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米国株、イラン情勢リスク拡大 S&P500続落 AIブームも見通し不安

S&P500は2日続落。ホルムズ海峡の緊張感がリスク要因となった。半導体株の下落は一服したが、7月中旬以降の注目決算発表が波乱要因だ。

Source: ブルームバーグ

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小雲 規生

小雲 規生

シニアファイナンシャルライター/Senior Financial Writer

作成日

アメリカの株式市場の見通しの悪さが強まってきた。S&P500種株価指数の8日の終値は前日比0.28%安で2日続落。構成銘柄の8割近くが値下がりし、大手ハイテク株も不振だった。石油の重要通商ルートであるホルムズ海峡で米国とイランの間の緊張が再燃し、ドナルド・トランプ大統領が4月上旬からの停戦が打ち切られたとの見方を示したことが株式市場のリスクを意識させた。金融市場では原油価格が急騰し、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ見通しも強まっている。一方、8日の取引では半導体株の下落はストップ。人工知能(AI)ブームをめぐる不安の拡大には一旦、歯止めがかかった。ただ、AIブームの持続性に関する思惑は7月中旬以降に相次ぐ注目企業の決算発表で大きく揺れるとみられ、不安が解消されたとはいえない。S&P500の今後の見通しにとっては、イラン情勢とAIブームの行方が二重の重荷として働くことになりそうだ。

S&P500は2日続落の0.28%安 大手ハイテク株など全銘柄の8割が下落

S&P500(SPX)の8日の終値は7482.71。前日比0.28%安は、前日の0.45%安に続く値下がりで、6月2日の最高値(7609.78)から1.67%安まで後退した。8日の取引では構成銘柄の78%にあたる391銘柄が値下がりしている。S&P500は週初めの7月6日終値では最高値から0.95%安まで回復していたが、再び記録更新が遠のいた形だ。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

8日の取引ではS&P500への影響度が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価も不調。ブルームバーグによると、テスラ(TSLA)が2日続落の前日比2.19%安となったほか、メタ・プラットフォームズ(META)が2.02%安となるなど、7社中の5社が値下がりした。

アルファベット、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・コム、マイクロソフト、アップル、テスラの株価の推移のグラフ

トランプ氏が停戦終了に言及 原油価格は直近安値から13%高

S&P500の冴えない値動きの要因はイラン情勢の悪化だ。ホルムズ海峡では7日、タンカー3隻がイランからとみられる攻撃を受け、米軍がイランに対する攻撃を始める事態に発展。米中央軍はイランの防空システムやレーダー施設、イラン革命防衛隊のボートなどを標的にしたとしている。トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)首脳会議のために訪れていたトルコで8日、記者団に対して、4月上旬から続いてきたイランとの停戦について「終わったと思う」と発言。米中央軍は日本時間9日朝にも「追加的な攻撃」を行ったと発表した。

こうした中、このところの金融市場では原油価格が急騰。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(8月渡し、WTI原油)は日本時間9日午前0時台には1バレル=76.08ドルをつけ、2日につけたイラン戦争後の最安値(67.04ドル)から13.48%高となった。ホルムズ海峡を8日に通過したタンカーの数は前日から半減したもようで、世界経済の見通しを悪化させるS&P500にとっての下落要因といえる。

WTIの価格の推移のグラフ

FRBの7月利上げ確率は30%まで上昇 議事要旨でも利上げ論に勢い

また、原油価格の上昇は米国内での物価上昇圧力の高まりを意識させ、8日の金融市場ではFRBの利上げ見通しが強まった。ブルームバーグによると、28、29日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.704%と見込まれ、利上げ確率は31%まで上昇している。6月雇用統計で過熱感がみられなかった2日段階での18%から、じわじわと早期利上げの可能性が高まってきたといえ、S&P500をめぐる投資家心理を悪化させている。

FRBの政策金利の見通しの推移のグラフ

FRBの早期利上げ見通しは、FRBが8日に公表した6月FOMCの議事要旨でも裏付けられた。議事要旨ではFOMC参加者が「物価上昇の見通しは依然として上振れ方向に傾いている」と判断したとされ、原油高や、AIサービスに用いられるデータセンターなどのインフラ建設が物価上昇圧力として働いているとの分析が示された。大半の参加者は数年にわたって物価上昇率が2%を超えていることが「インフレ期待や企業の賃金、価格設定に影響を与える」とも指摘している。ケビン・ウォーシュ議長はこのFOMCの結果が発表された6月17日の記者会見で物価上昇抑制の取り組みに軸足を置くことを強調し、S&P500は前日比1.21%安の急落に見舞われている。

半導体株は反発 7月中旬以降の注目決算でAIブームの見通しに動揺も

一方、8日の取引ではAIブームの持続性への懸念を背景とした半導体株の下落には歯止めがかかり、S&P500の下落幅を抑えた。ブロードコム(AVGO)の株価は2日ぶり反発の前日比4.83%高で、アップル(AAPL)がブロードコムとの半導体開発に関する2031年までの複数年契約の規模が300億ドルを超えるとの見通しを示したことが好材料となった。また、NVIDIA(エヌビディア、NVDA)の株価は3日続伸の3.65%高で、ニュースメディアのジ・インフォメーションが、中国政府が国内のAI関連企業に対してエヌビディアのAI半導体H200の購入を認める方針だと報じたことが追い風となった。米国に上場する主要な半導体株の値動きを示すフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は8日に2.23%高となり、韓国株式市場でのサムスン電子の株価急落のあおりを受けた7日の4.65%安から反発した。

ブロードコム、エヌビディアなど米国の半導体株の株価の推移のグラフ

ただ、大手ハイテク各社が展開するAIサービスをめぐっては、設備投資負担の重さや価格競争といった不安材料も意識されている。7月中旬以降に相次ぐ注目企業の2026年4-6月期決算発表で変調が感じられれば、AIブームをめぐる楽観ムードが改めて冷え込む恐れがありそうだ。半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC、TSM)は10日に6月の総収入を発表した後、16日の決算発表では今後の業績や市場環境の見通しを示す。さらに22日にはテスラとアルファベット(GOOGL)、23日にはインテル(INTC)の決算発表が控えている。株式市場ではイラン情勢への懸念が強まっていることもあり、投資家の不安がS&P500への下落圧力を強める展開も考えられそうだ。

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