S&P500は3営業日ぶり反落の0.22%安。半導体株の急落が足を引っ張った。2日発表の6月雇用統計は1か月前同様のショックを走らせる可能性がある。
アメリカの株式市場の見通し不安がくすぶっている。S&P500種株価指数の1日の終値は3営業日ぶり反落の前日比0.22%安。前日までの値上がりで視野に入りつつあった最高値更新への歩みが足踏みした。1日は人工知能ブーム(AI)の継続性をめぐり、著名投資家が「終わりの始まり」を予言したと伝わり、半導体株の急落がS&P500の足を引っ張った。一方、株式市場でのAIブームを牽引してきた大手ハイテク株の1日の値動きは堅調で、S&P500にとっての好材料となっている。また、原油価格がイラン戦争開始前の水準近くまで下落する中、連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長が物価上昇懸念の弱まりに言及したことも、S&P500の上昇を後押しする要因といえそうだ。ただ、投資家の間では2日に発表される6月雇用統計への注目が高く、結果次第ではFRBの利上げへの懸念が改めて強まる可能性がある。1か月前に発表された5月雇用統計ではS&P500の急落が起きただけに、ショックが再来する懸念も拭えない。
S&P500(SPX)の1日の終値は7483.23。前日終値では2営業日続伸の末に7499.36となり、6月2日の最高値(7609.78)から1.45%安に迫っていたが、回復基調にブレーキがかかった。S&P500は10日には最高値から4.50%安となる7266.99をつける場面もあった。
半導体株の急落の背景となったのは、著名投資家のマイケル・バーリ氏がAIブームに対して鳴らした警鐘。ブルームバーグによると、バーリ氏は30日付のニュースレターで、エヌビディアやアプライド・マテリアルズ、テスラ(TSLA)などで売りポジションを取っていると公表。半導体株の値動きを反映する上場投資信託(ETF)の価格水準について「典型的な過大評価」とした。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、バーリ氏はこのニュースレターの中で、韓国の半導体大手サムスン電子とSKハイニックスが29日に、韓国政府と連携し、5000億ドル超を投じて半導体生産能力を拡大すると発表したことについて、「終わりの始まりのように思える」と指摘した。バーリ氏は2008年のリーマン・ショックの一因となったサププライムローン危機を予見して利益を上げた実績で知られている。
一方、1日の米国株式市場ではS&P500への影響度が大きい大手ハイテク株は堅調だった。「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる7社の中では、エヌビディアを除く6社が値上がり。中でもメタ・プラットフォームズ(META)は4日続伸の前日比8.81%高となり、2025年10-12月期決算発表で示した業績見通しが好感された1月29日(10.40%高)以来の上昇率となった。ブルームバーグが1日、メタが自社利用を目的として拡充してきたデータセンター群で外部顧客向けのクラウド事業を展開する計画を検討していると報じたことが好材料視された結果だ。メタはAI開発に巨額の資金を投じ、広告事業の効率化などで収益性をアップさせてきたが、クラウド事業を手掛けるアマゾン・コム(AMZN)やマイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)などと比べて、AI活用の幅が広がっていない側面が悪材料視されていた。
簡単!3分で口座開設申込
最短1営業日で取引開始
また米国経済の不安材料としてS&P500を下押ししてきた原油高も解消への期待が強まっている。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(8月渡し、WTI原油)は1日の取引で一時、1バレル=67.92ドルまで下落。イラン戦争開戦前日にあたる2月27日終値(67.02ドル)が近づいてきた。原油価格は米国とイランの和平合意の覚書が17日に発効したことなどから、下落傾向が維持されている。
同時に1日に発表された経済指標で米国の労働市場の過熱感が見られず、米国経済の強さがFRBに利上げを迫るというシナリオが強まらなかったことも、S&P500にとっての安心材料といえそうだ。民間雇用サービス会社ADPが1日に発表した6月の全米雇用レポートでは、民間雇用者数は前月比9.8万人増となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の12.0万人増を下回った。ブルームバーグによると、FRBのケビン・ウォーシュ議長は1日、ポルトガルで開かれた欧州中央銀行(ECB)主催の年次フォーラムで、この4週間で「インフレリスクは後退した」と述べている。
ただ、S&P500は2日午前8時30分(日本時間2日午後9時30分)に発表される6月雇用統計に急落で反応する可能性がある。1か月前の5月分のデータでは非農業部門の就業者数が予想を大きく超える前月比17.2万人増となり、FRBの利上げ見通しが強まった結果、S&P500は前日比2.64%安の急落に見舞われていたからだ。ブルームバーグによると、6月雇用統計では就業者数が前月比11.3万人増になると見込まれているほか、失業率は4.3%、平均時給の伸び率は前年同月比3.5%になると予想されている。
1日にインフレリスクの後退を指摘したウォーシュ氏も6月17日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見では「物価安定の側に取り組むべき課題がある」としており、6月雇用統計での就業者数や賃金上昇率に過熱感が出れば、改めて物価上昇への警戒を強める可能性がある。ブルームバーグによると、1日の金融市場で予想されている7月28、29日のFOMC後の政策金利の水準は3.700%で、利上げ確率は29%。すでに確実視されている年内追加利上げのタイミングが前倒しになるとの見方が強まった場合には、S&P500に再びショックが走る恐れもありそうだ。
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。