米国株、FRBリスク浮上 S&P500急落 和平覚書発効でも見通し不良
S&P500は1.21%安で、6月に入って3度目の急落。FRBの利上げの可能性が膨らみ、金融政策の方向性が見えにくくなったことがリスク要因となった。
アメリカの株式市場の見通しが悪くなった。S&P500種株価指数の17日の終値は2日続落の前日比1.21%安。大手ハイテク7社の株価もそろって下落し、投資家心理が悪化している。米連邦準備制度理事会(FRB)が17日に示した経済見通しで、次の金融政策変更が利上げになる可能性が膨らんだことが要因だ。5月に就任したばかりのケビン・ウォーシュ議長は17日の記者会見で、FRBが経済分析に用いるデータや手法の再検討を表明しており、FRBの金融政策の在り方が大きく変化するリスクも浮上している。一方、イラン戦争をめぐっては17日の取引時間終了後、米国とイランの和平合意の覚書が電子署名を経て発効したことが明かされ、ホルムズ海峡の封鎖解除に向けた前進が確認されたことはS&P500にとっては好材料。ただ、17日の金融市場ではすでに大きく下落してきた原油価格は横ばいで推移しており、今後もS&P500への下落圧力が続く可能性もありそうだ。
アメリカのS&P500は1.21%安 6月に入って3度目の急落
S&P500(SPX)の17日の終値は7420.10。前日比での下落率は1.21%安で、5月雇用統計で過熱感がみられた5日(2.64%安)、ドナルド・トランプ大統領がイラン攻撃再開を表明した10日(1.62%安)に続く、6月としては3度目の1%超の急落だ。ブルームバーグによると、17日の終値は2日につけた最高値(7609.78)からは2.49%安で、値上がりの勢いが削がれている。
S&P500をめぐる投資家心理を冷やしたのはFRBの利上げへの警戒だ。FRBは17日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で4会合連続となる政策金利の維持を決定。同時に示した経済見通しでは、19人の参加者中、9人が年内の利上げを想定していることが明かされた。FRBが3月に示した経済見通しでは利上げを見込む参加者が一人もいなかったことを踏まえれば、利上げへの積極姿勢が大きく強まったといえる。参加者が予想する12月末段階の政策金利の中央値は3.8%とされ、3月段階での3.4%から大きく上方修正された。ウォーシュ氏は議長就任前から中央銀行が経済予想を示すことに抑制的であるべきとの立場をとっており、今回のFOMCで経済見通しを示さなかった。
FRBのウォーシュ新議長は物価安定化に軸足 経済指標などの改革はリスク要因にも
またFRBはFOMC後に発表した声明文で「物価の安定を実現する」姿勢を強調。FRB議長として初めての記者会見に臨んだウォーシュ氏は、正しい金融政策を行えば物価安定と強い労働市場を両立させることが可能だとし、現段階のFRBの立場として「物価安定の側に取り組むべき課題がある」との見方を示した。ブルームバーグによると、17日の金融市場で見込まれている7月28、29日のFOMC後の政策金利の水準は3.716%となり、前日から0.067%ポイント上昇。7月利上げの確率は35%あると見積もられている。金融市場ではFRBの利上げは遅くとも10月までに行われるとみられており、金利の先高観が株式投資の魅力を相対的に低くすることで、S&P500に下落圧力をかけた形だ。
さらにウォーシュ氏は17日、FRBの金融政策決定に関わる改革に着手することを表明。情報発信の在り方、バランスシート政策、経済指標、変革期における生産性と雇用、物価安定のための手法の5つの分野について検討を進めるとした。記者会見では経済指標について、雇用統計などの統計指標はリアルタイムでの経済動向を正確に反映しきれておらず、後になって大幅に修正されるなどの問題があることに言及。民間企業は経営判断に際し、より即時性のあるデータを参照していることに触れ、FRBも新たなデータや分析手法を取り入れるべきだとの方向性を示した。ウォーシュ氏は5分野の多くでは年内に結論が出るともしており、FRBの金融政策の拠り所が大きく変わる可能性は、S&P500の見通しにとっては大きな不確定要素といえそうだ。
イラン和平の覚書が発効 原油価格は横ばいでS&P500への下落圧力継続も
一方、投資家の関心を集めてきたイラン戦争をめぐっては、17日の取引時間終了後、S&P500にとって明るい材料が出た。米国とイランの和平合意の覚書の内容が、米政府高官が報道陣に対して文書を読み上げる形で公表され、ホルムズ海峡の開放に向けた前進が確認されたためだ。ブルームバーグによると、米政府は両国の当局者による電子署名が17日に行われ、覚書はすでに発効していると説明しているという。14項目の覚書の中では、イランは署名後、ホルムズ海峡を航行する民間船舶に60日間に限り無料で安全な航行を確保する措置を講じるとされるとともに、米国は署名後直ちにイランが原油や石油製品を輸出することを可能にする経済制裁の適用除外を実施することが定められている。
ただ、和平の覚書の内容はこれまでの報道に沿った内容といえ、すでに大きく下落してきた原油価格は日本時間18日の取引では横ばいで推移している。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(7月渡し、WTI原油)は1バレル=75ドル台半ばでの値動きで、17日午後4時台につけた74.59ドルよりは高い水準にある。今後、民間船舶のホルムズ海峡通過が想定通りに実現しなかったり、経済制裁適用除外の実施をめぐるイランと米国の食い違いが明らかになるなどすれば、FRBの利上げの可能性がさらに高まり、S&P500への下落圧力が強まる展開も考えられそうだ。
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