WTIは7日に2.76%高。8日も上昇が続いている。ホルムズ海峡をめぐる緊張再燃が要因で、世界経済への波乱リスクが再浮上した。
原油価格が急上昇した。原油先物市場の指標価格であるWTI(8月渡し)は日本時間8日午前の取引で1バレル=72ドル前後で推移。前日のニューヨーク市場の終値の上昇率は約5週間ぶりの大きさとなっており、原油価格の値下がり傾向が崩れた。石油の重要通商ルートであるホルムズ海峡を通過するタンカーがイラン側からとみられる攻撃を受け、米国とイランが和平覚書で合意した6月中旬以降の貿易正常化への期待が冷え込んだためだ。米国は覚書に基づいて実行したイラン産原油に対する輸出規制の緩和を撤回するなどしており、両国間の緊張が高まっている。一方、船舶への攻撃はホルムズ海峡のオーマン沿岸を航行中のタンカーに限られており、イラン側は自ら指定したイラン沿岸ルートについては航行を認めている可能性がある。ただ、米国とイランの思惑の食い違いで和平の最終合意に向けた協議が停滞すれば、原油価格への上昇圧力が強まることは避けられず、世界経済にとっての波乱要因になるリスクがある。
WTI(8月渡し、WTI原油)は日本時間8日午前11時9分段階で1バレル=72.15ドルで取引されている。ブルームバーグによると、午前9時台には72.72ドルまで上昇する場面もあった。7日のニューヨーク市場の終値は前日比2.76%高の70.44ドルで、イランが米国との協議を停止すると報じられた6月1日(5.49%高)以来の高い上昇率。8日の値動きは、この7日終値からさらに3%超の値上がりが進んだ形だ。WTIはドナルド・トランプ大統領が和平覚書での合意を明かした6月14日以降に値下がりが進み、7月2日にはイラン戦争開戦前の水準まで下落していたが、ムードが一転した。
原油価格が急上昇した要因は、ホルムズ海峡をめぐる緊張が再燃したからだ。イギリス海事貿易機構(UKMTO)の発表によると、ホルムズ海峡周辺では7日、3隻のタンカーが飛翔体による攻撃を受けた。このうち1隻はエンジンルームで火災が発生したという。これを受け、米中央軍は日本時間8日午前6時台にSNSのXへの投稿で、イランに対する「力強い一連の攻撃」を始めたと公表。イランがホルムズ海峡を航行中の3隻の民間船に対する攻撃を行ったことへの対応だと説明している。
こうしたホルムズ海峡をめぐる緊張は覚書合意の継続性への疑念を強めた。米財務省は7日、覚書に基づいて実施したイラン産原油の輸出を60日間限定で認める措置を撤回すると発表。これに対してイランの外務副大臣は日本時間8日午前6時台、Xへの投稿で、輸出規制緩和の撤回と米軍によるイラン攻撃について、和平合意への「明白な違反だ」などと非難。「イランの国益と安全を守るため、断固たる措置を取る」としている。
一方、イランによるタンカーへの攻撃はいずれもホルムズ海峡のオマーン沿岸を航行している船舶に限られている。イランは米国との和平最終合意に向けた協議の中で、ホルムズ海峡を通過する船舶から何らかの形で通行料を徴収する仕組みを設けることを主張しているとされ、今回の攻撃にはホルムズ海峡への支配力を示す狙いがありそうだ。イラン当局は6月26日の段階で、やはりオマーン沿岸を航行していた貨物船が攻撃されたと報じられた後、指定されたルート以外の航行の安全は保障されないと警告していた。
こうした中、ホルムズ海峡を通過するタンカーの数には7日段階では大きな変化は出ていないもよう。ブルームバーグによると、7日にホルムズ海峡を通過したタンカーの数は16隻で、6月18日以降の平均値(約16隻)と一致した水準となっている。
ただ、ホルムズ海峡をめぐる緊張感がイランと米国の和平協議の難航や決裂を感じさせれば、原油価格にはさらに強い上昇圧力がかかりそうだ。両国の間にはホルムズ海峡の扱いに加え、イランによる核開発の在り方でも大きな食い違いが残っており、今後、原油価格の値上がりが物価上昇圧力増大への懸念を強め、株式市場やFX市場にも波乱をもたらすリスクがある。
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