の金融市場では、イラン情勢の改善が米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げへの警戒を弱めており、中小型株は好調を維持している。米国経済の見通しに対する期待は続いているといえ、週明け以降に予定される米国の実体経済をめぐる経済指標が株式市場の好材料となる可能性もありそうだ。ただ、AIブームを背景とした企業業績への期待はこれまでに大きく膨らんできただけに、反動への懸念は消えない。S&P500の今後の見通しをめぐっては、投資家心理の悪化が下落を勢いづかせる展開も考えられる。
S&P500(SPX)の26日の終値は前日比では0.05%安。5営業日続落で週次1.95%安に沈んだ。マイクロンの2026年3-5月期決算発表前日の23日に前日比1.44%安と急落したことが下落率を大きくした。ブルームバーグによると、週次での下落は5月雇用統計の過熱感がFRBの利上げへの警戒を強めた1-5日週(2.59%安)以来、3週ぶりだ。
またAIブームへの期待で好調を維持してきた半導体株も急失速している。クアルコム(QCOM)は26日までの週次で16.24%安、ブロードコム(AVGO)も週次11.26%安となり、それぞれ2週ぶりの下落となった。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の株価は週次23.94%安となっている。マイクロンの株価(MU)は決算発表が好感された翌日の25日に前日比15.74%高となったものの、26日には6.69%安と反落しており、週次では0.15%安に終わっている。
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ハイテク株の急落の背景にはAIブームの持続性への不安がある。対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIをめぐっては、米紙ニューヨーク・タイムズが25日、年内の実施が見込まれていた新規株式公開(IPO)を2027年まで先送りする可能性があると報道。オープンAIの資金調達計画に狂いが生じている可能性を感じさせた。オープンAIはAI開発企業アンソロピックなどのライバル企業との競争を勝ち抜くため、AIサービスの値下げを検討しているとも報じられている。また、AI事業も手掛ける宇宙開発企業のスペースXは22日、社債による資金調達を行う方針を発表し、ハイテク各社の資金負担の大きさを印象付けた。
大手ハイテク各社やAI開発企業はAIが世界の経済や社会構造を一変させるとの未来像を描き、AIサービスの開発や展開に不可欠な高性能半導体の確保に巨額の資金を投入。半導体企業の側は大手ハイテク企業からの収入が高成長の原動力になると期待されている。こうした中でAIサービスに関連した資金調達の難しさや価格競争による収益性の低下といった悪いシナリオが意識されれば、S&P500にかかる下落圧力がさらに大きくなる恐れもありそうだ。
一方、米国の金融市場でイラン情勢の改善が歓迎されていることはS&P500にとっての追い風。ブルームバーグのデータによると、ホルムズ海峡を通過したタンカーの数は18日以降、1日平均14隻程度で推移。6月前半の平均1.5隻程度から、海峡開放が前進している様子が感じられる。米国とイランの和平合意の覚書が17日に発効したことが民間船舶の航行を後押ししているようだ。25日にはホルムズ海峡を航行中のシンガポール船籍の貨物船がイラン側からとみられる攻撃を受けたことで、原油価格が上昇する場面もあったが、その後は落ち着きを取り戻している。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(8月渡し、WTI原油)の26日の終値は前日比3.74%安の1バレル=69.23ドルで、終値としてイラン戦争開戦前日にあたる2月27日(67.02ドル)以来の安値となった。
原油価格の下落は世界的な物価上昇圧力を弱める要因で、FRBが利上げで物価上昇を抑え込む必要性を薄めている。このため米国の金融市場では変動金利での借り入れが多い中小型企業の株価指数が上昇し、ハイテク株の急落に苦しめられているS&P500と好対照をなしている。ブルームバーグによると、中小型株の代表的な株価指数であるラッセル2000(RUT)の26日の終値は3010.08で2営業日連続で最高値を更新。週次での上昇率は1.02%高となった。米国では週明け以降、労働市場や企業の景況感に関する重要経済指標の発表が予定されており、底堅さが示されれば、米国株式市場全体にとっての追い風になる可能性がある。
ただ、S&P500の上昇の原動力であるハイテク株の見通しが危ぶまれていることは確か。7月に入れば各社の4-6月期の実績や業績見通しが材料視される展開も想定され、投資家の思惑の変化がS&P500を大きく揺らす懸念もある。ブルームバーグによると、S&P500構成銘柄の今後12か月の予想1株当たり利益(EPS)は26日段階で357ドル程度で、直近12か月の実績よりも21%も高い。S&P500の今後の見通しをめぐっては、こうした高い期待が下方修正されることで、S&P500の下落がさらに強まる展開もありえそうだ。
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