S&P500は週次0.61%安。AIブームの継続性への懸念が膨らんだ。週明け以降はイラン情勢、FOMC、大手ハイテク決算が波乱要因となりえる。
アメリカの株式市場の見通しが暗くなっている。S&P500種株価指数の24日の終値は1週間前比0.61%安で、3カ月半ぶりの2週続落。大手ハイテク各社の株価が大きく値下がりしており、人工知能(AI)ブームの継続性への不安が改めて膨らんだ。また半導体各社の株価も週後半に失速していて、株式市場の楽観ムードは後退している。一方、S&P500はこのところの値下がりで割高感が和らいだ。企業決算の発表が進む中でも、業績見通しへの期待が揺らいでいないことは、株価反発の準備が整っている様子も感じさせる。ただ、S&P500の今後の見通しにとってはイラン情勢の悪化に伴う原油価格上昇という逆風が強まっていて、米連邦準備制度理事会(FRB)が28、29日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み切るとの見方も再浮上してきた。さらに29日以降の大手ハイテク各社の2026年4-6月期決算発表も投資家から悪材料視される懸念が大きく、週明け27日以降のS&P500には急落リスクが数多く待ち受けているといえそうだ。
S&P500(SPX)の24日の終値は前日比では0.05%高の7411.98。前日までの2日続落で記録した1.34%安からの反発はわずかだった。ブルームバーグによると、週次での下落(0.61%安)は、半導体受託製造大手、台湾積体電路製造(TSMC、TSM)の設備投資見通し引き上げが悪材料視された前週(13-17日)の1.55%安に続く値下がり。2週続落は2月下旬から3月下旬にかけて記録した5週続落以来だ。24日終値は6月2日の最高値(7609.78)からは2.60%安にあたる。
S&P500への影響が大きい「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大手ハイテク7社の株価では、テスラ(TSLA)の株価が24日までの週次で17.81%安となり、2022年12月19-23日週(18.03%安)以来、3年7か月ぶりの大きな下落率。アルファベット(GOOGL)も週次7.79%安となっている。両社はいずれも22日に4-6月期決算を発表。アルファベットは2026年通期の設備投資見通しを引き上げたこと、テスラはAIを生かした新事業についての前進を示せなかったことなどが悪材料視された。株式市場でのAIブームの継続性への疑念が強まる中、メタ・プラットフォームズ(META)も週次7.87%安、アマゾン・コム(AMZN)も6.12%安となるなど、7社中の6社が週次で下落している。
また、大手ハイテク各社の巨額の設備投資が追い風となるはずの半導体各社の株価も週後半に失速し、S&P500の足を引っ張った。米国に上場する半導体株の値動きを示す、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は24日までの週次で1.24%高を確保しつつも、23日と24日は2日続落で合計4.77%安となっている。なかでも半導体の名門企業インテル(INTC)は23日の4-6月期決算発表に際して示した7-9月期の総収入の見通しが市場予想を超えたものの、翌24日の株価は前日比7.89%安、24日までの3日続落では合計12.45%安となっている。インテルは決算会見で2026年通期の設備投資額は200億ドル以上になるとの見通しを示し、2027年通期についても「2026年よりも大幅に大きくなる」と表明。過剰投資につながるリスクが投資家の不安をかきたてる結果に終わったようだ。
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一方、S&P500には割高感の後退という今後の反発を期待させる動きもある。ブルームバーグによると、S&P500の水準と構成銘柄の今後12か月の予想1株当たり利益(EPS)から算出される株価収益率(PER)は24日段階で20.6倍程度で、株式市場でAIブームが本格化した2023年以降の平均値(21.2倍)を下回っている。S&P500の予想1株当たり利益は、決算発表シーズン前の6月30日との比較で0.53%高となっているほか、イラン戦争開始前日の2月27日との比較でも13.74%高となっており、企業業績の好調さへの期待は揺らいでいない。
ただ、S&P500の今後の見通しにとってはイラン情勢の悪化に伴う原油高が重荷となりそうだ。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(9月渡し、WTI原油)の24日の終値は1バレル=89.31ドルで、1週間前比8.27%高。7月7日にホルムズ海峡で3隻のタンカーがイランからとみられる攻撃を受けてからの約3週間では30.28%高となっている。ホルムズ海峡に代わる石油輸出ルートである紅海側の海域でも、イエメンを拠点とする親イラン組織フーシがサウジアラビアのタンカー2隻を攻撃したと伝わっており、原油価格の上昇は今後も続いていく可能性がある。
こうした中、金融市場ではFRBが29日までのFOMCで利上げに踏み切るとの見方も増えているようだ。ブルームバーグによると、24日の金融市場で見込まれている7月FOMC後の政策金利の水準は3.722%で、7営業日連続で前日よりも高くなった。7月利上げの確率は38%まで上がっている。FRBのケビン・ウォーシュ議長は6月17日までのFOMC後の記者会見で物価上昇抑制に軸足を置く考えを示し、このFOMCの議事要旨では原油高やAIサービスに用いられるデータセンターなどのインフラ建設が物価上昇圧力として働いているとの分析も示されている。FRBが29日に利上げに踏み切ったり、9月利上げの確度を高める情報発信を行ったりした場合には、S&P500が急落するリスクがありそうだ。
またS&P500にとっては29日以降の大手ハイテク各社の決算発表の重要度も高い。29日にはメタとマイクロソフト(MSFT)、30日にはアマゾンとアップル(AAPL)が4-6月期決算を発表する予定。メタ、マイクロソフト、アマゾンは設備投資意欲の強さが示されれば、アルファベット同様に株価が急落する恐れがある。またアップルはスマートフォンのiPhone(アイフォン)17シリーズの人気が続いているとみられるとはいえ、メモリ半導体の価格高騰の影響が悪材料になる可能性もありそうだ。
週明け以降のS&P500には急落に見舞われかねないイベントが数多く待ち受けている状態。イラン情勢やFRBの利上げ見通し、大手ハイテク各社の決算発表はこれまでもS&P500を大きく動かしてきただけに、投資家の警戒感は強まっていくことになりそうだ。
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