AIブームへの不安再燃か TSMC最高値から陥落 オラクルも株価急落
TSMCの株価は11日に最高値から陥落。オラクルやブロードコムの株価からはAIブームをめぐる期待の脆さも感じられる。
半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)の株価が逆風にさらされた。TSMCがアメリカで上場している米国預託証券(ADR)の株価は11日の終値で前日比1.71%安で、11月の月次業績の好調さが追い風となって前日につけた1か月半ぶりの最高値から陥落した。背景にあるのは株式市場における人工知能(AI)ブームをめぐる不安。米国の株式市場ではオープンAIとの関係の深さで注目されたオラクルやブロードコムの株価が急落しており、投資家心理は揺れ動きやすい状況にある。TSMCの好業績はAIブームが半導体の実需につながっている証とみることができるが、半導体を利用する側の資金負担をめぐる懸念や、株価に対する投資家の高すぎる期待が株式市場の波乱要因になっているようだ。
TSMCの株価は前日比1.71%安 1か月半ぶりの最高値から陥落
TSMCの株価(TSM)の11日の終値は304.85ドル。10日終値では前日比2.22%高の310.14ドルをつけ、10月29日(305.09ドル)以来、約1か月半ぶりに最高値を更新していたが、勢いに冷や水がかかった。
11月の総収入の成長が前月から加速 エヌビディア半導体の中国輸出許可も追い風
TSMCの株価を最高値まで浮上させていたのは10日に発表した11月の月次実績。台湾ドルベースでの総収入は前年同月比24.5%増の3436.14億台湾ドルとなり、10月の16.9%増から成長が加速した。10月と11月の総収入をドルに換算して合計すると、前年同期比25.7%増の230.26億ドルとなり、TSMCが10月16日の決算発表の際に示した10-12月期の成長率見通しの22.0%増を超えている。
TSMCは米国の半導体大手NVIDIA(エヌビディア)などを顧客とし、AIの開発やサービス展開に不可欠な高性能半導体の製造を一手に担っている。TSMCの業績が想定を超える勢いで伸びていることは、AIブームの力強さが裏付けられたといえそうだ。また、米国のドナルド・トランプ大統領は8日の取引時間終了後、SNSヘの投稿でエヌビディアの最先端半導体「H200」を中国に輸出することを認める方針を公表。エヌビディアはこれまで米国の輸出規制で中国市場での成長機会を失ってきただけに、トランプ氏の方針転換はエヌビディア製品の製造を手掛けるTSMCにとっても追い風といえそうだ。
オラクルの株価は10.83%安 設備投資負担の重さが悪材料に
にも関わらず、TSMCの株価が最高値から陥落した背景には、AIブームの継続性をめぐる投資家の不安がある。クラウド事業を手掛けるオラクルの株価(ORCL)は11日の取引で前日比10.83%安と急落。前日の取引時間終了後に発表した9-11月期決算が投資家を満足させられなかったためだ。前回(6-8月期)決算発表に際しては、対話型AIサービスChatGPTで知られるオープンAIとの大型契約が注目された結果、株価は決算発表翌日の9月10日に35.95%高となったが、今回は対照的な値動きとなった。
オラクルの9-11月期決算は、総収入が前年同期比14.22%増の160.58億ドル。ブルームバーグがまとめた市場予想の162.05億ドルを下回った。設備投資額は120.33億ドルで、前四半期の85.02億ドルから大きく増加している。オラクルの社債やリース債務などを含む長期債務は11月末段階で1367億ドルで、直近12か月の営業利益の7.4倍に達していることもあり、財務状態をめぐる投資家の不安を高める結果になったようだ。
ブロードコムの決算発表にも厳しい目 AIブームでの株価上昇に難しさ
AIブームの継続性をめぐる投資家の厳しい視線はブロードコムの株価(AVGO)の値動きからも感じられる。ブロードコムが11日の取引時間終了後に発表した8-10月期決算は売上高と1株当たり利益(EPS)がともに、ブルームバーグがまとめた市場予想を超える好決算。それでもブロードコムの株価は11日の時間外取引で、直近の終値から5%超安まで下落している。ブルームバーグによると、ホック・タンCEOが決算会見で、AI関連半導体の受注残について730億ドルという水準を示したことが、一部の投資家から失望を招いたという。
ブロードコムは10月13日、オープンAIと10ギガワット(1000万キロワット)相当のデータセンター展開構想で連携することを発表。またアルファベット(GOOGL)が開発する半導体のTPUにもブロードコムの技術が用いられているとされる。こうした中、ブロードコムの株価は2024年末比で3.6倍となり、エヌビディア(NVDA)に匹敵する伸び率となっていた。同時にブロードコムの株価には割高感が強まっている。ブルームバーグによると、ブロードコムの株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は11日段階で約43倍で、エヌビディアの26倍を大きく上回っている。
TSMCの好業績は半導体の需要の強さを示しているが、半導体を使ってAIの開発やサービスを展開するハイテク企業側がどうやって設備投資資金を捻出するかには不透明感が強い。また投資家の半導体株への期待の強まりに伴う割高感は、株価上昇にブレーキをかける要因といえそうだ。
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