ドル円相場は162円台の円安から後退。6月雇用統計の弱さが円高材料となった。FRBの利上げ見通しが今後も後退すれば円安にブレーキがかかる可能性もある。
ドル円相場で円安圧力の増大が休止した。ドル円相場は日本時間3日午後の取引で1ドル=161円台前半で推移。2日までの162円台から円高方向に振れている。2日に発表されたアメリカの6月雇用統計が市場予想に反して弱い結果となり、米連邦準備制度理事会(FRB)が物価上昇抑制のために利上げを迫られるとの見通しが後退したためだ。また、原油価格がイラン戦争前の水準に戻りつつあることも、FRBの利上げの必要性を薄れさせる円高要因といえる。一方、このところの金融市場には日本銀行の利上げ見通しが強まらないという円安材料も根強い。原油価格の下落に加え、高市早苗政権が円安を容認しているとの見方が背景になっているとみられる。ただ、ドル円相場が39年半ぶりの円安水準となったことは物価上昇圧力のいっそうの強まりを意味し、日銀を利上げへと後押しする要因であることは確か。今後も米国の利上げ見通しの後退が続けば、歴史的な円安にブレーキがかかる可能性もある。
ドル円相場(USD/JPY)は日本時間3日午後2時42分段階で1ドル=161.13円で取引されている。ブルームバーグによると、ドル円相場は1日午前12時台に162.84円をつけて、39年半ぶりの円安水準を記録。2日も夕方近くまでは162円台をつけていたが、その後は円高方向への値動きとなり、2日午後9時半すぎには160.64円となる場面もあった。
ドル円相場を160円台まで円高に動かしたのは米国の雇用統計に過熱感がみられなかったことだ。6月雇用統計は非農業部門の就業者数が前月比5.7万人増となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の11.3万人増を大きく下回った。4月分と5月分のデータは合計7.4万人分下方修正され、1か月前に発表された5月のデータで感じられた労働市場の過熱感が後退する結果となった。6月の失業率は4.2%で、5月(4.3%)から改善。平均時給の伸び率は3.5%で、市場予想通りの結果だった。労働市場の強さが消費を刺激することで物価上昇圧力を高め、FRBが利上げを迫られるとの筋書きは後退した。
実際、2日の金融市場ではFRBの早期利上げ見通しが弱まり、ドル円相場での円高要因として働いている。ブルームバーグによると、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の政策金利の水準は3.675%と想定されており、前日から0.025%ポイント低下。7月利上げ確率は18%で、前日の27%から低くなった。FRBのケビン・ウォーシュ議長が1日、ポルトガルでの経済イベントで、この4週間で「インフレリスクは後退した」と述べたこともFRBの利上げ観測を後退させている。
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また原油価格の下落が物価上昇圧力を弱めていることも、FRBの利上げを遠のかせる要因だ。ブルームバーグによると、原油先物市場の指標価格であるWTI(8月渡し、WTI原油)は日本時間2日午後8時台に1バレル=67.04ドルをつけ、イラン戦争開戦前日にあたる2月27日終値(67.02ドル)とほぼ同水準となった。イラン情勢をめぐっては、6月17日の和平合意の覚書発効後、ホルムズ海峡を通過する船舶の数が増えており、原油供給不足への懸念が和らいでいるようだ。ブルームバーグはサウジアラビアの7月1日までの6日間の日量ベースでの原油輸出量が、イラン戦争前にあたる2月の水準の約9割まで戻ったと報じている。
一方、このところの金融市場では日銀の追加利上げの危うさが円安材料として意識されている。ブルームバーグによると、金融市場で見込まれている10月の金融政策決定会合後の政策金利の水準は3日午後2時42分段階で1.128%となり、現状の1.000%よりも0.128%ポイント高い水準。日銀が半年ぶりの利上げを決めた6月中旬以降、横ばいが続いている。10月までの利上げ確率は61%と見積もられており、4か月間隔という日銀としてはハイペースの追加利上げに踏み切るとの期待は高まりきっていない。日銀は2024年7月以降、少なくとも半年の間隔をあけてスローペースでの利上げを進めてきた。
日銀が利上げに慎重だとの見方が強い要因のひとつは、足元の原油価格の下落が米国だけでなく日本にとっても物価上昇圧力を弱めていること。また高市政権が6月30日に示した「骨太の方針」の原案に「デフレに後戻りすることのない物価安定」を達成するとの文言が含まれていることも、日銀が利上げで物価上昇にブレーキをかけることを牽制しているように映る。半面、日本政府は為替介入で円安を抑え込む姿勢も維持しているが、39年半ぶりの1ドル=162円台突入を許したことは円安を黙認しているとも受け止められかねない。
ただ、円安はエネルギーをはじめとする輸入品の物価を上昇させる要因で、物価安定を責務とする日銀にとっては見過ごせない問題。日銀が6月24日に公表した15、16日の決定会合での主な意見では、「為替要因からも輸入価格が上昇している」「輸入物価を起点に価格転嫁が早まる可能性が高い」との懸念が示されている。ブルームバーグによると、6月のドル円相場は平均1ドル=160.83円で、1年前の2025年6月の144.55円と比べて大幅な円安。現在のドル円相場は155円台を超える円安が長期化しているという意味でも歴史的な水準とみることができる。
このためドル円相場の今後の見通しをめぐっては、日銀が円安阻止のために利上げを進めるとの見方が円高材料として意識される可能性もある。同時に米国の労働市場の過熱感や原油高がもたらす物価上昇加速への懸念が後退すれば、円安圧力が弱まっていく展開も考えられそうだ。
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