TSMCの好業績は世界の半導体株にショックを走らせた。設備投資の急加速が投資家不安を高め、米国株式市場から東京株式市場へと半導体株急落が連鎖している。
半導体受託製造の台湾積体電路製造(TSMC)が16日に行った2026年4-6月期決算は世界の半導体株安に拍車をかける結果となった。TSMCは決算発表に際し、2026年通期の総収入の成長率を40%超まで大幅に上方修正。人工知能(AI)関連の半導体への需要が強まり続けていることが要因で、半導体企業にとっては株高要因といえる。しかし16日のアメリカ株式市場ではTSMCの株価が2%超の下落となったほか、NVIDIA(エヌビディア)など米国上場の半導体企業の株価も軒並み急落した。TSMCは決算発表に合わせて、2026年通期の設備投資額の見通しも前年比46%増まで引き上げており、AIブームの過熱感がさらに続くとの見方がかえって投資家の不安をかきたてたようだ。TSMCの強すぎる決算発表から一夜明けた17日の東京株式市場でも半導体株の急落が連鎖しており、世界の株式市場にショックが走っている。
TSMCが16日に発表した4-6月期決算は総収入が前年同期比33.7%増の402.01億ドル。米国預託証券(ADR)ベースでの1株当たり利益(EPS)が74.5%増の4.31ドルだった。総収入はTSMCが13日に公表した台湾ドルベースの総収入のドル建て換算と一致する数字。1株当たり利益はブルームバーグがまとめた市場予想(3.75ドル)を大きく上回った。
TSMCの魏哲家(シーシー・ウェイ)CEOは16日の決算会見で2026年通期の総収入の成長率について「40%をわずかに上回る水準」と説明。前回決算発表時に示した「30%超」から大幅に上方修正した。AI関連収入の2024年から2029年までの伸び率については、これまで示してきた年率換算で50%台半ばから後半になるとの見通しよりも「強くなる」とし、「強くなり続けているので今日段階での数字は示さない」とした。魏氏はAI関連の半導体需要が「極めて頑強」だとの表現を維持しているが、見通しが立てらないほどの強さに達しているといえそうだ。
TSMCはAIサービスに不可欠な最先端半導体を開発している米国の半導体大手エヌビディアを顧客に持ち、エヌビディアの半導体を大量に購入してきた大手ハイテク各社とも協議を重ねて経営を舵取りしている。魏氏が示した強い見通しは、AIサービスの価格競争が意識される中でも、大手ハイテク各社の設備投資意欲は強さ増していることを意味する。魏氏は決算会見で、TSMCの顧客や、顧客の顧客からの情報提供を踏まえ、「複数年にわたるAIメガトレンドに関する確信は極めて高い」としている。こうしたTSMCの強気姿勢はTSMC以外の半導体企業にとっても需要の強まりの確度を高める追い風といえる。
しかし16日の米国株式市場では半導体株が大きく値を下げた。TSMC(TSMC、TSM)の株価の16日の終値は前日比2.32%安の409.74ドル。6営業日続落の末、6月30日の最高値(477.57ドル)から14.20%安となった。ブルームバーグによると、TSMCの今後12か月の予想1株当たり利益は16日段階で前日よりも4%超高くなっているが、それでも株価が下落している。
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16日の半導体株の急落の要因はAIブームの過熱感に歯止めがかかっていないとの懸念といえそうだ。TSMCは16日に、設備投資額の見通しも大幅に引き上げており、過剰投資の恐れが投資家心理を悪化させた可能性がある。TSMCの黄仁昭(ウェンデル・ファン)CFOは決算会見で、4-6月期の設備投資額が前年同期比63.0%増の157億ドルだったことを明かしたうえで、2026年通期の設備投資額は600億-640億ドル(中間値620億ドル)になるとした。黄氏が示した通期見通しは前年比46.7%増にあたる水準で、2025年の伸び率(37.4%増)から設備投資が急加速することになる。黄氏は前回決算会見では2026年の設備投資額は前年比32.0%増にあたる520億-560億ドル(中間値540億ドル)の上限近くになるとしていた。
黄氏はこれまで設備投資額の見通しについて、顧客や、顧客の顧客との協議を踏まえて厳密に設定されていると説明。TSMCのような規模の大きい企業にとって、特定の年で設備投資額が大きく落ち込んだり、大きく伸びたりすることはないとの見方を繰り返してきた。それだけに16日に示された設備投資の急加速は、TSMCにとって舵取りが難しい異例の事態が起きているとの印象も強い。
こうした中、半導体株安の連鎖は17日午前の東京株式市場でも続いている。17日午前11時16分現在、半導体製造装置の東京エレクトロン(8035)は前日比8%超安、半導体検査装置のアドバンテスト(6857)は10%超安、メモリ半導体のキオクシアホールディングス(285A)は15%超安で推移している。TSMCの強すぎる業績見通しは、半導体各社の業績予想をかえって難しくているといえ、投資家心理の悪化がショックを走らせたといえそうだ。
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