ドル円相場は161.95円まで円安が進行。原油価格下落は円高要因といえるが、ホルムズ海峡情勢が緊張すれば、円安が一気に進むリスクがある。
ドル円相場で円安が歴史的水準に近づいている。ドル円相場は日本時間26日午後の取引で1ドル=161円台後半で推移。前日には161.95円をつけ、1986年12月以来の162円台が目前に迫った。新体制となった米連邦準備制度理事会(FRB)が17日に利上げ姿勢を示したことを機にFX市場で進むドル高が、円安圧力として働いている。また日本の物価上昇の過熱感が和らいでいるという事情も円安の可能性を強める材料といえそうだ。一方、ホルムズ海峡開放への期待がもたらしている原油価格の下落は、FRBの利上げ見通しを弱めている。イラン戦争開始後に拡大してきた日米の金利差は縮小に転じつつあり、今後は円安圧力が後退する展開もありえる。ただ、ホルムズ海峡をめぐる情勢が流動的であることは確か。原油価格が急激に上昇するなどした場合には、FRBの利上げの可能性が意識されて、日本政府による為替介入への警戒を突破する形で円安が一気に進むリスクもある。
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間26日午後2時51分段階で1ドル=161.58円で取引されている。ブルームバーグによると、25日午後8時台には161.95円をつけ、2024年7月3日(161.95円)に並ぶ、約2年ぶりの円安水準となった。円安がさらに進めば、1986年12月23日(162.70円)以来の記録となり、39年半ぶりの円安水準といえる。
足元での円安進行のきっかけは、FRBが17日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ姿勢を示したこと。FX市場では円以外の主要通貨もドルに対して大幅に弱くなっている。ブルームバーグによると、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)の25日のニューヨーク市場の終値はFOMC結果発表前日の16日との比較で2.24%の豪ドル安。同じ期間では、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)も2.05%のユーロ安、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)も1.74%のポンド安となっている。円の対ドル相場は0.84%の円安だ。
またドル円相場では、日本の物価上昇の過熱感が和らいでいることも、日銀の利上げの必要性を薄れさせる円安要因として働いていそうだ。日銀が23日に公表した消費者物価のコア指標では、5月の消費者物価指数(CPI)から生鮮食品と制度変更などの特殊要因を除いた指標の伸び率が前年同月比2.7%となり、前月(4月)の2.8%から低下。さらにエネルギー価格も除いた指標の伸び率は2.1%となり、日銀が目標とする2%に近い水準まで下がっている。
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一方、アメリカとイランの和平覚書での合意を機に進んだ原油価格の下落は、米国の物価上昇圧力を弱める要因だ。米国で25日に発表された5月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は総合指数で前年同月比4.1%、食品とエネルギーを除いたコア指数で3.4%となり、いずれもブルームバーグがまとめた市場予想と一致する結果だった。今後も原油価格の下落基調が続いた場合には、FRBのケビン・ウォーシュ議長が17日の記者会見でリアルタイムの経済指標を重視する姿勢を示したこともあって、金融市場でのFRBの利上げ見通しが弱まり、円安圧力が小さくなることも考えられる。
実際、金融市場ではFRBが年内に2回の利上げを行うとの見方は後退した。ブルームバーグによると、25日の金融市場で見込まれている12月FOMC後の政策金利の水準は3.973%で、3日連続で前日よりも低くなっている。年内2回利上げの確率は36%で、22日段階の66%から低下した。原油先物市場の指標価格であるWTI(8月渡し、WTI原油)が24日と25日の取引で1バレル=70ドルを割り込んだことが要因といえそうだ。
こうした中、ドル円相場の背景となる日米の金利差は、イラン戦争の影響を受けた3月以降の拡大にブレーキがかかったかにみえる。ブルームバーグのデータで中央銀行の政策金利の動向を反映しやすい2年物国債の利回りを日米で比較すると、22日段階では米国の方が2.822%ポイント高かったが、25日段階では両者の差は2.715%ポイントまで縮小した。この間、米国の2年物国債利回りは0.103%ポイント低下している。同時にドル円相場では日本政府による為替介入への警戒も強く、このまま日米金利差が縮小していけば、次第に円高が進んでいく展開もありえる。
ただ、原油価格下落の要因であるホルムズ海峡開放への期待に脆さがあることは否めない。イギリス海事貿易機構(UKMTO)は25日、ホルムズ海峡のオマーン沿岸を航行していた貨物船が飛翔体による攻撃を受けたと公表した。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)はイランの革命防衛隊がシンガポール船籍の貨物船を攻撃したと報じている。イラン当局は日本時間26日午前6時台にSNSのXへの投稿で、指定されたルート以外の航行の安全は保障されないと警告した。ブルームバーグによると、WTIは日本時間26日午前4時台には1バレル=72.50ドルをつける場面もあった。
今後、ホルムズ海峡情勢がさらに緊張し、原油価格が大きく上昇すれば、FRBの利上げ見通しを強める円安要因として意識される可能性がある。FX市場でのドル高が進む中での162円台突入となれば、日本政府が為替介入を行ったとしても効果は小さいとみることができ、円安進行の幅が大きくなるリスクもありそうだ。
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