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米国株、AIブームに決算リスク S&P500週次上昇 半導体株に急落不安

S&P500は週次1.23%高。最高値更新が視野に入った。ただ、値上がりは期待先行の感があり、週明け以降の決算発表などが試練になりそうだ。

Source: ブルームバーグ

Written by

小雲 規生

小雲 規生

シニアファイナンシャルライター/Senior Financial Writer

作成日

アメリカの株式市場での楽観ムードに試練が待ち受けている。S&P500種株価指数の10日の終値は1週間前比1.23%高。2週連続での上昇で最高値更新が視野に入った。大手ハイテク株や半導体株も堅調な値動きで、投資家心理は落ち着きを取り戻している。ただ、S&P500の値上がりには期待先行の感があることも事実で、予想1株当たり利益(EPS)の伸び率は、実際の利益の伸び率を大きく超えるハイペースとなっている。人工知能(AI)ブームが追い風となってきた半導体株に割高感が目立つことも、投資家の期待が膨らみすぎていることの反映といえそうだ。このためS&P500の今後の見通しをめぐっては、週明け13日以降に相次ぐ重要半導体企業の決算や経済指標の発表が焦点となる。なかでもこのところの半導体株は株価急落が続いており、S&P500に対する逆風が増すリスクがある。

S&P500は週次1.23%高 最高値から0.45%安まで復活

S&P500(SPX)の10日の終値は前日比では0.42%高の7575.39。ブルームバーグによると、週次での上昇(1.23%高)は2週連続で、6月2日の最高値(7609.78)から0.45%安の水準まで迫った。S&P500はドナルド・トランプ大統領がイランに激しい攻撃を加えると表明した6月10日に最高値から4.50%安の水準まで値下がりした後、和平覚書の合意などの緊張緩和を受けて上昇基調となった。7月7日にはホルムズ海峡でタンカー3隻がイランからとみられる攻撃を受け、緊張が再燃していたが、トランプ氏は10日、自身のSNSトゥルースソーシャルへの投稿で、イランからの協議継続の申し出を受け入れたと明かした。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

メタが週次14.81%高の急騰 新規上場のSKハイニックスも値上がり

S&P500への影響度が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価も堅調だ。ブルームバーグによると、メタ・プラットフォームズ(META)の株価は10日までの週次で14.81%高。マーク・ザッカーバーグCEOが9日のブルームバーグのインタビュー記事で、AIモデルのミューズ・スパークの最新版を開発者向けに公開するにあたり、有料化する方針を表明したことが好感された。ザッカーバーグ氏は利用料はライバルにあたるオープンAIやアンソロピックの25%程度に抑えるとしている。このほかNVIDIA(エヌビディア、NVDA)は週次8.28%高、テスラ(TSLA)は週次3.64%高になるなど、7社中の5社が値上がりしている。

アルファベット、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、マイクロソフト、アップル、テスラの株価の推移のグラフ

また10日までの週次の取引ではエヌビディア以外の半導体株も復調し、S&P500を下支えした。ブロードコム(AVGO)はアップル(AAPL)との300億ドルを超える複数年契約発表が好感され、週次10.96%高。アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)も週次7.74%高、クアルコム(QCOM)も週次7.32%高となった。3社はいずれも3週ぶりの反発だ。また、韓国のメモリ半導体大手SKハイニックスが10日に上場した米国預託証券(ADR)は初日の終値が公募価格よりも12.76%高い168.01ドルとなり、AIブームへの期待の強さを裏付けた。

エヌビディア、ブロードコム、クアルコム、アーム・ホールディングスなどの株価の推移のグラフ

企業業績への期待拡大 半導体株で強まる割高感

ただ、S&P500の値上がりには期待先行の感がある。ブルームバーグによると、S&P500構成銘柄の今後12か月の予想1株当た利益は10日段階で358ドル程度で、イラン戦争開始前日にあたる2月27日比で13%増となっている。この間、直近12か月の1株当たり利益の実績は6.5%しか伸びておらず、期待される利益水準が実際の利益水準より21%以上も高い状況が続いている。

S&P500と予想1株当たり利益と実績1株当たり利益の推移のグラフ

同時に、AIの本格的な普及と性能の向上が需要急増につながっている半導体株にも割高感が目立つ。ブルームバーグのデータで株価と今後12か月の予想1株当たり利益の比率を示す予想株価収益率(PER)をみると、AMDは10日段階で54倍程度となり、株式市場でAIブームが本格化した2023年以降の平均値である34倍を大きく超えている。半導体の名門企業インテル(INTC)も足元の予想株価収益率は89倍程度で、2023年以降の平均値(54倍程度)を大きく超える水準だ。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)の予想株価収益率は140倍程度にも達している。3社の株価はイラン和平への期待が高まった4月以降の値動きで2.1-2.7倍になっており、過熱感があることは否めない。

エヌビディアなど半導体各社の予想株価収益率の比較グラフ

TSMCやASMLの業績に注目 半導体株急落でS&P500に逆風の恐れ

このためS&P500の今後の見通しをめぐっては、週明け13日以降に発表される重要半導体企業の決算発表が波乱を呼ぶ可能性がある。半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC、TSM)は13日、6月の台湾ドルベースでの総収入を公表し、16日には正式な2026年4-6月期決算を発表する。エヌビディアなどを顧客に持つTSMCの業績に変調が感じられれば、米国を含めた世界の半導体株に下落圧力がかかる可能性がある。TSMCの6月の実績は当初10日の発表が予定されていたが、台湾への台風接近で発表が延期された。また15日には最先端半導体の製造装置の供給元であるオランダのASMLホールディング(ASML)の4-6月期決算も発表される。

このところの株式市場には、半導体株の急落が続いてきたという不安要素もある。米国に上場する主要な半導体株の値動きを示すフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は、メモリ半導体のマイクロン・テクノロジー(MU)の決算発表をめぐる思惑が株式市場を揺らした6月22-26日週に週次7.94%安。続く6月29-7月3日週は著名投資家がAIブームの「終わりの始まり」を指摘したと伝わり、週次4.37%安となった。直近の10日までの週次では2.70%高となって下落が止まったものの、韓国サムスン電子の4-6月期決算速報値が韓国の株式市場で厳しい評価を受けた7日には前日比4.65%安となる場面もあった。米国の株式市場では、14日には米国の6月消費者物価指数(CPI)の発表も予定されており、TSMCやASMLの業績に対する投資家の反応とあわせて、S&P500への逆風が強まる恐れがありそうだ。

フィラデルフィア半導体株指数の推移のグラフ

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