円高ブレーキ、143円台 日米為替議論せず 日銀利上げ見通しは上昇
ドル円相場は一時143円台後半まで円安が進行。一方、FRBの利下げや日銀の利上げといった円高要因も残っている。

ドル円相場で円高基調にブレーキがかかった。ドル円相場は日本時間25日午後2時までの取引で、1ドル=143円台後半をつけ、22日に139円台まで進んだ円高の勢いが失われている。アメリカで24日に行われた日米財務相会談で為替相場の水準についての議論がなく、ドナルド・トランプ政権が円高を望んでいるとの観測が下火になったためだ。ただし円高要因は日米経済の双方でくすぶっている。トランプ大統領の政権運営が米国経済を混乱させ、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを迫られるとの見方は根強い。また、25日に発表された東京都区部の消費者物価指数(CPI)は物価上昇圧力の強さを感じさせ、日本銀行が追加利上げに向かうとの見通しもじわじわと戻ってきた。ドル円相場の今後の見通しをめぐっては、引き続き円高圧力の強さも意識されそうだ。
ドル円相場は143.80円まで円安が進行 139円台まで進んだ円高が急転
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間25日午後1時ごろに1ドル=143.80円をつけた。ブルームバーグによると、24日深夜には142.28円をつける場面もあったが、1.5円程度の円安が進んだ形だ。ドル円相場は22日には139.89円をつけ、2024年9月16日(139.58円)以来の円高水準となる場面もあったが、流れが一服したといえる。

日米財務相会談で為替は議論されず 米中対立緩和への期待も円安要因に
25日の円安の要因は、加藤勝信財務相とスコット・ベッセント財務長官がワシントンで24日に行った日米財務相会談で為替相場が議題にならなかったことだ。加藤氏は日本時間25日午前6時すぎからの記者会見で、為替水準の目標などについての議論は「まったくなかった」と説明した。ベッセント氏も23日の段階で記者団に対して、日米協議について「通貨目標は一切ない」と述べていた。さらに日本時間25日正午すぎには、中国が米国製品に対する125%関税について一部の品目を除外することを検討しているとブルームバーグが報じたことでドルが買われ、円安が進んでいる。
ドル円相場ではこれまでトランプ氏のドル安志向が材料視されてきた。トランプ氏は17日にSNSへの投稿でFRBに利下げを要求し、ジェローム・パウエル議長の解任まで示唆。米国の製造業に不利に働くドル高を是正し、円高を求めているとの観測が強まった。さらにトランプ氏の高関税政策が米国経済を混乱させるとの見方は、米国株や米国債とあわせてドルも売られる「米国売り」を招いた。
しかしトランプ氏は22日にはパウエル氏解任の可能性を否定。145%まで高まっている中国製品への関税引き下げにも言及し、米国売りは落ち着いてきた。ブルームバーグによると、FX市場で安全資産とみなされてきた円とユーロは22日以降はドルに対して値下がり傾向が出ている。ユーロの対ドル相場(EUR/USD)の24日の終値は21日比で1.09%のユーロ安。同じ期間で円の対ドル相場も1.24%の円安に振れている。

FRBの利下げへの期待や日本の物価上昇は円高要因に
一方、ドル円相場では円高圧力も続いていそうだ。米国の長期金利(10年物国債利回り)の24日のニューヨーク市場での終値は4.317%で、16日(4.279%)以来の低さ。米国売りでの国債価格下落と長期金利上昇に歯止めがかかったことが金利低下につながっている。また、FRBのクリストファー・ウォラー理事は24日のブルームバーグテレビでのインタビューで労働市場が大きく悪化した場合には「さらなる利下げがあると予想する」と発言。経済指標の動向次第ではFRBが利下げを再開するシナリオが意識され、ドル円相場に円高圧力がかかった。
また、日本経済をめぐっては25日朝に発表された東京都区部CPIの4月中旬速報値の伸び率が物価上昇の根強さを感じさせた。総合指数では前年同月比3.5%、生鮮食品を除いたコア指数では3.4%、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数では3.1%だった。東京都で2024年から始まった私立高校の授業料無償化による物価押し下げ効果がなくなったことが上昇率の拡大につながったうえ、コメや電気料金の値上がりなども影響している。伸び率はいずれもブルームバーグがまとめた市場予想を0.2-0.3%ポイント上回った。

日銀の年内利上げ確率は70%台まで復帰 日米金利差は3%ポイントを下回る
こうした中、金融市場では日銀の追加利上げ観測がじわじわと拡大してきた。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれる年内追加利上げの確率は25日午後2時段階で70%。相互関税による世界経済の混乱への懸念が強まった9日時点では3%程度まで下がっていたが、物価上昇と賃上げの同時進行を目指す日銀が段階的に利上げを進める環境が整ってきたともみられているようだ。
米国の金利低下と日銀の利上げ観測は、日米の長期金利差を縮小させる円高要因。ブルームバーグによると25日の金融市場での日米の長期金利の差は3%ポイントを下回る水準で推移している。

米国経済をめぐっては今後、トランプ氏の高関税が実体経済に及ぼしている悪影響が表面化する可能性がある。この場合はFRBの利下げ観測の強まりが円高を後押しする展開も想定され、ドル円相場では当面は円高圧力がくすぶりそうだ。
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