米国株、CPIで急落不安 S&P500見通し懸念 スペースX上場重荷か
S&P500は小幅な反発。中東情勢の改善にも反応は薄く、10日発表の5月CPIが急落要因となるリスクがある。スペースX上場も波乱要因といえそうだ。
アメリカの株式市場の難所が続いている。S&P500種株価指数の8日の終値は前週末比0.30%高。5日発表の5月雇用統計の過熱感を受けた急落からの反発は小幅に終わった。中東情勢をめぐっては8日、イランとイスラエルがともに攻撃停止を表明したと伝わったものの、原油価格は高止まりが続いており、米連邦準備制度理事会(FRB)が物価上昇抑制のために利上げに踏み切るとの見方は強まっている。米国では10日に5月の消費者物価指数(CPI)が発表される予定で、物価上昇が想定以上に強いと受け止められれば、S&P500が急落に見舞われるリスクがある。また、このところの株式市場では大手ハイテク株の不振も目立ち、宇宙開発企業スペースXの大型上場に向けて投資資金が流出している可能性もありそうだ。S&P500の今後の見通しに関しては、不安要素が積み重なっているといえる。
アメリカのS&P500は小幅に反発 最高値から2.68%安
S&P500(SPX)の8日の終値は前週週末よりも21.99ポイント高い7405.73。前週末5日に5月雇用統計の過熱感を受けて記録した200.57ポイント安(2.64%安)の下落幅の1割強を取り戻すに終わった。ブルームバーグによると、8日終値は2日につけた最高値(7609.78)からは2.68%安の水準で、相場のムードが明るくなったとはいえない。
イランとイスラエルが攻撃を停止 原油価格は依然高止まり
8日のS&P500は中東情勢をめぐる前向きなニュースにも反応は薄かった。イランメディアのタスニム通信によると、イラン革命防衛隊は8日の声明でイスラエルへの攻撃停止を表明。その後、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相も動画声明を公開し、イランの攻撃停止を理由として「現時点では攻撃を停止している」と述べた。ネタニヤフ氏の発言を受けて、S&P500は8日午前11時台に7466.81まで値を上げたが、その後は上げ幅を縮める値動きとなっている。イランは親イラン組織ヒズボラが拠点をおくレバノンへのイスラエルによる攻撃を問題視しており、7日以降、イランとイスラエルがお互いをミサイルで攻撃し合う事態に発展していた。
中東情勢を楽観しない姿勢は原油価格の値動きにも表れている。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(7月渡し、WTI原油)の8日の終値は1バレル=91.30ドル。イランによる攻撃停止が伝わる前につけた95.47ドルからは値を下げつつも、高止まりといえる水準に終わった。原油価格の高止まりがもたらす物価上昇圧力は、米国を含む世界経済にとっての懸案で、S&P500にとっての不安要素だ。
FRBは年内2回の利上げの見通しも浮上 10日の5月CPIでS&P500急落の恐れ
実際、8日には、物価上昇圧力の高まりがFRBに利上げを迫るとの見方が強まった。ブルームバーグによると、8日の金融市場で見込まれている12月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.896%で、前週末よりも0.018%ポイント高い水準。年内1回の利上げが確実視されるとともに、2回の利上げについても14%程度の確率が見込まれている形だ。FRBの利上げによる金利の先高観は株式投資の魅力を相対的に低くするS&P500にとっての下落要因。FRBが2022年3月に利上げサイクルに入った際のS&P500は実際の利上げに先駆けて下落が始まっている。
こうした中、投資家の関心は10日午前8時30分(日本時間10日午後9時30分)に発表される5月CPIに集まる。物価上昇率が市場予想よりも強い結果となれば、FRBの利上げ見通しがさらに強まり、5日同様にS&P500が急落する恐れがありそうだ。ブルームバーグがまとめた市場予想では、5月CPIの総合指数の伸び率は前年同月比4.2%となり、前月(4月)の3.8%から物価上昇が加速する見通し。食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は2.9%となり、やはり4月(2.8%)よりも高くなるとみられている。
大手ハイテク株の下落の背景には、大型IPO案件に向けて資金が流出しているという事情も考えられそうだ。テスラ(TSLA)のCEOとして知られるイーロン・マスク氏が率いるスペースXは12日の株式上場が見込まれており、ブルームバーグによると、機関投資家からの注文は売り出し規模を大幅に超えているという。スペースXは5月20日に米証券取引委員会(SEC)にIPOを申請。5億5555万5555株を1株あたり135ドルで売り出すとしている。テスラの資金調達額は750億ドルとなる計画だが、11日に決まる見通しの公募価格や上場後の値動き次第では、さらに大きな額の資金がスペースXに向かう可能性もある。
S&P500に不安要素山積 中東情勢の展開でも投資家心理は同様か
米国株式市場では、対話型AIサービスChatGPTでAIブームに火をつけたオープンAIも8日、SECに上場を申請したと発表。オープンAIのライバルであるアンソロピックも1日に上場申請を済ませている。S&P500を算出しているS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは4日、新規上場企業に適用している12か月の待機期間を短縮しないとの方針を公表しており、相次ぐ大型IPO案件がS&P500の値動きに貢献するのはしばらく先になりそうだ。
S&P500の今後の見通しをめぐっては、中東情勢に加え、FRBの金融政策の方針転換や大型IPOという波乱要素が山積している状態。ドナルド・トランプ大統領はイラン戦争の終結を目指しているものの、中東情勢の行方はイランやヒズボラ、イスラエルの動向が握っているといえ、投資家心理が大きく揺れ動く展開も考えられそうだ。
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