S&P500は6営業日ぶり反発の1.18%高。大手ハイテク株の上昇が原動力だが、30日以降の経済指標は荒れた値動きを招きかねない。
アメリカの株式市場の下落が止まった。S&P500種株価指数の29日の終値は6営業日ぶり反発の前週末比1.18%高。大手ハイテク各社の株価が大きく上昇したことが好材料となった。各社の株価は5月下旬以降、下落基調が続いてきたが、底打ちへの期待を感じさせる値動きといえる。なかでも半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の株価は10年ぶりの割安水準となっており、今後の反発がS&P500の上昇を後押しする可能性もありそうだ。一方、米国の株式市場には、経済の好調さが米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ見通しを強めることで下落圧力が強くなるリスクが根強く残っている。30日から7月2日にかけては労働市場や景況感に関する重要経済指標が相次いで発表されるだけに、S&P500をめぐる投資家心理が急激に冷え込み、値動きが荒くなる展開も考えられそうだ。
S&P500(SPX)の29日の終値は7440.43。前週末までの5営業日続落で記録した1.95%安から一転し、前週末比1.18%高の反発となった。ブルームバーグによると、29日終値は2日の最高値(7609.78)からは2.23%安で、10日につけた6月の底値(7266.99)からは2.39%高にあたる。
29日のS&P500の反発の原動力は「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価だ。テスラ(TSLA)が前週末比8.46%高となったほか、アルファベット(GOOGL)は6営業日ぶり反発となる4.82%高、アマゾン・コム(AMZN)は3.20%高となった。BITA社が7社の株価に基づいて算出するマグニフィセント・セブン指数(MAGSEVEN)は2営業日続伸の1.77%高となり、ドナルド・トランプ大統領がイランとの和平の覚書での合意が成立したと公表したことが好感された15日(2.73%高)以来、2週間ぶりの大きな上昇率となった。マグニフィセント・セブン指数は5月28日に直近の高値をつけてから、6月25日までの約1か月で12.85%安となっていただけに、不振脱却への期待を抱かせる値動きだ。
29日の大手ハイテク各社の値上がりの背景には株価の割安感がある。ブルームバーグのデータで、各社の株価と今後12か月の予想1株当たり利益(EPS)の比率を示す予想株価収益率(PER)をみると、6月に入ってからはマグニフィセント・セブンの7社すべてで低下傾向が出ている。なかでもエヌビディア(NVDA)の予想株価収益率は26日段階で19.2倍まで下がり、2016年5月12日(18.5倍)以来、10年1か月ぶりの低さだ。各社の株価の追い風となってきた人工知能(AI)ブームへの期待には、資金調達の難しさやAIサービスでの価格競争といった懸案も膨らんでいるとはいえ、売られすぎとの見立ても成り立ちそうだ。
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一方、S&P500の今後の見通しをめぐっては、FRBの利上げ見通しが逆風として意識される可能性がある。S&P500が2日の最高値から転落したきっかけのひとつは、5日発表の5月雇用統計で過熱感がみられ、FRBの利上げに伴う金利の先高観が意識されたこと。FRBのケビン・ウォーシュ議長は17日までの連邦公開市場委員会(FOMC)に際して、物価上昇への警戒に軸足を置き、追加利上げ姿勢を印象づけたこともあり、金融市場で米国経済の強さが物価上昇圧力を強めるとの筋書きが改めて意識されれば、S&P500にかかる下落圧力が大きくなる可能性がある。ブルームバーグによると、29日の金融市場では12月FOMC後の政策金利の水準は3.957%と見込まれており、5営業日ぶりに前営業日よりも高くなっている。
こうした中、S&P500にとっては、30日から7月2日にかけて相次いで発表される経済指標の重要性が増している。30日には5月の雇用動態調査(JOLTS)が発表されるほか、7月1日には民間雇用サービス企業ADPによる6月の全米雇用リポートとサプライマネジメント協会(ISM)による6月の製造業景況感指数(PMI)が発表される。さらに2日には6月雇用統計の発表も控えており、FRBの利上げをめぐる投資家心理が大きく揺れ動く展開も考えられそうだ。
このうち30日午前10時(日本時間30日午後11時)に発表される5月の雇用動態調査に関しては、労働市場の堅調さが示されると予想されている。ブルームバーグがまとめた市場予想によると、非農業部門の求人件数は729万6000件が見込まれており、1年11か月ぶりの高水準だった前月(4月)から低下しつつも、高水準を維持することになりそうだ。労働市場の強さを示した前月の結果が発表された2日は半導体株の上昇がS&P500の最高値更新を後押しする半面、FRBの利上げ見通しが強まる中、マグニフィセント・セブン指数は前日比1.05%安と急落してS&P500の足を引っ張っている。
S&P500に関する投資家心理はイラン和平やホルムズ海峡開放への期待を背景に改善してきたが、依然として先行きへの懸念は残っている。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は29日終値で17.65となっており、S&P500が最高値付近にあった6月上旬の15台よりは高い。こうした投資家の根強い警戒感が30日以降の経済指標への反応を大きくして、S&P500の値動きが荒れ模様となる可能性もありそうだ。
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