S&P500は2営業日連続で横ばい。AIブームの見通しへの不安でエヌビディアなどの半導体株が急落した。大手ハイテク決算も波乱要因だ。
アメリカの株式市場が人工知能(AI)ブームの失速への警戒を強めている。S&P500種株価指数の27日の終値は前週末比0.02%高で、2営業日連続での横ばいといえる値動き。AI向け先端半導体の供給元であるNVIDIA(エヌビディア)が前週末比で約5%の急落となり、S&P500の足を引っ張った。米国上場の半導体株は3営業日続落で、アルファベットが22日に示した設備投資額の積み増しが、かえって投資家の不安をあおったことが響いている。一方、S&P500の重荷となってきたイラン情勢をめぐっては、米国とイランの交戦の落ち着きという好材料が浮上。原油価格は2営業日連続で下落し、見通しに対する過度な不安は後退した。ただ、イラン情勢は今後も悪化する恐れがあることは確かで、金融市場では連邦準備制度理事会(FRB)が物価上昇抑制のために早期の利上げに踏み切るとの見方が強まっている。また29、30日に2026年4-6月期決算を発表するマイクロソフトなどの株価は設備投資負担の重さが嫌気されて急落する恐れがあり、S&P500が波乱に見舞われるリスクはくすぶり続けていそうだ。
S&P500(SPX)の27日の終値は7413.18。前週末比0.02%高は、前週末の前日比0.05%高に続く、横ばいの値動きとなった。ブルームバーグによると、27日終値は6月2日の最高値(7609.78)からは2.58%安の水準で、停滞感が出ている。
S&P500の上昇の足を引っ張っているのは半導体株だ。株式市場でのAIブームを代表する銘柄であるエヌビディアの株価(NVDA)は27日の取引で3営業日続落の前週末比4.99%安となり、5月雇用統計の過熱感が悪材料となった6月5日(6.20%安)以来の大きな下落率となった。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が26日夜、AIブームの火付け役であるオープンAIが大規模データセンターのリースを受けることができるよう、エヌビディアが約2500億ドルの資金保証をつけることを検討していると報じたことが懸念材料となった。日本のソフトバンクグループ(9984)がオハイオ州南部で建設中のこの大規模データセンターにはエヌビディアの半導体が導入されるとみられ、金融市場ではエヌビディアとオープンAIの間の「循環取引」になるとの疑念が持たれたようだ。
半導体株ではこのほか、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)も3営業日続落の前週末比5.17%安、半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(AMAT)も2日続落の3.61%安となった。半導体の名門企業インテル(INTC)は23日の決算発表を挟んだ4営業日続落となる前週末比0.70%安となっている。米国上場の半導体株の値動きを示すフィラデルフィア半導体株指数(SOX)も27日までの3営業日続落の間に合計で6.90%安なった。半導体株の直近の下落は、アルファベットが22日の取引時間終了後に行った決算発表に際して示した2026年通期の設備投資額見通しの上方修正が過剰投資の懸念を強めたことがきっかけとなっており、AIブームの継続性への疑念がS&P500のムードを悪くしているといえそうだ。
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一方、S&P500に下押し圧力をかけてきた原油価格の上昇はイラン情勢の落ち着きで一服感が出ている。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(9月渡し、WTI原油)は27日終値で前週末比7.50%安の1バレル=82.61ドルとなり、前週末の前日比3.12%安に続く下落となった。米中央軍は23日まで13日連続で対イラン攻撃を行った後は、新たな攻撃について発表しておらず、米インターネットメディアのアクシオスは25日、ドナルド・トランプ大統領が24日、新たな攻撃を行わないよう米軍に命じたと報じている。トランプ氏は27日、記者団に対して、イランが外交協議を望んでいると明かし、「何かがまとまる可能性は十分にある」と述べた。原油価格の上昇は企業や個人の経済活動を抑制することで米国を含む世界経済全体への逆風になりえる、株式市場にとっての不安要素なだけに、足元の原油価格下落は投資家にとっては安心材料だ。
ただ、イラン情勢は今後も複雑な展開をたどる可能性があり、S&P500の見通しを不透明にしている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は日本時間25日夕方、SNSのXへの投稿で、カスピ海でイランからロシアに軍需物資を運ぶ貨物船と戦艦を攻撃したと表明。イランのアッバズ・アラグチ外相は27日のXへの投稿で、ウクライナからの攻撃で民間船舶の乗員1人が死亡したと公表し、「明白な国連憲章違反で、欧州を戦争に引きずり込もうとするイスラエルの要請を受けた行為だ」と批判している。カスピ海航路はイランからロシアへの石油輸出にも使われているとされ、ウクライナにはイランを攻撃することでトランプ政権に存在感を示し、米国からの対ロシア戦への支援をつなぎとめる狙いがあるとの見方も出ている。
こうした中、投資家の間では原油価格の下落にも関わらず、FRBが物価上昇抑制のために早期の利上げを迫られるとの見方は強まっている。ブルームバーグによると、27日の金融市場で見込まれている、FRBが28、29日に開く連邦公開市場員会(FOMC)で利上げを決める確率は38%で、8営業日連続で前日よりも高くなった。さらに9月FOMC後の政策金利は現状の政策金利(3.500-3.750%、中間値3.625%)よりも0.274%ポイント高い3.899%と見込まれ、9月利上げが確実視される情勢となっている。FRBのケビン・ウォーシュ議長の29日の情報発信が利上げ方向になれば、金利の先高観が株式投資の相対的な魅力を低くし、S&P500に大きな下落圧力をかけそうだ。
S&P500の今後の見通しをめぐっては、29日の取引時間終了後に行われるメタ・プラットフォームズ(META)とマイクロソフト(MSFT)の2026年4-6月期決算発表や、30日のアマゾン・コム(AMZN)の決算発表も波乱要因となりえる。3社はいずれもアルファベットと同様、AIサービス強化のために巨額の設備投資を積み重ねており、各社が設備投資額の見通しを引き上げれば悪材料とみなされそうだ。このうちメタの株価は27日までの8営業日続落で合計12.83%安と急落。アマゾンも同じ8営業日のうちの7営業日で値下がりしていて、この間に合計9.24%安となっている。
これに対して、マイクロソフトは27日までの2営業日続伸で合計1.97%高となっており、メタやアマゾンと比べれば株価は堅調にみえる。ただ、マイクロソフトは4-6月期の総収入の成長減速が見込まれているほか、決算発表に合わせて、2027年6月通期の設備投資の見通しを新たに示すとみられ、サプライズの度合いが大きくなれば株価が急落し、S&P500に打撃を与える可能性がありそうだ。
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