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ドル円、雇用統計で円安加速の可能性 162円台突入 為替介入には警戒

ドル円相場は39年半ぶりの162円台。為替介入への警戒は残るが、2日夜発表の米国の雇用統計で円安が加速する可能性がある。

Source: ブルームバーグ

Written by

小雲 規生

小雲 規生

シニアファイナンシャルライター/Senior Financial Writer

作成日

ドル円相場で円安が記録を更新した。ドル円相場は日本時間1日昼の取引で1ドル=162円台で推移。1986年12月以来、39年半ぶりの円安水準となっている。ドル円相場は米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを始めた2022年以降、30%近い円安が進んでおり、他の主要通貨と比べて弱さが際立っている。日本銀行が利上げで出遅れたことに加え、2025年秋に発足した高市早苗政権が日銀の利上げを望んでいないとの見方が広がっていることが背景といえそうだ。一方、日本政府は歴史的な円安を阻止する姿勢もみせており、ドル円相場では為替介入で円高が急進することへの警戒も強い。ただ、足元では5月に新体制となったFRBが改めて利上げに動き出すとの見方も強く、今後も円安圧力が強まっていく可能性がある。日本時間2日夜に発表される米国の6月雇用統計で労働市場の過熱感がみられれば、FRBの利上げ観測が強まることで、円安が加速する展開も考えられそうだ。

ドル円相場は一時162.84円 39年半ぶりの円安水準に到達

ドル円相場(USD/JPY)は日本時間1日午後2時18分段階で1ドル=162.71円で取引されている。ブルームバーグによると、午前12時台には162.84円をつける場面もあった。ドル円相場は6月30日午前9時台に、1986年12月23日(162.70円)以来の162円台に突入。その後も円安の流れが維持されていることになる。

ドル円相場の日足チャートと主な出来事のグラフ

4年半で29%の円安 日銀の利上げ出遅れと高市政権発足が要因

ドル円相場での歴史的な円安の起点は、ロシアのウクライナ侵攻による物価上昇を受け、FRBが利上げを始めた2022年といえる。ブルームバーグのデータで円の対ドル相場の6月30日終値を2021年末と比較すると、29.2%の円安にあたり、他の主要通貨と比べても極端な弱さとなっている。この期間では、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)は0.5%のユーロ高、ポンドの対ドル相場(GBP/USD)は2.0%のポンド安、豪ドルの対ドル相場(AUD/USD)は4.7%の豪ドル安となっている。

円、ポンド、ユーロ、豪ドルの対ドル相場の推移のグラフ

2022年以降の円安の要因のひとつは日銀の利上げの出遅れだ。日銀は2022年以降に主要中銀が利上げを進める中でも2024年3月まで大規模金融緩和を維持。2021年末に1ドル=115.08円だったドル円相場は、2024年7月3日には161.95円まで円安が進み、11日に行われた為替介入で円高が急進する背景となった。

日本、米国、英国、オーストラリア、ユーロ圏の政策金利の推移のグラフ

また、ドル円相場では高市政権の発足が、円安を後押ししたともいえる。ドル円相場は2024年7月に1ドル=162円目前まで円安が進んだ後、高市政権発足の起点となった2025年10月4日の自民党総裁選挙の前日段階では1ドル=147.47円まで円高に戻していた。日銀が2024年7月以降、スローペースながらも利上げを進めるとともに、FRBが2024年9月以降は利下げに転じたことで日米の金利差が縮小していたことや、2025年1月に就任したドナルド・トランプ大統領がFRBのジェローム・パウエル議長を利下げに慎重だとして激しく批判し、米国の金融政策の独立性が危ぶまれたことが要因だ。しかしドル円相場では自民党総裁選後に円安が進行。6月30日の円の対ドル相場を自民党総裁選前と比較すると9.3%の円安にあたり、豪ドルの対ドル相場の4.8%の豪ドル高や、ユーロの対ドル相場の2.7%のユーロ安、ポンドの対ドル相場の1.6%のポンド安よりも大幅に弱含んでいる。

自民党総裁選後の円、ポンド、ユーロ、豪ドルの対ドルレートの推移のグラフ

高市政権が日銀の利上げを牽制? 為替介入で円安阻止の姿勢も

高市政権発足が円安要因となったのは、高市氏自身が円安を望んでいるとの見方が根強いためだ。衆議院選挙期間中だった1月31日の川崎市内での演説では、円安について「輸出企業にとっては大チャンス」「外為特会というのがあるんですが、これの運用、今ホクホク状態です」と述べるなどして、ドル円相場に円安材料を提供したこともある。日本政府が6月30日に提示した経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」の原案では、強い経済の実現に向けては「適切な金融政策が行われることも非常に重要」と言及。「デフレに後戻りすることのない物価安定の下での持続的な経済成長」を達成するために政府と日銀が一体となって取り組むとした。物価上昇の上振れリスクよりも下振れリスクを警戒する姿勢が感じられ、金融市場では日銀の利上げを牽制する意図があるとの見方も出ている。

一方、円安の進行はエネルギーをはじめとする輸入品の物価を押し上げる要因で、日本政府は円安阻止の姿勢も強調している。片山さつき財務相は6月30日の閣議後記者会見でドル円相場の1ドル=162円台突入を受け、「必要に応じ、いつでも適切に対応する」と述べ、為替介入も辞さない考えを示した。高市政権はゴールデンウィーク中の4月30日に為替介入を実施し、ドル円相場を155円台まで円高に動かしたこともある。このため足元のドル円相場でも円高急進への警戒は残っている。

新体制のFRBは利上げに前向きか 6月雇用統計で円安進行加速も

ただ、このところのドル円相場では、FRBが利上げに向かうとの見方が新たな円安圧力として浮上している。5月に就任したばかりのケビン・ウォーシュ議長は6月17日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「物価安定の側に取り組むべき課題がある」と述べて、利上げに前向きな立場を示唆。2月末のイスラエルとアメリカによるイラン攻撃後に進んだ原油価格上昇がもたらす物価上昇圧力への警戒は強いようだ。FRBが2022年以来の利上げサイクルに入るシナリオが注目され、日銀のこれまでの利上げペースの緩やかさとの対比が意識されれば、さらに円安が進む展開も想定される。

こうした中、ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、日本時間2日午後9時30分(米国東部時間2日午前8時30分)に発表される米国の6月雇用統計の重要度が高まっている。労働市場の過熱感や賃金上昇率の強さがみられれば、経済の好調さが物価上昇圧力として働くとの見方が広がりそうだ。この場合、金融市場ではFRBの利上げシナリオが現実味を増し、円安進行が加速する可能性がある。こうした米国経済の強さを要因とした円安では、日本政府が為替介入に踏み切っても効果は短命に終わるとみられ、中長期的な円安基調は続いていきそうだ。

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