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米国株、雇用統計過熱でショック S&P500急落 下落長期化見通しも

S&P500は週次2.59%の急落。5日発表の雇用統計の過熱感がショックとなった。FRBの利上げ局面入りへの警戒が下落圧力を長引かせる恐れがある。

米国株、雇用統計過熱でショック S&P500急落 下落長期化見通しも 出所:ブルームバーグ

アメリカの株式市場にショックが走った。S&P500種株価指数の5日の終値は1週間前比2.59%安で、約1年ぶりの大きな下落率。大手ハイテク株も大きく下落する厳しい値動きとなった。S&P500急落の要因は5日に発表された5月雇用統計が予想を大きく超える過熱感を示したこと。イラン戦争がもたらす原油高が続く中、物価上昇圧力の高まりが意識され、米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利上げ見通しが急激に強まった。一方、人工知能(AI)ブームへの期待が追い風となっているS&P500の水準に割高感はなく、米国の雇用の堅調さ自体は米国経済の強さを示す株式市場の好材料だ。ただ、FRBが実際に利上げに踏み切れば、2022年3月以来の利上げ局面開始といえ、金利の先高観がS&P500に長期的な下落圧力をかけるとの見通しも成り立つ。米国では10日に5月の消費者物価指数(CPI)の発表を控えており、週明け8日以降のS&P500の値動きをめぐっては、物価上昇への不安がS&P500をさらに下落させる展開も想定されそうだ。

アメリカのS&P500は週次2.59%安 マグニフィセント・セブンもそろって下落

S&P500(SPX)の5日の終値は前日比では2.64%安の7383.74。ブルームバーグによると、米中間のレアアースをめぐる通商問題が再燃した2025年10月10日(2.71%安)以来、8か月ぶりの大きな下落率となった。また週次での下落率(2.59%安)もドナルド・トランプ大統領が欧州連合(EU)への高関税を示唆するなどした2025年5月19-23日週(2.61%安)以来の大きさとなった。S&P500は前週(5月25-29日)までは9週続伸で、6月2日には7609.78の最高値をつけていたが、ムードが一変したといえる。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

S&P500への影響度が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価も5日はそろって下落。テスラ(TSLA)が前日比6.56%安、NVIDIA(エヌビディア、NVDA)が6.20%安、メタ・プラットフォームズ(META)が5.51%安となるなど、大きな値下がりとなった。週次でみてもテスラの10.28%安を筆頭に、7社すべてが下落している。

アルファベット、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、マイクロソフト、アップル、テスラの株価の推移のグラフ

5月雇用統計は予想を大きく超える強さ FRBの年内利上げが確実視される情勢に

S&P500を急落させたのは5日に発表された5月雇用統計が予想を大きく超える強さだったこと。労働市場の強さが物価上昇圧力の強まりを意識させ、FRBの利上げによる金利上昇が株式投資の相対的な魅力を低くするとの筋書きが連想された。5月雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比17.2万人増となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の8.5万人増を大きく超える結果。3月と4月のデータも合計9.3万人分の上方修正となり、直近の3か月平均では月間18.8万人ペースで就業者数が増えたことになる。5月の失業率は4.3%、平均時給の伸び率は前年同月比3.4%で、いずれも市場予想通りの結果だった。

アメリカの雇用統計の推移のグラフ

労働市場の強さが物価上昇への懸念を強めた背景には、米国とイランの和平協議の停滞が原油高につながっているという事情もある。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(7月渡し、WTI原油)は5日の終値で1バレル=90.54ドル。2日続落とはいえ、5日連続で90ドルを超えている。こうした中、金融市場ではFRBの次の政策金利の変更は利上げになるとの見方が急拡大した。5日の金融市場で見込まれている12月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.878%で、前日から0.101%ポイント上昇。現状の政策金利(3.50-3.75%、中間値3.625%)よりも0.253%ポイント高く、年内利上げ確率は100%超と見積もられている。

金融市場で見込まれるFRBの政策金利の水準の推移のグラフ

S&P500の割高感は緩和 予想株価収益率は2カ月ぶりの低さに

一方、S&P500の5日の値動きは割高感を和らげる効果も生んでいる。ブルームバーグによると、S&P500の水準と今後12か月の予想1株当たり利益(EPS)から算出される株価収益率(PER)は5日段階で20.9倍で、4月10日以来、約2か月ぶりの低水準。株式市場でのAIブームが本格化した2023年以降の平均値(21.2倍)も下回っており、S&P500に過熱感があるとはいえない。雇用統計で示された米国の労働市場の堅調さは企業業績の強さの表れともいえ、S&P500の急落は短期的に終わることも考えらえる。

S&P500と予想株価収益率の推移のグラフ

利上げ局面入りの見通しが投資家心理を下押し 10日の5月CPIへの警戒も

ただ、FRBが実際に利上げに踏み切るとなれば、2022年3月以来の「利上げ局面入り」への方針転換という大きな節目で、下落圧力が長期化する恐れがある。FRBは前回の利上げ局面では、利上げ開始に先立つ2021年12月のFOMCで、物価上昇が一時的であるとの見方を撤回し、金融政策を引き締める方向性を表明。S&P500は翌月の2022年1月3日に4796.56の最高値を付けた後、下落基調が続き、10月12日には最高値から25.43%安にあたる3577.03まで値下がりした。S&P500が改めて最高値を回復したのは、約2年あまりの空白期間を経た2024年1月19日のことだ。

2021年以降の米国の経済指標の推移のグラフ

こうした経緯を踏まえ、5日の金融市場では投資家心理が大きく悪化した。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の5日の終値は前日よりも39.68%高い21.51となり、20の大台を超えた。VIXはイラン和平への期待が強まり始めていた4月9日以降、約2カ月にわたって20未満で推移してきたが、不安心理が一気に高まったといえる。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、値が大きいほど、今後の値動きが荒くなることへの警戒が強いことを示す。

VIXとS&P500の推移のグラフ

米国の実体経済への関心が高まる中、今後のS&P500の値動きをめぐっては、10日に発表される5月CPIの重要性が大きくなった。5月CPIで物価上昇の過熱感が確認されれば、投資家心理はさらに冷え込む可能性がある。S&P500は週明け8日の取引でも、CPIへの警戒感から下落圧力にさらされる展開も考えられそうだ。


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